協会長からの情報
ユニばかりが目立っていたのは事実だが、トリスを始めとした他3人もまた竜狩人においては最高峰の存在であり。
トリス単独でもLv100の迷宮を護る者を討伐する事は可能だし、ハヤテとクロマも加われば〝黒〟と〝白〟以外の突然変異種とも互角以上に渡り合えると見て間違いないが。
そんな3人が揃って再起不能クラスの傷を負い、もはや意識を保っていたかどうかも怪しい満身創痍の状態だったトリスが死にかけの2人を背負って戻ってきたのを見た時は、さしものスタッドも自分の目を疑わざるを得なかったという。
今なおクロマとハヤテは目覚めておらず、トリスも町の入口で2人を託した後に倒れてから喪神したままなのだとか。
先述した通り、あの3人がそこらの竜化生物に敗北を喫するとは思えず、ましてや満足に撤退する事も難しい状況にまで追い詰められたなど、ユニでさえ信じ難かったのは事実。
……が、しかし──。
「──アレが件の迷宮だよね?」
『そうみたいね』
ユニは今、突然変異種が目撃された迷宮の近くに居た。
(……結局、欠片も心配しなかったわね)
本来、ユニ以外の人間になど多少しか興味を示さないアシュタルテすら若干とはいえ3人を不憫に思っていたものの。
ユニからすれば、はっきり言ってどうでも良かった。
……確かに、あの3人はユニにとっての〝布石〟。
死なれては困る存在ではあるが、死んでないなら多少怪我を負ったところでレベリングを中断するほどの価値はなく。
主人がそう言うなら従者たる自分がとやかく言う事ではないし、それはそれとして彼女には他に気になる事もあった。
『それはともかく、随分とまぁ野次馬が多いわね』
「んー、出遅れちゃったかぁ」
そう、迷宮前に途轍もない数の狩人が集まっていたのだ。
おそらく先ほど貰った情報はユニが拠点とするドラグハートに届くまでに時が経ち過ぎており、もうこの国では広く周知されてしまっているのだろうと確信するには充分だった。
今、ユニが転移してきた国の名は〝スティプル〟。
大国であるドラグハートやウィンドラッヘに比べれば遥かに規模が小さく、棲息する竜化生物の数も少なく危険性も低いときた、竜狩人の絶対数も減少傾向にある平穏な小国。
もちろん、そんな国にも構わず迷宮は出現する。
今回は、運が悪かったのだろう。
……いや、ある意味では良かったのかもしれない。
平穏な国に生まれたばかりに力を持て余し、『いつか大成してやる』と息巻く井の中の竜狩人は確かに居るのだから。
当然そんな野次馬に横取りされるわけにはいかない。
しかし、ここで割って入るのもそれはそれで面倒臭い。
(こっそり入って、こっそり狩る。 それが最善かな──)
潜入も討伐も誰にも悟られずに行う、そうと決めたユニの行動は早く、【忍法術:隠形】を用いて姿も気配も完全に景色に溶け込ませ、いざや迷宮へと一歩踏み出そうとした時。
「──ねぇねぇ、そこに居るのってユニちゃん?」
「『……ちゃん?』」
あろう事か、『ちゃん付け』で呼び止められるユニ。
幼馴染やテクトリカでもしない呼び方に、ユニはもちろんアシュタルテまでもが困惑とともに振り返ると、そこには。
「……あぁ、君か。 どうりで今の私が見えてるわけだ」
「本当にユニちゃんなの!? うわぁ、久しぶりー!」
「そうだね、まだ私が【虹の橋】に居た頃以来かな」
「うんうん! また逢えるなんて嬉しいよユニちゃん!」
「ユニちゃん……まぁ、うん……いいよそれで」
わざと目立たないようにしているかのような地味過ぎる服装と、なお印象を残さまいとしているのか、それとも理由があるのかは定かでない切り揃えられた長い前髪で両目が隠れた少女がユニに抱きついて再会を喜び、ユニは微かに困った様子こそ見せつつも引き剥がそうとはせず受け入れており。
『何なの、この馴れ馴れしい小娘は……』
アシュタルテは思わず小姑のようや呟きを溢していたが。
この天真爛漫な少女は正真正銘、最後の希望が一角──。
──【盲目の偶像】──
──〝ポッピー・☆・セレブリティ〟──
「小娘なんて失礼だなぁ! アタシはアイドルだよ!?」
『ッ!?』
ユニを除けば実質的に最強の精霊術師である。




