蘇生と忠告
「ちゃんと保全してくれてたみたいだ、良かったね」
「……あぁ、そうだな」
ここは、リュチャンタの首狩人協会の修練場。
迷宮攻略前にユニとサレスが訪れ、サレスと手合わせして殺害されたホドルムがユニの魔術で凍結保存されている場所。
壊そうとしても君たちじゃ壊せないけど、と前打ってから保全を依頼したユニの言葉に無力さを噛み締めつつも貴重な戦力の命が懸かっているからと狩人や職員は依頼を遂行し。
「マリア、準備はいいかい?」
「いつでも」
「よし、それじゃあ解除するよ」
「「「……ッ」」」
それ以外の問題は特になかった為、『さっさと終わらせよう』とユニが氷塊に触れた瞬間、【紅の方舟】のみならず野次馬全員の前で甲高いを響かせながら最上級魔術が解かれ。
「死を纏う暗殺者に挑んだ、蛮勇なる強化術師の魂よ。 生命の輪廻に抗い、3度目の生を与えん──【神秘術:蘇生】」
「「「おぉ……!」」」
「……」
通常では絶対に不可能な〝2度目の蘇生〟を可能とするマリアの神業に全員の好奇から来る注目が集まる中、ホドルムを殺した張本人であるサレスだけは無表情で見つめていた。
余計な真似を──……いや、或いは。
また殺せる、とでも言わんばかりに。
そして、ユニの魔術で時間を止められていた為か蘇生してから目覚めるまで【白の羽衣】とは比較にならぬほど早く。
「……ぅ、うぅ……ッ? 何だ、何がどうなって……?」
「「「リーダー!」」」
「あ……? お前ら……何をそんなに──」
傷1つない身体で起き上がったホドルムに駆け寄っていく3人の仲間たちの勢いに押され、何が何だかといった様子で辺りを見回しつつ状況を確認しようとした彼の視界に──。
(──……!! そうだ、俺はあの穀潰しに……!!)
明らかに以前と何かが違う、サレスの姿が映った。
とはいえ、蘇生したての彼にそんな判断をする余裕はなかったらしく、ただ単に『穀潰しと揶揄していた少年に殺された』としか思えていない様子で悔しげに睨みつけていると。
「おはようホドルム、元気そうで何より」
「ッ、【最強の最弱職】……!」
今度は声をかけてきたユニに似たような視線を向けた。
当然と言えば当然だろう、そもそもサレスはユニに連れられて首狩人協会を訪れ、ホドルムを殺すに至ったのだから。
「この子は今から君たちの同業者となる。 君は充分に理解してるだろうけど、もし下に見たり手を出そうものなら返り討ちに遭い殺される──それを周知させてほしい。 いいね?」
「……言われるまでもねぇ」
「そっか。 じゃあ、私はこれで失礼するよ」
そんなホドルムの感情の揺れに間違いなく気づいているだろうに、ほんの少しの気遣いもせずホドルムのみならず野次馬たちも含めた首狩人や職員全員を技能なしに脅迫し。
誰もが声を失う中、唯一ホドルムだけが諦めから来る溜息とともに『是』と答えた事で満足し、ここまでの下りに反応も見せぬサレスの肩に手を置いてから去ろうとするユニに。
「……もう来なくていいぞ、【最強の最弱職】」
「はは、だと良いけどね」
一見すると苦言にしか思えぬ言葉を吐き捨てるホドルム。
しかし、そこには確かにサレスを1人の首狩人と認めて『後は俺らに任せろ』という漢の覚悟があり、ユニもまたそれを理解していたからこそ笑顔で手を振り、本来ここに居るべきでない竜狩人たちを連れて首狩人協会を後にした。
そして1人、また1人と一連の出来事を終えた疲労から当分は休みたいと言って別れる中、残ったマリアが口を開き。
「……【最強の最弱職】。 1つ、お話したい事が──」
仲間の商人だけが気づきつつあった『マリアが何かに気づいている』という違和感は正しかったようで、それを解消すべく声をかけたところユニは真剣味溢れる表情で振り返り。
「──ドライアさんの精神汚染の件かな」
「……やはり、お気づきでしたか」
自分が気づく程度のものに【最強の最弱職】が気づかぬわけがないとは解っていたが、それでも僅かに驚きはしつつ。
ユニが口にした違和感の正体について話し始める──。




