拒否権なんてありはしない
原則、協会長になれるのはBランク以上の現役、または元狩人のみであり、マリアは確かに条件を満たしてはいる。
満たしてはいるが、その事とマリアが協会長になりたいと思うかどうかは全く別の話だろうというのが共通認識であるものの、それを意見する事もまた難しいというのが現状。
何しろ相手は【最強の最弱職】、世界各地の貴族や豪商どころか各国の王族とさえ対等以上に渡り合う最強の竜狩人に対して、『お前は間違ってる』と言える者が何人居るか。
……少なくとも、この場には1人も居ない。
ゆえに、マリアや【白の羽衣】が何を思っていようと。
「……リュチャンタの竜狩人協会長、拝命いたします」
「頑張ってね」
「「「「……ッ!!」」」」
他人事のような激励を贈るユニを止める事はできない。
それを解っているからこそ、マリアは受容する他なく。
4人は悔しげに歯噛みしつつも口答えさえできず。
自分たちの運命を、受け入れるしかなかった。
「あぁ、ラオークさんは何もしなくていいよ。 協会総帥への連絡も、ドライアさんの〝処理〟も私がしてあげるからさ」
「……頼む。 儂は疲れた、しばらく休ませてもらう」
そして、ユニに振り回されていたのは【白の羽衣】のみならず、かつての好敵手であり妻でもあったドライアを独断で失脚させられた挙句、技能でも魔術でも治せない精神障害を抱えた老婆を始末してあげる、という上から目線の発言で。
首狩人協会長さえ黙らせる、それがSランクなのだ。
「さて、次はサレスに殺されたホドルムの蘇生だね。 悩んでるところ悪いけど、手続きの前にもう一仕事してもらうよ」
「あ……あぁはい、行きましょう」
そしてよろよろと去っていく老爺から目を離し、もうここでの話は終わったとばかりに次なるタスクを解決しようと動き出すユニに、マリアが操られるが如く後をついていく中。
「……本当に協会長になっちゃうの? マリア……」
「ライトも死んだし、どうなるんだ俺ら……」
「……」
「どうしたんスか? さっきから黙りこくって」
「……いえ、気のせいかもしれないんですが──」
魔術師と武闘家が突然の事態に困惑するのに対し、商人だけが何やら別の疑問を抱いている事に気づいた盗賊が問いかけたところ、確信がない為に言ってもいいのかどうか迷いつつも、マリアや自分たちの為にと自信なさげに口を開き。
「──マリアさん、何かを伝えようとしてたような……」
マリアが何かに気づいた事に気づいたのだと明かした。




