Sランクの権限
新協会長の任命権は前協会長にあり、そうして新しく任命された協会長を最終的に認可するのが協会総帥の役割。
これは首であろうと竜であろうと変わる事はなく、逆説的に何らかの不祥事を起こしてしまった現協会長を辞任させるのにも協会総帥からの認可が必要となるわけなのだが。
任命にも辞任にも、竜と首に共通の〝例外〟が存在する。
それは、ユニを始めとしたSランク狩人の〝承認〟。
下手な貴族以上の権力を持つとされる彼らには、それぞれがいち狩人として所属する組織の人事にまで口を出す権利があるらしく、『単独で国1つを制圧できる』とさえ言われるSランク狩人が『辞めさせろ』と言えば、協会総帥へお伺いを立てずとも協会長の失脚を実現できてしまうのである。
ただし正確に言えば〝Sランク狩人の承認〟ではなく〝その協会が属する国に籍を置くSランク狩人の承認〟が必要なのであって、そうなるとユニは条件を満たしていないのではないかと思われるかもしれないが、決してそんな事はない。
上述したのは〝ただのSランク狩人〟のみ満たす必要がある条件であるようで、世界にたった10人しか居ないSランクの中でも取り分け強い力を持ち、『単独で世界を征服し得る』とも囁かれている【黄金竜の世代】はこれに該当せず。
そこに属する3人の内の1人であるユニは、ただ『辞任せよ』と命じるだけで他国の協会長さえも失脚させられる。
「……仮に此奴を失脚させたとて、誰を据えるつもりじゃ」
「「「「「……ッ」」」」」
それを知っているからこそ『何故だ』だの『そんな事できるわけがない』だのという無駄なやりとりを省き、ラオークはその先を──つまり次期協会長を誰にするのかと問い。
ユニはどう答えるのかと全員に緊張が走る中。
「もう決めてるんだ、話はこれからだけど。 ねぇ──」
ただ1人、人当たりの良い微笑みを崩さぬまま。
「──マリア。 君、ここの協会長になりなよ」
「「「「「ッ!?」」」」」
ドライアに寄り添う形で膝をついていた最後の希望、マリア=ローゼスに対し、そんな彼女の傍で項垂れて意識を失ったままのドライアに代わって新たな協会長になれと命じ。
マリアと同じパーティーに属する【白の羽衣】の面々や彼らの嚮導を受けた事のある【銀の霊廟】の面々が驚きを隠せぬ一方、当の本人はと言えばただただ静かに溜息をこぼし。
「……嫌な予感はしていたのですけどね……」
受け入れざるを得ないのだろう現実に、辟易していた。




