帰還と報告
それから約半日後、全てを成し遂げて迷宮を出たユニ一行はリュチャンタへ帰還、報告の為に狩人協会へと赴く事に。
今回のクエストは特例中の特例、竜狩人協会と首狩人協会の双方が【最強の最弱職】へと依頼する形で成立したものであり、どちらにも事の顛末を報告する義務があったようで。
「急に時間作ってもらって悪いね、2人とも」
「本当にの」
「アタシゃ構わないけどね」
「……貴様はそうだろうよ」
「「「「「……ッ」」」」」
竜狩人協会の長、ドライアが歩行困難な状態にあるという事を考慮して急遽招かれた首狩人協会の長、ラオークが呆れた様子でついた溜息にユニとマリア、そして迷宮攻略以前とは明らかに何もかもが違うサレス以外の全員に緊張が走る。
今この場に居合わせているのは上述した5名に加え、ライトを欠いた【白の羽衣】4名、【銀の霊廟】5名、ホドルム以外の【紅の方舟】3名──……都合、17名の狩人たち。
ちなみに、今回の立役者の1人であるレイズは居ない。
彼女はユニに嫌われている自覚があり、ユニとともに居ると面倒な事にしかならないと理解していた為、迷宮を出た時点で『後はよろしく〜』と言ってどこかへ消えてしまった。
現段階で彼女の存在を知る由もないドライアやラオークが疑問に持つとすれば、ここに居るべき1人と1匹について。
「で? 全部話してくれるんだろうね、ユニ。 マリアを含めた全員が揃ってるのにライトだけが居ない理由も、半野良と化してたあの迅豹竜が居ない理由も、そして何より──」
……いや、ドライアに限って言えばもう1つ──。
「──ファラ……いや、サレスの様子がおかしい理由も」
「もちろん、お気に召すかは知らないけどね」
「「……」」
昼間だというのに一切の光を反射しない真っ黒な瞳に何も映さず、ユニたちの会話にも決して混ざらず、ただ何かを品定めするかのような態度でユニの斜め後ろに立つ幽鬼のような少年の異変について確認せずには居られなかったらしく。
そんな老婆の疑問を解消できるかどうかは知らないし、実際のところ興味もないが、ともかくユニは報告を開始する。
……少年を孫の名で呼びかけた事実に蓋をしながら。
時間にしてみれば、およそ15分からなる報告の内容は。
迷宮の最奥に置かれていた宝箱から出てきた触手の正体。
マリアを吸収し、神への叛逆を企てていた主天使の存在。
ライトが秘めていた、常軌を逸するマリアへの執愛。
攻略途中に遭遇した【高潔なる二面性】の勝手な介入。
主天使や、それを乗っ取ったライトとの戦いで次々と犠牲になる中、暗殺者としてユニの望まぬ形で覚醒したサレス。
それが気に食わなかった為か、サレスが望むか望まざるかを考慮する事もなく〝覚醒の上書き〟を施すに至ったユニ。
そして、レイズの力を借りる形でサレスがライトを討伐。
無事にマリアを救出、ライト以外を蘇生させて今に至る。
「──と、そんなこんなで依頼達成ってワケ。 ね、マリア」
「そうなります」
「「……」」
黄金竜の世代と最後の希望、双方ともに人間離れした力を持つ狩人からの何とも軽めな報告を真に受けてもいいものか、と2人の長は互いに目を合わせる事もなく熟考し始める。
余談だが、フリードは気絶している間にユニが殺した。
覚醒以前ならまだしも、今のサレスに調伏されていない竜化生物を迷宮宝具なしに手懐ける余裕などあるとは思えず。
そして白色変異種や黒色変異種を調伏済みのユニが今さら地上個体を欲する筈もなく、フリードはあっさり殺された。
……サレスの目の前で。
彼は、何の反応も示さなかったが──。
「──色々と腑に落ちんところもあるが、まぁいい。 ホドルムについてはどうする? これからすぐに蘇生させるのか?」
「そうだね。 私じゃなくて、マリアがだけど」
「……頼むぜ、聖女サマよ」
「えぇ、お任せください」
「……ならば良い。 ワシが提示した条件も、1匹欠けてはおるが及第点としよう。 サレスの首狩人登録を承認──」
いまいち要領を得ない部分こそあるものの、ひとまず今この瞬間も修練場を占拠する巨大な氷塊を撤去するべく中に閉じ込められたホドルムの蘇生を優先させようとし、ここでの話を終わらせようとしたラオークの言葉を遮ったのは──。
「──……認めない……認めないよ」
「え?」
「今のサレスを首狩人になんて、アタシゃ認めない」
(……やはり、か)
ユニにとっては予想外の、ラオークにとっては想定内の。
ドライアによる、首狩人協会登録への不同意だった。




