若さは武器?
翌朝華は大学に行く坂道をトボトボと上っていた。
「華おはよー!あれ、どうしたの?なんか元気ないね」
「あ、夢子おはよう。うーん、昨日バイトで疲れちゃって」
「早々にたくさん働いたの?」
「そうじゃないんだけど。めちゃくちゃ可愛い主婦がいたんだよね。細くてお目々パッチリで髪はサラサラでさ、うちのお母さんなんかとはまるで別世界に住んでいるような、お人形みたいな主婦。もう衝撃だよ。多分40歳ぐらいなんだけど」
「なーんだ、オバサンじゃん」
「いや、歳はオバサンでも全然オバサンじゃないの。見た目も声も可愛いし、しかも仕事はよくできるし英語もペラペラなの。所作も優雅でさ。もう全部が完璧すぎて、すごーいパチパチ、とかいうレベルじゃなくて、むしろドン引き」
「ふーん。まあでも結局主婦じゃん?」
「主婦だけど」
「うちらは18歳なんだから若さでは断然こっちのほうがピチピチだよ。どうせ主婦は厚化粧して髪も染めたりしてごまかしてるんでしょ」
「いや、お化粧はかなり薄かったけど、目そのものが綺麗でまつ毛も長くてクルンとしててさ。見てたら別世界に引き込まれそうな目。髪もナチュラルに見えたけどなぁ」
「まあ主婦の中では相当高レベルなんだろね。でもうちらには若さっていう武器があるんだから最強だよ。どんな美人の主婦がいても結局男性は主婦には興味も持たないだろうしさ。ま、うちらも美人女子大生には敵わないけど」
「…うーん、まぁ…」
「で、華はその主婦から意地悪されたの?」
「ううん、その人は中身も優しかった。自慢することもなく謙虚だったし」
「なーんだ、じゃあ悩むこともないじゃん。英語だってまあ主婦が話せるって言っても簡単な日常会話でしょ。うちらは難しい試験に合格して国立大で日々勉強してる現役女子大生だよ。中身も外見も卑下することないよ。とにかく若さは武器よ、華がんばれ!」
「…そうだね、ありがとう」
確かに実家の母も若さは武器だと言っていた。
藍子の姿には衝撃を受けたが、一般的には女子大生というものには華やかさがあるものだし、母や夢子が言うように、ぽっちゃりだけど若い華には、それなりの魅力はほんの少しかもしれないけどあるのかもしれない。
2人があんなに自信満々に言うのだから、きっとあるのだろう。
別に藍子と張り合うつもりは全くないけれど、何となく沈んでいた心は夢子と話しているうちに少しずつ元気になっていった。
「よし、じゃあ今日のお昼はこの前言ってたおしゃれなレストラン行っちゃう?」
夢子は華を元気づけるように言う。
「いいけど、お昼休みの間に行って戻って来れるの?」
「急げばね。並ばなくていいように予約しとくよ」
夢子は立ち止まってスマホを操作する。
「えーとWhite River…わ、当日でも予約できる!12時20分、2名、と。よし、OK!」
「夢子ありがとう」
華はすっかり元気になって、弾むように続きの坂道を上った。
この物語はフィクションです。作中に登場する人名や地名、校名、フルーツの銘柄などはすべて架空のものです。一部実在の名称と同じものも混在しますが、実在の人物や団体などとは一切関係ありません。




