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ワッフル店『小春庵』の日常  作者: 小春庵


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新生小春庵

白沢大学卒業式の翌日、藍子が小春庵に出勤すると、春子が待ち構えていた。

「藍子さん、おはよう。待ってたのよ、ご報告とご相談があって」

「おはようございます。何でしょう」

藍子は春子がこんなにはしゃいでいるのは珍しいなぁと思いながら聞く。


「まず1つ目は、多分もう知ってると思うけど、昨日の夜、お嫁さんの紅葉さんのお友達、森井蘭さんから連絡があったの、働きたいって」

「はい、私も昨日聞きました。昨日紅葉ちゃんも含めてみんなでお昼ごはんを食べて、その時に森井さんが応募することに決めたらしいって言ってました」

「早速来週面接に来てもらうことにしたわ」

「良かったです」


「2つ目はね、昨日、新生小春庵についての会議をしたのよ」

「し、新生小春庵!?」

「そうなの。実は華ちゃんから、この前の送別会で出したワッフルランチを商品化することを提案されたの」

「それはいいですね!私もあのランチすごく美味しかったから大賛成です!色味も、卵の黄色、サラダの緑や赤、それにドライフルーツのピンクでカラフルで映えるし、バランスも良さそうですよね。あと私毎朝カシューナッツとクランベリー食べてるので、好みが合うなって思ってたんです」

「そうなの!?華ちゃんもあれ気に入ってくれたらしくてね。でもここは座席が5つしかないでしょ?席が足りないのよね」

「そうですね、古民家で増築もできないですものね」


「そこでまた華ちゃんが提案してくれたのよ。スタッフルームを客席に改装したらどうですかって」

「スタッフルームをですか!」

「そうなの。で、代わりに2階にスタッフルームを作るの」

「2階にですか。それは建築基準法はクリアできるんですか」

「専門家に相談しないとわからないけど、多分お客様が行かなくてスタッフだけなら大丈夫なんじゃないかしら。保健所と消防署の手続きとか、工事もあちこち必要だろうけど」

「そうなんですね。よくそんなこと華ちゃん思いつきましたね」

「私もびっくりしたのよ。まだ昨日思いついたばかりで、これから家主さんにも相談しないといけないし、法律上のこともしっかり調べる必要はあるけど、もしそのへんがクリアできたらこの案いけると思う?」

「もちろんです。きっと人気出ますよ。でも結構作るの大変そうだし、そこそこ長居されるかもしれないし、1日限定何食とか設定するのもいいかもしれないですね」

「そうね、確かに」

「あと、スタッフも多めに必要ですよね」

「そうなのよ。初響ちゃんが4月から来てくれるとして、蘭さんも決まるとしても、さらにまだ欲しいのよね。できれば主婦も大学生も」

2人はオープン準備をせっせとしながら、話を続ける。


「そう言えば麗花さんからこの前メッセージもらったんですけど、ここで働きたい気持ちもすごくあるけど、保護猫のことが気になってなかなか踏み切れないみたいです。むしろ私がボランティアスタッフに仲間入りするように勧誘されてます」

「え、そうなの?ミイラ取りがミイラになるみたいね」

「ミイラにはなっちゃわないように、私がちょっとだけ合間に保護猫のお手伝いして、麗花さんは小春庵に週1〜2回ぐらい来るみたいな、トレード式を希望してるんですけどね」

「それだといいわよね」

2人はひとしきり笑い、

「とりあえずランチと改装は本格的に検討し始めて、スタッフの増員もして、と。新生小春庵楽しみになってきたわ」

「退職の10日前にこんなすごいニュース聞けるとは思ってなかったです」

「ギリギリで藍子さんに相談できて良かったわ。主人が亡くなってもう5年も作ってなかったランチプレート、久しぶりに作った時は緊張したんだけど、思い切って作ってみたらこんな嬉しいことに繋がって。作って良かったわ」


その日は何となく春子も藍子もふわふわとした気分で、お客様が途切れる度に新生小春庵のことが頭に浮かんだ。

午後になり、華が出勤してきた。

「おはようございます」

「おはよう。華ちゃん、改装とランチの件、藍子さんも賛成してくれたわよ」

「良かったです!」

「華ちゃんよくあんなアイデア思いついたわね。すごいわ」

「法律のこととか無知だからこそ思いついたのかもしれないです。無謀なこととか思いついちゃう感じで」

「若さねぇ」


「ところで春子さん、藍子さんの引継書のうしろに閉店後の片付けのことを書き加えてきたので、お時間ある時にチェックお願いします」

華がA4の紙をホッチキスどめしたものを、春子に渡す。

「あら、華ちゃんもう作ってくれたの?ありがとう。あとで見るわね」

藍子は引継書の完成にホッとし、

「これで安心して退職できるわ」

と言いそうになったが、華が泣くかもしれないので言葉を飲み込み、わざと明るく

「お先に失礼します」

と帰っていった。


この物語はフィクションです。作中に登場する人名や地名、校名、お茶やフルーツの銘柄などはすべて架空のものです。一部実在の名称と同じものも混在しますが、実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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