黒服の者たち
すいません。
更新が遅くなりました。
黒で全身を覆っている者たちはこの戦場を見続けていた。始まりから何もかも。
だが、戦闘に介入する気配は今のところはない。
彼らは全てが異常だ。気配、姿、容姿。それぞれがバラバラ。男女なんて関係ないと言わんばかりに女も多い。それでも男が多いのだが。
"最強"。この言葉に合う者たちばかりだ。
一人の女がリーダー格と思われる人物に声を掛ける。
「そろそろ、行くべきじゃない?」
「ああ。」
リーダー格の男は冷静な様子。目線は戦場へと向けられている。
「久し振りの戦場出せ!」
大柄な男は腕をぐるぐると回して、やる気十分といった感じだ。
「兄貴、どっちが多く仕留められるか、勝負だ!」
「良いぞ、弟。」
双子らしき2人は競い合う気満々だ。
「しゃあー行くぜ!」「やってるわ!」「負けねぇ!」
様々な声が入り交じる。それを聞いた数人は溜め息をついている。
「良し行くぞ!」
リーダー格の男の声と共に黒服の者たちは次々と戦場に雪崩れ込んでいく。
これが戦局を左右された。
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グレンにとってみれば予想外の出来事である。後方から皇国騎士団の進撃と左右からの謎の一団の奇襲。この二つが彼の頭の回転を鈍らせた。現状起きている出来事を理解出来ていない。この二つの出来事を予測するのは無理な話だ。
自軍の砦を攻め落とされ、同時に謎の一団の奇襲。まるで計られたかのように。
「何なんだ。これも軍師騎士の戦略なのか?」
――これを全て頭の中で考えて実行に移しているのなら、それは人間ではない化け物だ――
そう彼は頭の中で思考してしまった。
何時もの彼なら、こんなことで動揺したりしない。常に冷静な男だ。普段の彼なら何とかしたかもしれない。
だが、相手が悪かった。軍師騎士とはそういう存在なのだ。彼の頭の中で良く分からないが納得してしまった。
――自分の勝てる相手ではない――
「どうする。どうすれば良い。此処で負けるわけにはいかないのに。」
彼の頭の中はただ真っ白だった。何も浮かんでこない。対策なんて出てこない。
――ワルト、ガイ、俺はどうすれば良いんだ。教えてくれ――
彼の頭には旧友である2人の男の顔が浮かんでいた。
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ジンたち、灰炎騎士団は戦闘行為の行えなくなった勇者たちを連れて、戦場に向かっていた。
戦闘で馬を走らせるのはジンと秀だった。
秀は素朴な疑問をジンに訊ねた。
「これからどうするんだ?」
「分かると思いますが、戦場に向かいます。」
「実際には何をするのかを聞いているんだ。攻め方とか。」
「そうですね、此処からは真っ向からのぶつかり合いです。戦闘が終わっているかもしれませんが。」
秀は首を傾げた。何を言っているのか理解できなかったからだ。
――戦闘がそう易々と終わるものか――
彼はそう思った。実際にそうだからだ。戦争は簡単には終わりはしない。どんな戦略を用いろうとも、簡単に終わらせることが出来るほど、戦争は甘くはない。それは彼も歴史書なので良く目にしていたから分かった。
「秀さん、貴方は他の勇者とは違って戦闘に耐えられたようですね。」
「ああ。」
「普通の人なら、初めて人を殺すという経験をすれば、他の勇者のような反応をするのが当たり前ですが、貴方は違ったみたいですね。」
「割り切ってるよ、そんなことは。この世界に呼ばれてからな。」
「そうですか。」
ジンはそう答えることしか出来なかった。
赤の他人である戦闘も知らなかった少年少女にこの国のことを頼んでいるからだ。彼らにも、他に生きていく人生が違う世界にあっただろうに。
そう思うと、何も言えなくなってしまう。
彼らを巻き込んでしまった自分達は大変な罪を犯してしまったのだと常々思っている。だからこそ、彼は何も言えないのだ。
「早々、何故終わっているかもしれないと言えるかというと黒服の一団がこの戦争に介入するらしいんですよ。」
「黒服の一団?」
「そう。アルクス様が幼い頃に出会った人や灰炎騎士団の団長になってから見付け出した50人の"最強"。その強さは一騎当千と言っても過言ではないと思いますよ。性格が少々変わっている人たちが多いですが。」
「そいつらがこの戦争を終わらせると?」
「そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。行ってみないと実際は分かりません。」
「そうか。」
ジンと秀の馬は速さを増して、灰炎騎士団の進軍速度は上がった。
如何でしたでしょうか?
それではまた。