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考え方

すいません。


更新が遅くなりました。


では、どうぞ。

砦が落ちたことを知った後、グレン率いる帝国軍は皇国の騎士団の襲撃を受けていた。それが12神将の誰かによって率いられているのは良く理解できた。洗礼され統率した一団。これを先の大戦で幾度も見ているグレンにとって容易に予想は出来たし、他のことを考える余裕は彼自身になかった。誰よりも12神将を知り、その強さを見に染みて理解しているからこそなってしまったこと。体が反射的に動かなくなったのは苦手意識を頭の中に刷り込み続けたのも原因の一つである。


「チっ!どうしてこんなことになるんだ。」


意識することなく勝手に出てきた言葉だった。

今の彼らの状況は非常に芳しくない。寧ろ、悪化し続けている。敵の攻撃に混乱して陣形が乱れている。最悪な状態。立ち直らすにも率いているグレンが動けなくなっているため、どうしようもない。何も出来ない。ただ、陣形が乱れる一方だった。


グレンは何とか頭を働かせて対策を考える。

帝国軍は今、全方向から攻撃を受けている。これが幻術であることをグレンは耳にしたことがあった。12神将の一人が扱うという幻術。原理などの詳細は全く分からず、怪我をしているわけでもないのに斬られたような痛みのある感覚、本当の人数より数が増えていたり、人がまるで違うものに見えたり、上がってきた実体験の内容は様々でその全てに共通するのが現実に起きていたことではなかったことである。これは軍の上層部でも話し合いや真偽を確かめることを行ったらしいが結局、結論は出なかったそうだ。


「幻術使いか…本当にいるとはな。」


グレンは一つの策を兵たちに告げた。悪戯みたいな悪足掻きのような遊びみたいな策であったが、これしか彼には浮かんでこなかった。単純で実にシンプルなそれは逆に敵に効くのではないのかという若干の期待も彼にはあった。


「やれ!」


グレンの号令と共に弓を扱う兵たちが弓を置き始めた。そして、下に落ちている石や木の枝を敵がいるであろう全方向に投げ始めた。この行動がすでにおかしかった。盗賊みたいな戦い方だと兵たちも疑問に思ったが、将軍であるグレンに逆らえることも出来ず言われた通り投げ続けた。その成果は案外早く訪れた。


一つの方向でだけ音がしたのだ。石や木の枝が装備に当たる音が。それがこの状況を打破する為のグレンの策だった。例え、幻術を使っても音は書き消せないと思って出した捨て身の策でもあった。

兵たちが投げている間に前衛の剣士たちが防衛をする。これは上手くいったとグレンは内心でニヤリと笑った。


そして、次の合図でグレン率いる帝国軍は一つの方向に向かって動き始めたのである。


***********


イノアは自分の置かれている立場を十分に理解している。自分の術が意図も容易く破られ、簡単に攻略されてしまったことを思い知っている。この状況は極めて芳しくないものであることも。


何時かは破られると思っていた。だけど、それが今であることを彼女は想定しなかった。予想出来なかった。何か対策をして来た訳でもなく、咄嗟に浮かんだであろう策に潰された。それが悔しかった。正に完敗だ。これがイノアの心情であった。


目の前にいる男のことはイノアも知っていた。帝国四天王の一人 グレン。先の大戦では戦うことはなかったが、話は他の神将たちから聞いていた。頭の回転が早い。アルクスが皇国の頭脳なら、帝国軍の頭脳はグレンである。そう言われてもおかしくない程の頭の回る男なのだ。実力は申し分ない。結果も出している。油断していたわけではない。単純な知恵比べで負けたのだ。実際には知恵比べとは違う感じだが。


その男の語りかける言葉にイノアは耳を傾けた。


「お前が神将か?」


「そうよ。」


「お前に聞きたいことがある。砦を落としたのは軍師騎士なのか?」


「作戦の立案をしたのはアルクスだけど、実行したのは彼の副官よ。」


「人材に恵まれているのだな。」


グレンは他人事のように言う。それもその筈だ。帝国軍は次世代の四天王や優秀な人材が育っていない。育成する人材が居ないことも原因であるが。


その全ての基になっているのが先の大戦だろう。あの戦いで多くの優秀な人材を失い、育成を担っていく人材も無くした。

若い者を導く者が少なくなったのだ。そうであるのだから、致し方ないことでもあるが。


「……お前たちの国が羨ましい。良き人材が次から次へと育って、歳をとった者が繋げる担い手がいるのだから。」


グレンの呟いた嘆き。イノアには何も言えることはなかった。それはそうだ。グレンは敵国の将軍。彼女が掛ける言葉は一つもなかった。


「そうね。人材は育っている。でも貴方たちも戦を起こすことがなければ、人材の育成をする時間があったんじゃないの?」


「それは間違いない。だが国が決定したことに逆らうのは兵士として犯してはならないことだ。それも将軍クラスになると尚更。それはお前たちにも分かることだろう。」


「分かるわ。でも私たちの国を纏めている皇は穏和で戦事を嫌う。平和を一番愛する皇。非道なことはしない。帝国のようなことは勿論。」


「帝国は領土拡大。そして大陸統一を国家悲願とする国だ。だからこそ、非道な行為に出ることを辞さない。皇国と同じな訳がない。」


2人の会話を聞いている者は誰もいない。手錠に繋がれたイノアとグレンの一対一の話し合いだ。どちらも自分が仕える国について答えている。

神将と四天王の2人だから話せる会話であることは間違いない。


「だがな、帝国が大陸統一を悲願とするのはただ支配をしたい訳ではない。平和を考えた上で、大陸を1つの国に纏めた方がより平和となるという考えがあってこそだ。」


「そういう考えがあるのかもしれない。だけど、武力行使をしなくても大陸は平和に出来る。国々が対話という手段を用いて協力して取り組めば、争いを起こすこともなく解決が出来るわ。」


「甘い。その協力体制は名目上でしかない。裏ではどの国も裏工作などを行って、より良い利益を求めて走る。それは表面上の平和でしかない。」


「例え、そうであったとしても、争いという無意味な殺し合いに人々を巻き込まない手段としては間違ってない。」


2人の言葉の撃ち合い。

イノアとグレンの考えが出ている会話。


平和は武力によって成せるものと考えるグレンと平和は各国が協力して成せるものと言うイノア。

2人の食い違った意見はどちらも間違ってはいない。

武力のある強い国には武力のない弱い国は敵わない。弱肉強食という世界に生きる国々であるから、これは止めようのないことなのかもしれない。だったら、武力行使をして自分達が先に動き出す。自分の国を守るためには大切なことだと思う。

各国が協力して取り組めば良い。これは甘い考えなのかもしれない。でも悲惨な争いを避けて、危機的な状況になった国を他国が助けていくことは重要なことだと思う。助け合って生きていく。簡単なことではない。人間という生き物の中で様々な考え方を持っている。差別意識であったりするものを植え付けられてきた貴族や王族は中々協力的ではないかもしれない。でもそれを変えるのも一人の人間なのだ。



2人の会話はそこで打ちきりとなった。何故なら、帝国軍が何者かに攻撃を受けたからである。


「チッ!どうしたのだ!」


グレンの声と共に一人の兵士がやって来る。


「はい。現在、左右そして後方から何処ぞの手段に襲撃を受けています。」


「何処ぞのとはどう言うことだ。」


「はい。後方からの襲撃は皇国騎士団であることは多分間違いないのですが、左右から襲撃をして来ている集団が何者なのかは一切不明です。現場の兵士によると全身を真っ黒な服装で揃えられているらしいのです。」


「ちょっと待て、砦から此方に向かってきたのか。おい、お前は何も知らないのか?」


グレンはイノアに確認をするしか方法はないことを悟っていた。だから答えに期待していた。


「知らないわ。アルクスが何かしたのでしょ。」


「使えん。ではお前は此処に待っていろ。話の続きは後でだ。」


「悪いけど、それは無理よ。」


イノアの否定にグレンは何だと振り返った。彼女の答えに再度期待したのだ。


「何だと!」


「後方からの騎士団はアルクスが育て上げた精鋭。貴方たちじゃ無理よ。」


グレンの頭は真っ白になってしまった。

如何でしたでしょうか?


それではまた。

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