捜査網
「魔術師が事を起こしただと。非常にまずいことになった。」
内閣総理大臣である安田敏則が呟く。安田総理は警察庁からの情報でこれを知った。所轄からの情報が警視庁、警察庁へと伝わってきたのだ。
安田総理は頭を悩ます。それもそのはずだ。魔術師の存在自体がトップシークレットなのである。内閣でも総理大臣と防衛大臣、国家公安委員長しか存在を知らない。日本では他に各都道府県警のトップ、警察庁の中でも限られた一部の人々、自衛隊の一部しか存在を知らない。世界各国でも国のトップや軍のトップしか魔術師の存在を知らない。
それはなぜか。魔術師という存在が日本における最大の抑止力になっているからだ。核兵器を持たない日本が外国から攻められない理由である。核兵器を持つ国も迂闊には攻められない。何しろ意志を持ちながら周囲に甚大な被害を与えることができるからだ。特に禁術とよばれる術式は人類の叡智を超える力を持つ。各国の軍ですら容易に手出しできない可能性が高いのだ。そんな存在が5人以上も日本に存在するのだ。攻撃を日本に行った場合、仮に魔術師が報復へと踏み切るならば自国を滅ぼしかねない。そう言った恐怖が最大の抑止力となっている。
その中でも黒魔術と白魔術は確認されている5つの魔術の中でも別格である。そして今上がっている情報では黒魔術を操る黒姫家の人間が事件を起こした可能性が高いという。
「とにかく魔術師対策室へ指示だ。魔術師を全員拘束だ。これ以上情報を漏らさずに事件を鎮静化させるためにも。」
そう言いながらスマホを取り出し画面を操作した。
「長門さんとりあえず渋谷に着きましたけど、どうやって探しましょうか。」
魔術師対策室の北見悠里が男に問いかける。
「事件が起きて2時間以上経っている。黒姫家の者と見られる動画が上がったのが大体30分以上前か。その時点ではまだ渋谷駅にいたのだからそこまで遠くへはいっていないはずだ。」
長門と呼ばれた男は腕時計を確認しながらそう答える。長門竜生、魔術師対策室の副室長長代行である。今回渋谷での捜査では班長を任せられている。
「とにかく聞き込みですよね。あとはSNSの情報もバカにはできないかと。」
長門の言葉に女性が反応する。加賀紗江、魔術師対策室のメンバーである。
この3人が渋谷での捜査を担当することになった。
「そうだな今回はSNSの情報が重要になると考えられる。これだけ情報が加熱しているんだ、見つかればすぐにSNSにあげられるであろう。後はどう確保するかだ。素直に応じるとは思えない。戦闘になることは覚悟しておけ。」
加賀と北見に緊張が走る。訓練はしたことあるものの実際に魔術師と戦闘するのは初めてだ。いや、長門もそうである。戦後魔術師と国家側が戦闘した記録は残っていない。実践不足ではあるのだ。いくら専用の武器と身体能力があるとはいえ心細いのは確かである。
「これが任務ですから。わかっています。」
加賀が答える。
「正直怖いですけど任務ですから。」
北見もそう答える。
「ふむ。」
長門は満足そうに二人を見た。
そしてスマホでSNSを確認する。
「目撃情報が上がっているぞ、渋谷駅の西の方でだ。今すぐ向かうぞ。」
「はい!」
三人は渋谷駅の西側へと向かった。
「なるほど、このビルとビルの間で見つけたと。ええ。若い女性二人ですね。奥の方へ逃げていったと。わかりました。ご協力ありがとうございます。」
長門が目撃者に聞いている。その間加賀と北見の二人は他に目撃者がいないか探していた。
魔術師対策室は存在自体が極秘であるため警視庁捜査一課の刑事ということにして聞き込みを行っている。
「なるほどまだそんなに時間は経っていない。まだ近くにいるかもしれない。」
長門の勘が当たることになる。
昨日は用事で投稿できませんでした。すみません。
皆様楽しんでいってください。




