犯人は私?
渋谷駅の入り口についたセレネとルナ。これから帰ろうとするがなぜか周りの目が自分たちに寄せられていることに気づいた。
「なんで私たち見られているのかしら。」
セレネが言った。
「えー気のせいじゃ無いですか?とりあえずさっさと帰りましょうよー。美味しい夕飯が待っていますよ。裕子さんが作ってくれる料理美味しいんですよねー。」
ルナが呑気に言う。
「普段はあなたが料理番のことが多いでしょ。あなたももう少し料理を勉強しなさい。」
ルナは普段居候する代わりに家事を手伝っているがその腕はイマイチなのである。
「まあルナの言うとおり早めに帰りましょう。夕飯が遅くなるわ。」
セレネがこう言う。セレネ自身も疲れているので早く屋敷に帰りたいのは事実であった。
「あー疲れた〜。やっぱり外なんて出るものじゃないですね!足がパンパンですよ〜。こういう時はこの魔術があれば一時的に足が回復するから〜。」
ルナが黒い魔法陣を自分の足元に描き出す。黒く光り出した魔法陣がルナの足を覆う。
魔術は世間で言われる魔法陣のような魔術陣と呼ばれるものを用いて発動する。基本的には術者自身が心で思い描いた魔術陣を空間上に発現しそこに自身の魔力を通して発動する。今回ルナが発動したのは未来の自分の体力を一時的に前借りする呪いのようなものであった。
「人前で何してるのルナ!」
慌てて叫び、止めようとするセレネ。
「あ、やばい。外だということを忘れてた。」
やばいと言う顔で魔法陣を消すルナ。それまで自分で外に出るのはもういいと言っていたのにである。
だがもう遅かった。周囲の人々の目線が二人へと突き刺さる。
「さっきの光はなんだ?」
「魔法陣のようなのが見えたぞ!」
「あれあの顔今Xでバズってるあの事件の犯人に似ているような。」
野次馬が二人に集まっていく。
「逃げるわよルナ!」
「あ、ちょっと・・・」
セレネがルナの腕を掴み駅の出口へと走り出す。
「逃げたぞ!あの事件の犯人かもしれない!」
野次馬の誰かが叫び出す。
「あの事件って何?」
「今Xでバズっている魔法を使ったとしか見えない事件だよ!今急にXで広がっているよ!」
「あの事件の犯人がここにいるって!?」
「背格好も似ているし間違いないよ!」
野次馬が出来はじめ、皆スマホで撮影を始める。
「どう言うことかしら・・・。あの事件ってなんのこと。」
セレネは野次馬の声を疑問に思う。
だがそんな余裕はなく走ってとにかく渋谷駅の出口に向かった。そして駅近くのビルとビルの間の細い隙間に逃げ込む。
「とりあえず人目のつかない所に来たわ。」
特にセレネがゼーゼーしながら言う。セレネはお世辞にも運動神経がいいとは言えない。むしろ皆無と言って良いほどである。普段の状態で100mを走ると酸欠で倒れるほどである。だが今回は緊急事態であり体がそれに反応しているため酸欠で倒れるほどまでには至っていない。ルナは運動神経が良いためそこまでゼーゼーしていない。
「にしても何故あそこで魔術を使うの。思いっきり人前じゃないの。」
呆れるセレネ。
「申し訳ございません、お嬢様。」
平謝りするルナ。
「にしてもあの事件ってなんのことかしら。私たちが犯人扱いされていたけども。」
あの時確かに人々はセレネとルナに向かってあの事件の犯人と言っていた。ただそれだけの情報では二人には何も分からない。
「私たちは渋谷についてからそのままカフェで待っていたわ。その間別に何かしたわけではないわ。でも魔法とも言っていたような気もするわ。」
そういうセレネのスマホに着信が入った。月彦からであった。
「もしもし。姉さん?」
「どうしたの月彦?今こっちは大変な状況なのよ・・・。後でで良いかしら。」
「それどころじゃないよ。今Xに上がっているんだけど渋谷で殺人事件があってその時に魔術が使われたらしいんだよ。まさか姉さんたちじゃ無いよね?正直背格好も似ていたし。」
驚くセレネ。さっき野次馬が言っていたことととこれでつながった。
「私たちじゃないわ。ずっと指定のカフェで待っていたもの。」
「そうだよね、姉さんたちではないと思っている。だけどそうなると誰がやったんだろう。まさか他の魔術師が?もしくは僕達が知らないところで他に魔術師がいるとか。」
「今はそれどころではないわ。とにかく今騒ぎになって人前に出られない状況なの。」
「わかった、とりあえず大井さんに言って車で迎えにいくからそこまで待ってもらって良いかな。」
「う、仕方ないわね。今の状況では電車に乗れないし。」
セレネが顔を顰めながら答える。
「じゃあ待っていてもらって良いかな。もう高校から帰って家だからさ。今から急いで向かうね!」
通話が切れる。二人は迎えが来るまで渋谷で待機することになった。衆人環視という牢獄の中で。




