5月7日
5月7日、14時半。天気は晴れ。気温は比較的涼しいが日差しが強い。
セレネとルナは渋谷駅の改札にいた。セレネはいつもの黒のロングワンピースではなく黒を基調としたスカートスタイルの今時の格好、ルナは今時のギャルのような格好をしていた。
「ようやくついたわ。本当に大変だった・・・。」
セレネがそう口にする。
「本当にそうですよね・・・。」
ルナも同意する。
二人とも明らかに疲れた表情である。ここまで来るだけでなんともいえない達成感に二人は酔いしれていた。
二人とも普段外に出歩かないため、心配した月彦がスマホの地図アプリなどの使い方や電車の乗り方、交通系ICカードの使い方、乗り換え場所をあらかじめ教えていた。ただ二人ともスマホの操作が得意ではないためそれにも苦戦。電車に乗ったのも片手で数えられるくらいのため二人とも内心恐怖でしかなかった。普段セレネが高校に行く際、通信制高校の最寄りのキャンパスまで行くのには車で送ってもらっているのである。ルナも同様であった。
最寄りの寒川駅まではお手伝いさんの大井に送ってもらったがそこからが大変であった。電車の乗り方にも四苦八苦し、乗り換えにも手間取りながら何とか到着したのである。
改札を出てすぐのところで立ちすくむ二人。普段こんなに人が多いところには行かないため慣れていないのである。
「と、とりあえずこの手紙に書いてあるカフェに向かうわ。今地図アプリで検索する・・・、どうやって検索するのかしら・・・?」
「お嬢様、それは月彦様に教えてもらっていたでしょう。私のスマホでやりますから。」
「相変わらず声が大きいわよ・・・。」
ルナがお嬢様と言ったため周りの目が二人に向かう。だが、渋谷の人混みの中ではすぐその視線は無くなった。
ルナがスマホを操作している間セレネはふと考えた。
「それにしてもなぜこのタイミングであの男から連絡が来るのかしら。」
だが考えても答えは出ない。頭を悩ませる一方であった。
その合間になんとかルナが指示されたカフェを検索することに成功していた。
「こっちですよお嬢様!この通りに行けば間違い無いはずです!」
ルナが行く方向を指差しながらセレネに伝える。
二人は渋谷駅の出口に向かった。
平日とはいえ渋谷駅前の人通りは多い。人混みに紛れながら二人は移動する。
駅から10分程度歩くと指定されたカフェが見えてきた。
「ここだわね。」
「ええ、ここで間違いありません。」
二人はカフェへと入っていった。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
おしゃれな格好をしたカフェの店員が笑顔でセレネとルナに聞く。
「後でもう一人来る予定なのですが・・・」
セレネが緊張した面持ちで言う。何しろ普段外を出歩かないため、こういったお店にも入ったことがないのだ。
「そうでしたか。では席にご案内しますね。」
二人とも緊張しながら席へ通される。案内されたのは4人がけのテーブル席だ。
ルナも普段外に出ないため緊張していた。
「なぜこんなオシャレなところを指定したのかしら。あの男のセンスとは思えないけれども。」
セレネがこう言うのも無理はない。
店内はジャズのBGMが流れオシャレな内装である。普通の中年男性ではなかなか選びにくいようなところである。
「とりあえずコーヒーでも注文しましょう。」
セレネはこう言ってメニューを広げる。
「私はカフェオレにします!」
ルナはあまり苦いのが得意ではない。
「お待たせしました。ホットのブレンドコーヒーとホットのカフェオレです。」
しばらくすると店員が2つのカップを持ってきた。
「ありがとうございます。」
セレネはそういいテーブルの上に置かれたカップを見つめる。
「私はブラックでいただくわ。」
そう言いながらセレネはコーヒーを口へと運ぶ。
「私も。」
ルナもカフェオレを口へと運ぶ。
「美味しいコーヒーだわ。」
セレネがこう言った。このカフェはこだわりのコーヒー豆を使っているのである。
しばらくコーヒーを飲んで二人は手紙の宛先人が来るのを待っていた。
「そろそろ来るはずなのですが。」
セレネはこう言って店内にかかっている時計を見た。時計は15時を示していた。
「来ませんね。」
ルナもスマホの時計を確認しながら呟く。
「まあもう少し待ってみましょう。」
セレネはこう言い再びコーヒーを口へと運んだ。
それから約1時間経過したが一向に来る気配がない。
「まだ来ないのかしら。」
セレネが少し呆れながら言う。
「もう待ちくたびれましたよ。」
ルナも文句を言う。
「後30分様子を見てみましょう。」
コーヒーは二人ともすでに飲み終わっている。
「じゃあもう1杯カフェオレを」
ルナが店員に声をかける。
「果たして本当に来るのかしら。」
心配になるセレネであった。




