交渉
「とりあえずは関西方面に魔術師たちは逃げているのだと思うのだが。青山さんはどう思う。」
大和が青山優清に聞く。優清は少し考えてから答える。
「ええ、赤川と黄柏が現場に現れたということは関西方面の可能性は高いでしょう。私も詳細を知りませんが黄柏家が持つ魔術具がワープできるものだとしたらまずは黄柏家のある京都の宇治市にいる可能性が高いでしょう。」
「君もそう思うか。対策室の二人が大阪の赤川家の屋敷に着いたみたいだがもぬけの殻だったとのことだ。今は宇治に向かってもらっている。君も宇治に明日向かってくれないか。話し合いに応じない様であれば強行策もやむを得ないが・・・。と言っているときに電話が来たな。誰だ。」
大和が携帯の着信画面を見る。相手は黄柏光之であった。
「そう言っていると黄柏家当主様からの電話だ。」
そう言いながら電話に出る大和。
「もしもし、大和だ。ええお久しぶりですね。今回はいかがいたしましたか。」
わざとらしく言う大和。だが通話先の光之は冷静に返す。
「もちろん今回の事件についての話です。捜査協力をするのは黒姫セレネも黒森ルナもやぶさかでないとのことです。だが条件が3つあります。一つは魔術師たちを拘束せずに自由を保証すること。二つ目は民衆に攻撃されない安全の確保。三つ目はSNSで拡散された情報への対応とメディアへの情報統制の徹底です。この条件を飲んでいただけるのであれば捜査協力するとのことです。」
光之の条件を聞きふうー、と息を吐く大和。
「光之さんよ、条件付きではあるが捜査協力してくれるのはありがたいお話ですよ。だが少し待ってほしい。こっちも上への確認が必要だからな。また明日の午前中までには電話をする。それでいいですかな。」
「わかりました。良い返事を期待しています。」
と光之が言うと電話が切れた。またため息を吐きながらスマホの画面を操作する大和。
「さてと、安田総理に電話で確認だな。青山さんすみませんな。もう一度電話させてもらいます。本来はうちの組織は総理直轄ではないんだけどな。警察庁長官もうちには口を出さないし総理の命令で動くことに何も言わないからな。」
と言いながらスマホを頬に当てる大和。
「もしもし、総理ですか。今お時間大丈夫ですか。ええ、ありがとうございます。魔術師の件なのですが。総理も情報対策で忙しいですよね。すみません。魔術師側からコンタクトがありまして。捜査に協力する条件が三つあると言うのですよ。一つは魔術師たちを拘束せずに自由を保証すること。二つ目は民衆に攻撃されない安全の確保。三つ目はSNSで拡散された情報への対応とメディアへの情報統制の徹底とのことです。一つ目が問題ですよね。拘束することにこだわらなければ条件三つとも飲めるのですが。ええ、やはり何が起きるかはわかりませんからね。拘束するのが一番事態を鎮静させるにはいいとは思うのですけど。わかりました明日の朝までに判断すると。他の閣僚や警察庁長官と協議しますか。承知しました。ではまた。」
通話が切れると同時に優清の方を向く大和。
「すまないね、立て続けに電話で。まず1回目の電話なのだが、捜査の協力に対して黄柏光之から三つの条件が示された。一つは魔術師たちを拘束せずに自由を保証すること。二つ目は民衆に攻撃されない安全の確保。三つ目はSNSで拡散された情報への対応とメディアへの情報統制の徹底。この三つをこちらが飲まなければ協力はないと言っている。」
「そうですか。こちらに出向く前に赤川弘陽と電話で話をしたのですが、やはり私が対策室側に着いたことに関して相当不満がある様ですね。まあ彼個人の意見でしかないので魔術師全体がどう思っているかはわかりませんが裏切り者と見られてもおかしくはないです。」
俯きながら話す優清。
「裏切り者か。そう思われても仕方ないのかもしれないな。ただ青山さんは青山さんなりに事態の鎮静化のために動いてくれている。私はそう思っているよ。」
大和がフォローする。それに対し前を向き優清が答える。
「ありがとうございます。」
「とりあえずは明日の朝までは様子見だな。おそらくあちらが動くこともないだろう。総理と長官の判断次第だ。改めて言うが判断次第では明日宇治に行ってもらうことになる。それでもいいかな。」
「大丈夫です。問題ありません。」
「では仮眠室に案内しよう。あまりいいところとは言えないが申し訳ないね。」
と言いながら大和がドアへと歩き出す。
「いえ、お気になさらず。」
優清もそれに着いていく形で移動する。
案内されたのは警察庁の建物内にある仮眠室だ。
「ここが仮眠室だ。夕食はカップラーメンぐらいは用意できる。そんなので申し訳ないが。とりあえずは明日に備えてここで休んでくれ。」
大和が仮眠室の案内をする。こじんまりとしておりシングルベッドが1台あるだけの個室だ。個室なだけましか。隣には給湯室もある。
「わかりました。色々とありがとうございます。」
「また後でカップラーメンと割り箸を持ってくるよ。」
そう言うと大和は仮眠室の扉を閉めた。




