白神家
「海は無事に家に帰れるだろうか。」
警察庁の仮眠室で呟く優清。
案内された仮眠室は白の壁紙で無機質な部屋だ。
今優清が考えているのは妹の海のことだった。高校が学校の都合で休みであり、それでたまたま今日東京に一人で遊びに行ったら今回の事件だ。東京のどこに遊びに行っているかは優清は知らなかったが、事件があったことをXで知り海に電話をしたら渋谷にいると言うのではないか。
海がやったことではないとは思っていたが、疑いを晴らすため、また今後何かがあった場合に安全であるため対策室に保護してもらうのが良いと考えたのだ。
幸い海も優清の意見に同調してくれたため素直に対策室による保護を受けることができた。
「大丈夫だとわかっていてもやはり心配だ。」
仮眠室の中を落ち着かないのかうろつく優清。そんな時にノックの音がドアから聞こえた。
「大和だ、失礼してもいいかな。」
ノックの主は大和であった。
「はい大丈夫です。」
と言いながら優清はドアを開ける。大和が仮眠室の中に入る。
「妹さんの青山海さんのことだが無事に保護し香取市の屋敷に到着したと連絡が入った。とりあえずはこれで問題ないだろう。」
と大和が言うと優清はほっと手を胸に当て胸を撫でおろす。
「よかった。とりあえずは無事に着いたみたいで何よりです。となると次はやはり明日ですね。」
と優清が言うと大和はそうだ、と返す。
「明日の総理の判断次第だ。ただ私が思うに総理は拘束することにこだわってそうだ。明日からが大変になるぞ。よろしく頼む。」
大和がそう言うと優清は決意を込めた顔をした。
「ええ、なんとか彼らと交渉して事実を明らかにします。」
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「やっと着いたな。流石に遠すぎるわ。」
磐城がぼやく。東京から車で4時間。福島県檜枝岐村に着いた磐城と淡路。もうあたりは真っ暗でありおまけに白神家の屋敷の周りには人家もない。檜枝岐村の主となる集落から外れているのである。本当に何もないところに白神家の屋敷は建っていた。
「にしてもこんな山の中に立派な洋館があるとは驚きますね。にしてもこんな夜に山道の運転はしんどいですね。」
淡路が驚きと愚痴が混ざった感じで言う。
「ああ、本当にそうだな。とりあえずは運転ご苦労さん。こんな時間にはなったがとにかく中に入って事情を説明するぞ。まあもしかしたら他の魔術師たちから情報が来ているかもしれないが。そのうえで対策室側に着いてくれるのならいいのだが。」
磐城が頭をかきながらいう。
「先ほど室長から電話がありましたね。現時点では拘束はしないと。明日の朝までには政府としての結論が出るからそれまでは拘束するなと指示が出ていますね。」
「ああそれなんだが、うちの意向に反対してあちらが強硬策に出るというならこちらも相応の対応をしてもいいということらしい。」
「だとすれば拘束する可能性もあるということですね。」
「ああ、その可能性もある。覚悟しておけよ。」
磐城のその言葉に息を呑む淡路。
「とりあえずインターホンはあるみたいだな。押してみるか。」
白神家の敷地は壁で覆われており、唯一の出入り口である門も頑丈に作られている。その門に明らかに後付けで付けられたと思われるインターホンを磐城が押す。
「はい。」
インターホンからは男の声がした。明らかに警戒した口調である。それもそのはずである。こんな夜に山の中を訪れる人はほとんどいないだろう。
「夜分に失礼します。私魔術師対策室の磐城なのですが。」
「魔術師対策室・・・!」
「声を聞くに当主の白神天定さんですか?実はお聞きしたい件があって来たのですが。」
「それは東京で起きた殺人事件のことですか?」
天定と呼ばれた男が磐城に問い返す。
「ご存知でしたか。その件についてなのですが中でお話を聞いてもよろしいですか?」
しばらく沈黙が続いた。
「とりあえずはインターホン越しで話を聞きます。あなた方を中にはあまり入れたくない。」
「そうですか。わかりました。ではこの話をどのように知ったのですか?」
磐城は残念そうな顔をしたが、次の瞬間には切り替えて天定に質問をする。
「そこから聞きますか。黄柏家の黄柏光之から電話で話を聞きました。」
光之は対策室との交渉の前に白神家に今回の事件について伝えていたのである。
「そうですか。ではどこまで知っていますか。」
磐城が再度天定に質問する。
「私も詳細まではわかりません。黒姫セレネさんと黒森ルナさんが事件を起こしたのではないかと疑われていると。そして魔術師対策室が拘束しようとしたところを赤川家と黄柏家が救ったとそこまでは話を聞いています。」
「そうですか。実はですね、他の魔術師も関わっているのではないかということで捜査をしているんですよ。なので協力をしていただければと思うのですが。」
「私たちは一切関与していません。確かにうちの娘はセレネさんとルナさんに背格好が似ています。ただ我が家の敷地からは出ていないはずです。」
「はずですか。詳しいことを娘さんからも聞きたいのですが。」
「帰ってください!家族を犯罪者として扱うのは許せない!」
天定がそう言うと白神家の敷地を囲う壁一面と門が白く光り出す。
「中には入れさせないと言うことですか。仕方ないですね。また明日の朝伺いますよ。淡路、一回退くぞ。」
そう言うと磐城は門から離れ始めた。




