京都潜伏
「にしても大変なことになったな。」
弘陽が出されたお茶を飲みながらセレネにいう。
「ええ、自分がやっていないのにやったことにされるのがこんなに嫌な気持ちになるとはね。」
「本当そうですよ。お嬢様も私もやってないのに。」
ルナが憤慨する。
「いや、あなたがあの場で魔術を不用意に使ったからこうなってるところもあるのよ?」
セレネが呆れながらルナに言う。
「それは言わないお約束でお願いします・・・。」
ルナがタジタジになる。確かにルナが魔術を使ったのが追われる原因になったのは事実だ。
「そういえば青山家はどうなったの?何も話を聞いていないけど。屋敷に閉じこもっているの?」
月彦が弘陽に聞く。弘陽は暗い顔で答える。
「それが関西からこっちへ向かう前に電話したんやけど・・・。」
「したけど?」
「それがあいつ対策室側につくとか抜かしよった。妹がたまたま学校が休みになったから東京に遊びに行っているんやと。それで保護してもらうためだと。保護してもらう方が身のためになると。散々言ったんやけど聞く耳持たんかったわ。あいついわく対策室に協力した方がええとよ。理解できんわ。」
弘陽が怒りながら月彦に話す。
青山家は千葉県香取市に住む青魔術を操る魔術師の家の一つである。現当主は20歳の現役大学生の青山優清でその妹が16歳の高校二年生の青山海である。青魔術は水や氷を操る魔術である。
「とにかくあいつが対策室側についたのは間違いない。これは厄介やぞ。実際俺たちを捕まえる時にあいつが来たら確実に戦闘になる。ただでさえセレネの話では対策室が対魔術師用の武器を持っているんや。それだけでもかなり厄介やというのに。」
弘陽がこの場にいる全員に説明する。
「それならば後は私が交渉しよう。捜査に協力する代わりに魔術師全員の自由を保証するように対策室側に伝えよう。万が一屋敷に突入してきた時も私と亜希の二人が囮になろう。裏口があるからそこから脱出するか、魔術具を使って脱出しても構わない。」
光之がこう話す。
「わかりましたわ。本当にありがとうございます。よろしくお願いします。」
セレネが光之に礼を言う。
「にしてもその魔術具ってどういうものなの?すごい便利なんだけど〜。」
ルナが呑気に聞く。光希以外の周りの人間は呆れる。
「すごいやろ〜さっきも言ったけどワープできる魔術具なんや。先祖が白神家から譲り受けたものでな。本当は学校行くのにも使いたいんやけどお父さんがダメって言うねん〜。ケチやろー?」
光希が笑いながらルナに説明をする。ただその説明を聞いて怒る人物がいた。
「光希。なぜ登下校時に使ってはいけないかは散々説明しただろう。人に見つかった時のリスクが大きすぎる。バレたらどう言うつもりなんだ。確かにお前は通信制高校で京都市のキャンパスに行くことがあるから遠いのはわかる。ただ見つかった時のことも考えなさい。ましてや近場の高校に受からなかったのがそもそもの問題なのでは。」
光之が丁寧ながらもドスを効かせた声で光希に詰め寄る。
「あはは、そうでした・・・。だけど皆の前で受験に落ちた話をせんでもええやんー!!」
光希がタジタジになりながらも反論にならない反論をする。
「受験落ちてたんだ。」
月彦が呟く。
「そうやねん、こいつアホやから公立も私立も志望校落ちてるねん。で、なんとか通信制高校に拾ってもらった形やな。滑り止めの高校にも落ちるって大したもんやで」
弘陽が追い打ちをかける。
「ちょっと弘陽兄さんもそこまで言わんくてもいいやないの!」
光希が怒り出す。
「事実を説明したまでや。」
弘陽が呆れながら言う。
「お前と光希さん、似たもの同士なんだね。」
月彦が納得する。
「そうかな〜?似ているかな〜?」
「どうやろうね〜?」
ルナと光希の二人が顔を見合わせながら不思議そうな顔でいう。
「そう言うところや・・・。もうつっこむ元気もないわ。」
弘陽は再三呆れながらそう言った。




