大脱出
「ふう、なんとか逃げ切れたよ!」
光希が手にステッキのようなものを持ちながら言う。ついさっきまで渋谷にいたのに今は日本建築の中庭のような場所にいる。
「どういうこと?ここはどこ?」
月彦が光希に聞く。
「魔術具の効果。そのステッキ状の道具よね。」
セレネが光希に問いかける。
「正解〜!この魔術具の効果でワープしてきたわけよ。日本全国知っている場所ならワープが可能!1日5回使うと2日後まで使えなくなるのが難点やけどね。」
そう言いながらステッキ状のものをブンブンと振り回す光希。
「そんな魔術具があるんだ・・・。」
月彦が若干引いている。無理もない、あっさりとワープができると言うのは衝撃的であるからだ。
「で、今どこにいるんですかー?」
ルナが撃たれた左手を庇いながら弘陽と光希に聞く。
「まだ言うてなかったね。ここは琥珀の館。我が黄柏家の屋敷だよ!」
光希が明るくこう言う。
あたりはThe日本建築といった感じであり、中には日本庭園も存在する。
「ということは渋谷から京都の宇治まで転移してきたってこと?すごいわねその魔術具。」
セレネが光希に聞く。
「そうそうすごいんだよこの道具!普段は使うなってお父さんに言われているんやけど今回は使用許可が降りたの。我が家の家宝なんやから。」
琥珀の館。京都府宇治市に存在する黄柏家の屋敷である。純日本建築であり建物自体も広く、敷地も広い。そして黄柏家は黄魔術を操る家系である。黄魔術は電気や雷を主に操る魔術でありシンプルで攻撃力が高いのが特徴である。
「でもなんで二人が渋谷まで来てくれたんだ?」
月彦が弘陽と光希の二人に聞く。
「それは後で話すわ。とりあえず建物中入らんと。外で話するのもどうかやろ。ルナの手当てもせなあかんし。」
弘陽が中に入ろうと言う。そういうと5人は琥珀の館の中へと入った。
光希によって通されたのは応接間であった。
そこにあるソファに座る5人。
「あ、大井さんに現在の状況を説明しないと。悪いけど電話するね。」
月彦がそう言い部屋の外に出て電話をかける。その間セレネと光希がルナのケガの手当てをしていた。
「とりあえず内出血みたいになっているから冷却して湿布かしら。それか魔力による前借りになるけど自己治癒力を前借りしてすぐ直すか。」
セレネが傷跡を見ながら話しかける。
「いいですよとりあえす冷却と湿布で。結構今日魔力によって前借りしたんでこれ以上は後でダメージがきます。」
「そうね、そこまで痛みが激しくなければその方がいいかもね。光希、シップはこの家にあるのかしら。」
セレネが光希に聞く。
『普通の腰に貼ったりするようなやつならあるよー」
「じゃあ持ってきてもらってもいいかしら。」
「はいはいさー」
数分後、月彦が戻ってきた。
「とりあえず大井さんは九十九月の館まで戻ってくれるって。心配してたよ、かなり。」
「幸い大井さんの顔は対策室でも把握しきれてないでしょう。大井さんには申し訳ないことをしたわね。」
セレネが申し訳なさそうな顔をする。
ルナは苦戦しながらも持ってきてもらった湿布を左腕に貼っている。
「さて5人集まったところで黄柏家の当主もこの話に参加したいとのことやから呼ぶぞ。お二人どうぞ。」
弘陽が奥から二人を呼んだ。それは黄柏家第十三代当主黄柏光之とその妻である亜希であった。光希の両親である。
「さて今回何があったか話を聞かせてもらってもいいですかな。黒姫家当主黒姫セレネ様。」
光之がセレネに問いかける。
魔術師の家系は五つあるがそれぞれ格がある。黒姫家が一番であり黄柏家は五番目である。
「ええ、最初は5月1日に届いた手紙でしたわ。5月7日に渋谷のカフェで2年前の事件について真実を話したいとのことでした。その手紙を送ったのが先代の魔術師対策室室長栗山慎介からだと思ったんですわ。なので何かしらを知っていると思いそのカフェに向かいましたわ。ただその時は誰も来ずでして。そのまま帰ろうとしたらSNS殺人事件の犯人が私ではないかとされていて逃亡していたんですわ。」
「その逃亡の最中にも魔術は使わざる負えなくなってしまったとのことか。で、そのあとは?」
光之がセレネに聞く。
「逃亡していたのですが途中で警察に見つかりまして、忘却術式で忘れさせようとした時に対策室のメンバーが現れたのですわ。そこから戦闘になったのだけど対策室は他魔術師用の兵器で私たちを追い詰めたわ。」
「対魔術師用の兵器か。それは厄介だね。」
「ルナも怪我したし絶体絶命と思った時に弘陽と光希の二人がやってきてくれた。本当に感謝しているわ。」
セレネが弘陽と光希に感謝する。
「いや、俺も渋谷でこんなことになっているとは思わんかったわ。たまたまXで上がってるの見てこれはあかんと思って黄柏家に連絡をとったんや。そしたら魔術具ですぐ迎えに行けるっていうから俺も来たんよ。まさか転移したのがすぐ三人のそばで、まさか修羅場だというのは全く思わなかったけど。」
弘陽がそう話す。
「これからどうする?とりあえずここにいさせてもらえるならありがたいんだけど。」
月彦が光希にお願いする。
「いいよねお父さん?」
「セレネ様はやっていないというんだ、今はそれを信用しよう。もしかしたら我々以外に魔術を使える者がいたのかもしれないし。」
こうしてしばらく魔術師は京都の黄柏家の屋敷に潜伏することになった。




