追い込まれる二人
「何、捜査から手をひけと言ったと思ったら、今度は捜査網をひいてこの女性二人を追えって言うのか。」
刑事が怒りながら部下に言う。さっきまで捜査するなと圧力をかけられていたと思ったら今度は犯人と思われる女性二人を追い、見つけ次第その情報を上に報告しろとのことだった。明らかに上の意向に振り回されている。
「現場のことをなんだと思っている。まあいい、捜査はこっちで独自にやっていたからな。それを継続するだけだ。他の現場のやつにも伝えろ、この顔写真の女性二人を追えとな。」
と言いながらまた聞き込みを始めようとする刑事。
「あの、Xに情報が上がっていて防犯カメラの映像が載っているんですけど。どこの防犯カメラからの映像かの場所の情報も一緒に載っています。これって正式なところからの映像ではないですよね。」
部下の女性が刑事に伝える。
「なんだと、あげたやつはどうやってその映像を手に入れたんだ?」
刑事が疑問の声を上げる。
「分からないです。Xのアカウント名は捨て垢みたいな適当な名前ですけど。ハッシュタグに渋谷の殺人事件、魔法などと書いてあって今急速に拡散されています。」
「まさかハッキングしたとかじゃないだろうな。まあいい情報が上がってしまっているのだったら利用するしかあるまい。野次馬が集まる前に急いでその防犯カメラの映像の場所に向かうぞ。」
「「はい!」」
刑事はそう言いながら映像の場所へと向かった。
「なぜか誰かに見つかることが多くなっている気がするわ。」
セレネが息を切らしながら言う。
「ほんとそうですよ、その度に魔術を使ったり走って逃げたりしているんですから体力も持ちませんよ。」
ルナも息を切らしながら答える。
「明らかに人々が私たちを追っている気がするわ。まさか顔写真がネット上に出回ったとか。」
そのまさかである。ただ二人はそのことについて知らない。
「とにかく月彦が来るまでは耐えるわよ。にしてもまだかしら。」
月彦から連絡があって2時間。そろそろついてもおかしくない頃である。
「何、Xに防犯カメラの情報が上がっているだと。」
長門が北見からの報告に驚く。
「ええ、その場所の情報まで上がっています。何者かは分かりませんし、情報の精度も高いとは思いませんが。いかがいたしましょう。」
「いや、手当たり次第で探すのには無理がある。その情報を信用しよう。ここからそんなに遠くはない、今からすぐ向かうぞ。」
「「はい!」」
長門が歩き出す。それに加賀と北見がついていく。
「今渋谷に着いたよ。どこの辺にいる?」
月彦から着信があった。
「月彦!今渋谷のどこにいるのかしら?人目についてなかなか逃げれないのよ。今はどこかのビルとビルの間に隠れているのだけど。」
「どこかは分からないんだよね。よかったこういう時のために位置情報サービスをオンにしたんだ。」
「何、位置情報サービスって。」
「スマホのGPSを使って姉さんたちの位置情報がわかるんだ。それ使って姉さんたちを迎えにいくよ。」
「わかったわ、待ってるわよ。」
月彦からの着信に希望を少し持ったセレネとルナ。
約20分後月彦が二人の前に現れた。流石に制服から着替えている。制服の情報で高校などの身バレを防ぐためだ。
「月彦ー!ようやくこれで帰れるわ。」
「ええ、お嬢様帰ってご飯を食べましょう。もう日が落ちてますよ。」
もう日暮れである。2時間以上逃げてきたのである。
「とりあえず帰ってそこから魔術師対策室に連絡を取ろう。姉さんがやったわけではないんでしょ。そのことをちゃんと説明しよう。車は駅の方に止めてあるから今から近くまで迎えに来てもらうよ。」
そう言いながら電話を大井にかける月彦。
「長かったわ。」
そう呟くセレネ。しかし、この後さらに過酷なことになるとはまだ知らなかった。




