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第24話 勇者始動する

「湯加減はどうですか?」


「いや〜〜ちょうどいいっスねえ……こんな孤島でいいお風呂に浸かれるとは思ってなかったっス……」


「それは良かったです。調整出来ますから温度に不満があれば言ってくださいね」


私は朝から風呂を浴びている。

川の横に石を組んで水を引き入れたものなんだけどこれがなかなか心地いい。

なんでもゴーレムを使って作ったお風呂なんだとか。

何人も入れるくらい広くて温度もカタリナさんの魔法で調整できるので気持ちいい。


因みに私をこの島に連れてきた3人も一緒にお風呂に浸かっている。


「ぶっは!よっしゃバタフライだぜ!」


「ちょっとお、泳がないでよココ」


お風呂で泳いでるココさんを嗜めるのはパティさん。

どことは言わないけどパティさんの大きさは私くらいっスねえ……親近感が沸くっス。


「いいじゃねえか!こんだけ広いんだからよ!」


構わず泳ぎ続けるココさんは脱ぐとなかなか大きかった。

その性格的に小さいかと思ったんすけどねえ……


「もう……いつまでも子どもで困ります……」


そして私の横でため息をつくカタリナさんは本当に大きい。この島のチャンピオンだ。

私は自分のを見てため息をつく。

やっぱり先輩も大きい方がいいのかな……?


「どうしました?元気なくなりましたね?大丈夫ですか?」


カタリナさんが碧いきれいな瞳で私の顔を覗き込んでくる。

……胸のことを気にしてるなんて言えない


「いや大丈夫っス……!はやくご飯食べてしゅぎょうしたいっスね」


「そうですか……やる気になってくれたならそれはいいことです。ご飯の用意はすぐできますからね」


いいものを食べて運動したら私も大きくなるのかな……?

この遣る瀬無い憤懣をトレーニングにぶつけようっと。


密かに拳を握りしめる私をカタリナさんは不思議そうに見つめていた。

昨日の晩は取り乱して泣いちゃったけどまあ、泣いてても仕方ないっスよね。

私はカタリナさんの胸を密かに睨みつけながら静かな闘志を燃やす。


――――――――――



「いただきます!」


「今日も朝から豪勢だぜ。エイコが来てからカタリナは張り切ってるなあ!」


食卓にはパンや卵、大きなベーコンやサンドイッチがずらりと並ぶ。

トレーニングが始まると言ってるから私は有難く遠慮なくそれをいただくことにする。


「むぐむぐ……エイコのトレーニングなにからはじめる?」


「そうですねえ……まずはエイコさんがどれくらいできるか確認しましょう。まだ勇者である感覚に慣れていないと思いますから」


よくわからないけどそんなに自分は運動ができる方ではない、本当に期待されても困る、と伝えたがカタリナさんは首を横に振って笑顔で答えてくれた。


「あなたは女神からすごい能力を授かっているはずです。自覚して使いこなせれば覚醒前の魔王や魔軍なんかワンパンですよ」


「魔軍……?」


「ええ、魔王の復活を目論む狂信者たちの中でも特に過激な思想をもった一派が自分たちのことをそう呼んでいるそうです。闇の儀式によって人間を捨て魔族となった者までいます。ここ数年で強力なリーダーを得たようでその統率の取れた動きは非常に厄介です。あなた達がいたのとは別の大陸であるグレイズ大陸の諸国はほぼ全て魔軍の手に落ちました」


その情報に私は驚きを隠せなかった。

聞いてないんすけど……

グレイズ大陸ってのはこの世界の2つある大陸の1つらしい。


「えぇ……もう世界の半分は取られちゃってんですか?」


「はい、そうなります。しかも自らを魔族だと公言せず傀儡となった人間に国の統治を行わせているところが狡猾なところですね」


思っていたよりも頭が良くて厄介な相手らしい。

やる気になっていた気持ちがまた萎縮しそうになる。


「草薙さんと糸井さんはまだ元の世界に帰っていないようです。貴女を待っているのですね。魔軍がセタランナに押し寄せたら彼らも危険です。次の狙いは恐らくトバイケル帝国でしょうから」


「えっ……?まだ待ってくれてるんスか……?」


先に帰ればいいのに……

私はその情報に少し泣きそうになる。



先輩や糸井さん、ヤヨイさんやキャリーちゃん、その他この世界で良くしてくれた人たちのことを思う。

この世界に危機が迫っていて自分がそれを救えるというのならやるしかない。


「さっさとその魔軍とかいうやつを片付けてセンパイたちと帰るっス……」


温かいパンを齧りながら私は決意を新たにした。












深い森の奥でサイモンの本体・・は蔦や長く伸びた木の枝に絡まり眠ったように佇んでいた。

もう十何年間も前からこうしてサイモンはこの森から動いていない。

女神との契約により予知する目とこの世を見渡す目を与えられたサイモンはその魂を擦り減らしながらこの世を見通し予知を見てきた。


しかし、いくら女神に力を与えられたからといって人間1人にできることなどたかがしれている。

もはや動けないサイモンはグレイズ大陸が緩やかに自覚なく侵略されていく様をただ見ているだけしか出来なかった。


いずれ来たる魔軍との決戦に備え勇者を保護し成長させるという在り来たりな策しか用意出来なかった。


自分は何の為に生きながらえたのか。

サイモンは己の命が尽きようとした今、時おり考える。


「……いや、義娘たちを育てられたことだけは意味があったのかもしれないな」


カタリナ、ココ、パティの3人の義娘たちを思いながらサイモンは久々に目を開ける。


何度もその目で未来を見た。

できる範囲で変える努力もした。

しかし魔王が復活した場合「魔王を倒す・・・・・予知ビジョンだけは見えなかった。


「頼むぞ、娘たちよ……魔王を復活させてはならん……絶対にな」


薄い木漏れ日しか通らぬ深奥の森でサイモンは天上を見上げる。

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