8.不完全魔術
魔術には三つのプロセスが存在する。
まず、魔力を発動させたい所に集める。
これにより創り出す魔術の密度や、質量が決まる。
ちなみにこの時点で物質として存在するため
物理攻撃が可能となっている。
次に、速度、熱、光などのエネルギーを設定する。
最後に、魔力を集めた所で魔術を発動する。
これはあまり重要ではないが魔術を発動することは物質を召喚したなどと言われることもある。
その根拠は魔術で出した物質がこの世界の物質と何も変わらなかったためだ。
魔術で出した岩は、ずっと残るし、中に入っている物質も元々あった岩と同じものになる。
ただ召喚では、治癒や、睡眠など説明できない魔術も多くあるため何とも言えない状況である。
話を戻すが、戦いにおいて最も重宝される魔術は、物質をぶつける完全な魔術ではなく、プロセスのうちの二つ目でとめる不完全魔術である。
何故か、その理由は単純で発動が早いからだ。
ということを説明されながらひたすらに障壁を維持する。
何の支えもない空中に自分の体重を支えられるだけの障壁をつくるため、とても魔力を使うし、集中力もいる。
「きっっっつ!もう無理!」
横でソーンが落ちる。
「あと四十五分もあるぞソーンシス」
俺達はここ二日で空中に立つことには成功した。
しかし先生はそれを一時間維持できるようにしろと言ってきたのだ。
「魔力切れになってもいいんですか!?」
ソーンが先生に食らいつくが、
「障壁は完全な魔術とは違い最初に凝縮した魔力以外は魔力効率を上げることで抑えられる」
つまり足場にする魔力自体はどうにもならないが、俺達の体重を支え、空中に維持する魔力というのは慣れると少ない魔力で済むらしい。
なのでものに障壁を纏わせると維持をする魔力が少なくなるためとても安定し、強固になる。
これが木刀で弾丸を落とせた理由だ。
「魔力効率を上げるのは訓練あるのみだ。頑張れ」
「クソッ キースも落ちろッ」
コイツ八つ当たりしてきやがった…
酷いやつだ
「ソーンさん。それは酷いですよ」
「うぐっっ」
「お前がもう少し頑張ればいい話だ」
「がっっ」
ソーンが先生とレレスさんから詰められている状況をもう少し眺めていたかったが、もう限界なためドスンと地面に落ちる。
「はぁぁぁー疲れたー」
「十七分二十三秒か。二日目にしてはそこそこだがまだ合格には程遠いぞ」
辛辣なことを言ってくる。
こっちは朝早くから新聞配達して模擬戦してから障壁の訓練してんのに程遠いとか言われるとやる気無くなりそうだ…
救いはレレスさんの朝ごはんと少しずつ出来ることが増えているという実感だ。
頑張っていこう。
―――――――――
初めの特訓から一週間が経過した。
途中経過としては障壁を三十分ほど維持できるようになり、空中で走ることが可能になった。
ここまで早く上達できたのは、レレスさんの力が大きい。
レレスさんは教え方が上手く障壁を持続させるコツなどを教えてくれた。
先生は息をするように障壁を使えるそうなのでこのような感覚的なことを教えてくれるのはありがたかった。
ちなみにレレスさんは俺たちより強い。
障壁を使った空中戦や、短剣など使える。
模擬戦をやった時には完膚なきまでにボッコボコにされた。
あんなにお淑やかな顔で戦闘もできて回復魔術も使えるらしいのでギャップというやつだ。
―――――――――
二週間が経過した。
障壁の発動時間を短くする訓練取り組むようになった。
そのためソーンとの模擬戦ができるようになった。
今まではソーンに模擬戦で勝てたためしがなかったが、
ソーンの突いてくるところに障壁をだし、後隙を狙って勝利を収めた。
めっちゃ悔しそうにしてていい気味だったが、
「相手の障壁を突破する方法は二つある。まず一つ目は単純に障壁を打ち砕ける火力をぶつけるという方法。二つ目は自分の魔力を相手の障壁に流すことで中和し、無効化するという方法だ」
ということを先生が教えてしまったため次からはほぼ互角の戦いになっていった。
例外もあるがどうやら魔力というのは他人の魔力と混ざると霧散するという性質があるらしい。
そのためソーンの場合は剣に障壁を纏わせることによって相手の障壁に触れた時に自動的に中和し、
そのまま攻撃してくる。
コイツは障壁を纏わせると剣も強化され、相手の障壁も自動で中和できるとかいうチート性能。
こっちは中和されないように沢山魔力を込めて置かなければならなく、その上で反撃を狙わないと勝てない。
普通にずるいと思うが、剣の天恵持ちと同じ土俵で戦えるようになったため良しとした。
―――――――――
これが大体の成果のまとめだ。
俺たちはだいぶ強くなったと思う。
防御が固くなり倒されにくくなったという意味だが…
いつも通り放課後の特訓をしようと校庭で準備をしていた時先生が聞いてきた。
「実は今日連れていきたいところがあるんだが時間は空いているか?」
「?特訓のための時間ならありますけど…」
「ソーンシスは大丈夫か?」
「ええ。ダイジョブです」
「ならついてきてくれ」
そう言われて先生についていく。
学校をでて、大通りに沿い王都の端っこの方に歩いていく。
裏路地を抜けて先生がここだと言って止まった先には、
貧民街の酒場があった。
脱力鍋デス。
こんにちは。
今回は半ば説明回になってしまいごめんなさい。
次の話からの構想はめっさあるので気長にお付き合いください。




