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水平線のソテリア  作者: 脱力鍋
青年編 強化期
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9.貧民街

貧民街の酒場があった。

貧民街とは思えないほどの盛況ぶりだ。


「おい!ネルネスはいるか!?」


先生がガヤガヤとした店内に叫ぶ。

先生が声を発した途端一瞬で静まり還ったと思ったら


「ゼルさん!お久しぶりです!元気してはりましたか?」

「ゼルの兄貴!おい!皆、ゼルの兄貴だ!」

「ゼルにい!」


酒場なのに子どもも含め沢山の人が押し寄せてきた。

ゼルさん?ゼルの兄貴?ゼルにい?

どういうことだ?


「あーーお前達には言っていなかったか…実は私は貧民街育ちなんだ。それで少し支援しているという形だ」

「「えっっ」」

「驚いたか?今では貧民街育ちで良かったと思っているんだが…っとそんなことは後でいい」


沢山の人を押しのけて店の奥に進む。

そこには一人、先生と同じぐらいの年齢の男が朗らかな笑みを浮かべ座っていた。


「ネルネス。いるなら返事をしてくれよ」

「ごめんって。ちょっといつになっても人に好かれているゼルを眺めるのは面白くってね」


ネルネスという人が俺達の方を向く。


「君たちがゼルの教え子かい?」

「はじめまして。ヴァンス・キースです」

「ソーンシス・ランドリです」

「こちらこそはじめまして。ネルネスだ。レレラから話は聞いているよ」


ネルネスさんが立って左手をこちらに出してきた。

慣れない左手の握手に慌てて答える。


ソーンとも握手をしたあと


「甘いね、この子ら。それで僕か」

「そういうことだ」


先生達の会話について行けない中、ネルネスさんの右手には俺(・)達(・)の(・)財布が握られていた。


「「なっっ」」

「ここは貧民街だよ。もう少し用心したほうがいいんじゃない?」


そう言って財布を投げて返してくれた。


「ラッキー。キースの財布だ。金が増えた!」

「おい、返せよ」

「やだ」

「君たち財布取られたばっかなのに緊張感ないね」


やべっ

ソーンがいつも通りの感じだから流されてしまった。


「まぁ警戒され過ぎるよりもいいのかな」

「お前達…まぁ大体わかったかと思うがコイツは搦め手とかを得意とする。対人戦闘を教えるなら私よりもコイツのほうが向いていると思ってな」

「そういうことらしいよ、君たち。今日から宜しくね」


ってことは対人戦闘なら先生よりネルネスさんのほうが強いのか…?


「よろしくお願いします師匠!」


師匠と呼ぶことにした。


「し、師匠?まぁ…何でもいいけど特訓するに当たって条件というかお願いがある」


師匠呼びを公認された。

で、お願いってなんだ?


「君たちバイトはやっているかい?」

「俺はやってますけどソーンはやってません」

「はい、俺はやってないです」

「ならバイト辞めてくれ」


そうして俺は一年半も続けた新聞配達バイトを、やめた。


―――――――――


何故バイトを辞めたのか。

その理由はお店の手伝いや貧民街の治安維持、清掃などを手伝って欲しいと言われたからだ。


報酬は格安ながらもきちんともらえるらしいし、師匠の特訓も受けられる。

なら仕方ないと思い、家に帰ったあと頑張ってバイトを辞めた。

そんなことを考えながらソーンと貧民街へ向かっていると


「キース俺、親に何も言わずに貧民街に通うことになっちまったよぉ」


貴族出身のソーンが愚痴を言う。


「お前なぁ、確かに俺も行くのに抵抗はあるけど先生が大丈夫って言ってんだからやるしかないだろ」

「確かに!もうなってしまったもんはしょうがないよな!」

「そうそう」


昨日いった酒場の前に着くとソーンが勢いよくドアをあける。


「おはよーございまーす!」

「おはようございます」

「おはよう君たち。元気がいいね」


ドアを開けた先にはネルネスさんが何やら店の準備をしているようだった。


「お前…さっきまでのは何だったんだよ…」

「うるさい。割り切ったんだよ」

「そうか…」

「ん?なにかあったのかい?」

「「なんでもないです」」

「なんでもないならいいけどまだ朝早いからできるだけ静かにね?そういうのゼル気にしないと思うけど子ども達も寝てるから」


それは確かに心当たりがある。

先生が朝の特訓で近所迷惑とか考えずに閃光弾をぶっ放してたことを思い出す。


荷物を置きながら仕事の細かい説明と、賃金、朝食にレレスさんのご飯がでることを伝えられ、六時になったタイミングで仕事を始める。


「まずは店の清掃と朝食の用意をしてくれ。その後で皆に配りに行こうか」

「「はい」」


そこからは手伝いに慣れないソーンに色々教えながら仕事をした。


貧民街と聞くため治安の悪さは覚悟していたが、

予想に反して相手から声をかけてくれたり、先生のことなどを話したりもした。


「皆優しくしてくれたな…」

「先生と師匠ってすごいんだな…」


そう感動していると


「貧しいから治安が悪いというのはあながち間違いじゃないけど、ここの人は皆助け合って生きているから皆優しいんだよ。僕たちもその優しさに助けられたからそのお返しをしてたらいつのまにか慕われるようになってしまってね」

「それで師匠はご飯を配ったりしているんですね」

「そうだね、ゼルが資金調達をして僕が現場で動いてるんだよ」


先生そんなことをしていたのか。

心の中で先生の評価がグッと上がった。


「そういえば師匠と先生ってどんな関係なんですか?」

「うーん、強いて言うなら君たちの関係と同じかな」

「俺たちの関係?」

「君たち恋人でしょ?」


その言葉に俺たちの血の気がものすんごいスピードで引く。


「あっっ、えっっとっt、なにg」

「冗談、冗談君たち本当に面白いね」


そう言って師匠が笑う。

こういう言葉で揺さぶられないようにしなくてはと思うが、

心の中で師匠の評価がグッと下がった。

本当だったら突っ込んでいいかわからないため余計タチが悪い。


「ゼルとは親友ってとこかな」

「恋人じゃないんですよね?本当に、」

「ソーンやめとけ、それ以上の詮索は無粋にあたるぞ」


ソーンがまだ動揺してて面白いが、

そういうふざけた発言をする空気ではないことを察してほしい。


「本当に違うよ。ならそうだな、

今日は初日だから特訓はお休みにして少し重いが僕とゼルの生い立ちの話をしようか」


そうして先生と師匠の昔話が始まった。




脱力鍋です。

次話はゼルとネルネスの過去についてです。

進め方としてはゼルの回想とする予定です。

その回想をネスネスがキース達に語っているという構図にしたいと思います。

なので我々はゼル視点の物語ですが、キース達はネルネス視点のものということになります。

分かりずらいと思いますが、そういう感じなんだなと思っていただけたら幸いです。

初めての過去編頑張りますので是非応援よろしくお願いします。

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