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水平線のソテリア  作者: 脱力鍋
青年編 前期
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5/16

4.覚悟

先生が剣を抜いた。

鞘から出てきたのは木刀のようだが


「まずいぞキース。先生がマジで俺達を殺そうとしてきたぞ」

「そういうわけではない。今から私と戦って、実力を見極めるとともにお前達の覚悟を試させてもらうというだけだ」


場所を移そうと言い校庭に連れて行かれる。

ある程度の位置につくと先生が振り返り真剣を二本投げて渡してきた。


「さっき航海団に入ることを力ずくで止めると言ったが、お前達が私に実力を認めさせることができたら考えてやらんこともない。つまり一発私に打ち込むことが合格条件だ」


おいおい流石に冗談だろ。

こっちは真剣で二人がかり、先生と言えど流石に厳しいだろ。


「先生。ほんとに真剣で打ち込んでも大丈夫なんですか?」


ソーンも少し躊躇しているようだが先生は動じず答える。


「大丈夫だ。むしろやれるもんならやってみろというやつだ」


覚悟を決めて剣を構える。

ソーンが前、俺が後ろだ。


「合図はいらない。いつでもかかってきなさい」


と言われた途端ソーンが物凄い速度で距離を詰める。

そこからそのままの勢いで先生の腹を、

突く。

剣で受け止められるが、

突きのラッシュを浴びせる。

しかし難なく全て受け止められ、ガキンッという甲高い音をたて、ソーンの剣が弾かれる。


「やはり天恵の力はすごいな。だがっ」


剣を弾かれたソーンの胴がガラ空きになる。

そこを目掛け、横薙ぎを繰り出そうとするがそれを予測し、生成した閃光弾(フラッシュバン)を炸裂させる。

閃光弾(フラッシュバン)ー光る球体を生成し任意のタイミングで炸裂させることができ、凄まじい光と音を放つ魔術。


「おっと」


先生が閃光弾の音を警戒し、バックステップで距離をとって耳を塞ぐが、それを読んで閃光弾は音が出ないものを生成しておいたため、先生も予想外だったらしくわずかに驚いた。その隙に先生の側面に周りこみ、距離を詰め、横薙ぎを繰り出す。

さらに体勢を立て直したソーンが正面から肉薄し、突く。

チェックメイトだ。


勝ちを確信した時、先生が視界から消えたー


「なっっ!」


先生は飛んだのだ。

前傾の突きと前傾の横薙ぎ。

どちらも速さを重視した打点の低い攻撃だったため避けられる。


「甘いっ!」


そのまま先生は俺の横顔目掛けて蹴ってきた。当然そんな変則的な攻撃を避けられるはずもなく横顔に鈍い衝撃を受けふっとばされた。


「ガッッ!」


地面スレスレで剣を突き立て威力を軽減、体制を立て直し状況を確認する。


ソーンはこのままだとやられると思ったのか、空振った突きの勢いを使って先生と距離を取っていた。


「大丈夫かキース?!」

「あぁ。まだ大丈夫だ」


手加減されていたため、あまりダメージは入ってないが、おかしい。

何故この人はこんなにも肉弾戦が強いのか。

この人は魔術師だ。

それなのに魔術を使わずに剣の天恵持ちのソーンの突きという迎撃の難しい攻撃を難なくいなし、俺のアシストも全てかわしてきた。


「まだやるか?」

「当たり前だ」


ソーンが剣を構える。

先生がこちらを見てくる。


「ならキースはこれがあったほうがいいか?」


と言い先生が腰にかけてあった袋を投げてきた。

中には吸い込まれる様な黒い物体…

ハンドガンが入っていた。


「えっっ!?」

「実弾が入っているが安心しろ。魔力障壁は張ってやるから流れ弾の心配はない」


と言いドーム状の魔力障壁を張る。


実弾だと!?

武術の授業ではハンドガンも教える。

何故かと言うと戦闘が起こった場合、咄嗟に攻撃できるのは銃か魔術のどちらかという話だ。

銃口を向け引き金を引く。

それだけで魔術とは比べ物にならない速度で飛んでいき、致命傷を与えられる。


俺はその射撃成績がよく、剣術より得意だ。

だが授業で使うハンドガンと言っても弾は当たったらめっちゃ痛い程度の演習弾だ。

そのため実弾は撃ったことがない。

いくら先生でも人間だ。

飛んできた弾を避けられる人間なんて知らないし聞いたこともない。


「どうした?早く構えなさい」

「………」

「撃てないのか?」


そりゃそうだ。

撃てるはずもない。

先生に当たって死んでしまったら…

もし流れ弾がソーンにでも当たったら…

心臓がバクバクとうるさいぐらい鳴っている。


「そんな生半可な覚悟なら航海団で生き残ることは出来ない。航海団は長期間の航海に備え色々な物資が沢山ある。それを狙って襲ってくる海賊は銃なんて躊躇わずに撃ってくる。お前はそいつらに銃口をむけ、引き金を引くのを躊躇っている間にお前や、仲間が死んでいく。海賊だけではない。もっと大きな選択を迫られた時、お前は決断できない」


それならと先生が続ける。


「やはりまだ航海団に入るべきではない」


先生の言葉が重くのしかかる。

今俺は先生に向かって銃を撃てるのか。

仮に撃ったとしてそれは勇気や自信などではなく、ただの愚かな度胸なのではないのか。


先の戦闘のせいか、外野が騒がしくなってきた。

人の中には他の教師もおり、何か叫んでいる様子だった。

先生の魔力障壁で誰も入ることはできていないようだが…


俺の覚悟はこんなものだったのか…

もしかしたら人を殺すかもしれないと考えたことはあった。

それでもソテリアに行ってみたいと思ったのは嘘だったのか…


「先生。キースはそんな生半可な覚悟は持ってないぜ」

「私には手が震えているように見えるんだが」

「それはキースが得意の銃を手に入れたことでやっと先生を泣かせることができるって思って、嬉しくて震えているんですよ。なので先に先生の体力を削ってキースがトドメを差しやすいようにしようと思いま、すッッッ」


そう言ってソーンは先生に向かって駆け出した。


何を言っているんだこいつは…

さっきの戦いで二人の連携技でも何も出来なかったのに何故一人で戦おうとするんだ。

どうする、剣を持って加勢するべきか。どうする、どうする。

外野がうるさい。静かにしてくれッ


などといっている間にソーンが吹き飛ばされる。

しかし直ぐに立ち上がり俺には何も言わずに先生に向かって行った。

また吹き飛ばされる。


「ソーンシス。もうやめてくれ。教師としていじめはしたくない」

「さっきも言ったろ?先生の体力を削ってるからいじめられてない」


その時気づいた。

何故ソーンが俺に何も言わないのか。それは

ソーンは俺が銃を持って一緒に戦い、先生に一矢報いることができると信じているのだ。

これが最初に決断しなければならないことで、

するべき覚悟だ。


そう思った時の両手は軽く、

周りの音も気にならないほど感覚が研ぎ澄まされていた。




どうも脱力鍋です。

まずは読んでくださりありがとうございます。

今回は初めての作品で初めての戦闘シーンです。

私が夜な夜な頑張って考えました。少し変なところもあると思いますが、温かい目で見てもらえると幸いです。

また、リアクションなどをつけていただけるとモチベーションが上がり、嬉しくなるので是非お願いいたします。

これからもやる気が続く限り頑張りますのでよろしくお願いします。

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