3.教師
航海団の試験は、最低限の船の扱いと体力や武術の腕、自分のできることを試験官の小隊長、中隊長にアピールすることだ。
船の扱いは学校でもある程度は学び、そこそこ上達しているから問題ない。体力、武術の腕なども正直その辺の大人なら余裕で勝てるぐらいにはなっている。となるとやはり問題は自己アピールだ。
治癒魔術が使える魔力量があるとか天恵を持っているとかそういうのだ。
どうするべきか。
「……… キー… おいキース! お前ちゃんと話を聞け!お前まさかッ この後職員室に来なさい」
大声を出され、意識が現実に戻ってくる。
別に寝ていたわけではないのに職員室に呼び出しを食らった…
そんな悪いことをしてしまったのかと恐る恐る先生の顔を見てみると怒ってはいるがとても心配しているような顔だったためますますよくわからない…
「やーい。キース怒られてやんの」
こいつもさっきまでぽけーっと窓を見ていたくせに煽ってくるとか信じられん。
あとで絶対しばくと心に決める。
「ソーンシスお前も後で職員室まで来い」
「え、、、」
先生のファインプレーによりソーンをしばなかないで済みそうだ。ざあまぁみろ。
この一連の会話で教室中の生徒に笑われたが結果的に一人で職員室に行かなくてよくなったため良しとした。
―――――――――
授業終了の鐘が鳴るとともにソーンが暗い顔でこちらに来る。
「キース。やってくれたなお前…」
「逆恨みだろ。ソーン」
「アホッ」
「バカッ」
悪口を言い合いながらとりあえず職員室に向う。
「憂鬱だなぁ。何で呼び出されたのかさっぱり分からん」
「お前が言うなよ。お前は俺のことを冷やかしたから職員室行きなんだよ。俺のほうが可哀想だわ」
「それはそうとインテリメガネ先生、ついに鬱憤晴らしに生徒を虐めるようになったか…」
「落ちるとこまで落ちたな」
ガラッと勢いよくドアが開く。
「お前ら全部聞こえてるぞ…何故教員室の前でそんな堂々と先生の悪口を言えるんだ?」
はぁっとため息をついてくる。
「まぁいい、今回は許してやる。こんなことを言いたいわけではないからな。とりあえずついてこい」
と教員室に入れられそのまま面談室に連れて行かれる。
「あぁ。終わった…先生がこんなすぐに許してくれるとか俺達殺されるんじゃ…」
「わかるぞソーン。俺も同じことを考えていた。だが殺されるとなったらせめて奴も一緒に…」
「あのなぁ、全部聞こえてるって言ってるだろ。そんなに怒られたいのか?」
「「すみませんでした」」
嘘だろ聞こえてたのかよ。
インテリメガネ地獄耳先生に改名だな。
うん。そうしよう。
インテリメガネ地獄耳先生がソファに座り、俺達にもソファに座るように促してきたため、恐る恐る座る。
向かい合い、先生が一息ついた後、質問される。
「お前達、次の航海団試験を受けるつもりなのか?」
急に何を言い出すのか。突然すぎて理解できない。
どういう意図があるのかわからない。
怖い。
ソーンと目が合う。
奴も何もわかっていなさそうだが、質問の答えは一緒なため頑張って質問に答える。
「え…はい…受けようと思っています…」
先生が下を向き一瞬考える。
「そうか…では何故、航海団に入りたいんだ?」
「ソテリアに行きたいからに決まっているでしょう」
「それは生き残りたいからか?それともソテリアに行くルートを見つけ人類を救うためか?」
今度はソーンが質問に答えたが、次の質問につまずく。
先生がこちらを見てきたため頑張って考えていることを言語化し、答える。
「えっと…正直生き残るとか、人類を救うとかはまだ少しよくわからない、です。勿論、目的にそういうのがないと言えば嘘になりますが、今はただ賢者ルシウスの創った島に行ってみたいとというのが一番大きな目的、です」
ソーンもそう思っていたらしく頷いてくれた。
俺の言葉を聞き、先生が口を開く。
「お前達の言いたいことはよくわかった。私もお前達の意見を尊重するし、理解のある方の人間だ。しかしその上で言わせてもらう。航海団の試験を受けるのをやめなさい」
「「っっっ!!」」
その言葉に反射的にソーンがバッと立ち上がり、反応する。
「なんでだよ!俺達ずっとまだかまだかと待ち続けてやっと15になって、航海団に入るには絶好のチャンスがあるのにそれを見逃せってか!?」
「そうだ」
「だからなんでそんなこと言うんだよ!」
叫ぶソーンを宥めようともせず、
苦しそうに先生が顔をしかめ、答える。
「まだ15だからだよ」
先生が何かの資料を投げて渡してきた。
「今回の航海団の記録をまとめたものだ」
「そんなのもう知ってるって…」
「お前達が知っているのは成果だけだ。これには被害も書いてある」
資料を見てみると成果と被害に分かれており、被害の欄を見てみると、
120人中60人が死亡。
と書いてある所に印があった。
「120人中60人…5割だぞ…怪我人などを含めたらそれ以上だ!人数が多い航海団とは言え多すぎる被害だ」
知らなかった…
確かに行きと比べて帰ってきた人の数は少なかった。だがそれは仕方ないことだと思って深く考えなかった。
5割。今回の航海団は、人数を重きに置いた大船団だ。
人数が多い分食料などの物資も多く必要とするためあまり長く持たないが、数の力を使い、攻略する速攻型。
そのため一人一人の実力はあまり高くない。被害も少数精鋭の時間をかけて攻略する航海団よりも大きくなる。
「次回も国は被害をあまり考えず今回と同じ大船団を組むだろう。正直お前達は少数精鋭の航海団には入れないが、大船団なら入れてしまう実力はある。だがそのあと生き延びれる保証はなにもない」
先生の言いたいことはわかる。
「もう一度言うがまだお前達は15だ。まだ何にでもなれるし、やりたいこともできる歳だ。50年後は65歳。早いとは言え十分幸せになれるし、予言が当たるとも限らない。もしかしたら世界が滅ばないかもしれないし、滅ぶまであと60年あるかもしれない」
だからと先生が続ける。
「一度冷静になり、大人になってもまだ航海団に入りたかったら試験を受ければいい。俺はそれを止めることはしない。その時はもうお前達の先生ではないからな」
先生は俺達のことを思って言ってくれている。しかしそれでも俺達は…
「先生。ごめんなさい。それでも俺達はこの機会を逃したくありません」
先生もこの回答を予想していたのか案外あっさり返事をしてくれた。
「そうか。説得は失敗だな。なら力ずくで止めさせてもらう」
と言い先生が剣を抜いた。




