12.ゼル回想③ 魔獣と魔人と海賊と
魔人。
自分とは違う魔力を魔核という特殊な器官を通すことにより、
霧散させずに操ることができるという人種。
そしてこの人種の歴史こそが迫害の歴史の全てと言っても過言ではない。
理由は普通の人間より身体が強かったり魔力量が多かったりなど数多くあるが、一番大きな要因は本質的に魔獣と何ら変わりがないからである。
どういうことか、
大量の魔力に当てられて突然変異を起こした動物のことを魔獣と呼ぶ。
それは人間も例外ではなく、魔力にあてられ生まれたときから魔核を有している人達を魔人と定義した。
そのため人間か、それ以外かの動物というだけの違いだ。
そうした迫害を止めるため立ち上がったのが第七航海団の船長である魔人のノマド・グラジスタだ。
彼は魔人の迫害を止めようとする魔人とそれに力を貸してくれる人間を集め、航海団を結成。
魔人である船長がソテリアを見つけることができたら魔人迫害がなくなることを信じ航海をしていた。
民間の航海団ながらもその力は凄まじく、最初は国もあまりいい顔をしていなかったが、ついには国に認められ、国の航海団になる。
国からの支援金を使い子供達を育てるための孤児院を設立。
そうして現在ソテリアを目指し航海を続けている。
というのが二週間、特訓と雑用の間に話を聞いて知った大まかな第七航海団の歴史だ。
俺達が第七航海団を知ったのは国の航海団になって魔人差別も少し減ってきた頃だったのでその内容は衝撃的だった。
船長なんて赤子の頃親に捨てられとある医者に育てられたが身体が強いことと、周囲の魔力を取り込み、使えるようになる吸魔核と呼ばれる魔人の中でも珍しい魔核を持っていることをいいことに人体実験をされていたという。
ジオンさんは第七航海団の副船長で人間だ。
船長の志を尊敬し、
ついていくことをきめたそうだ。
ちなみに転移の天恵持ちで、海賊船から一気に瞬間移動したのは転移を使ったかららしい。
そんなことを考えながら俺、ネルネス、リナさんの三人で釣りをする。
釣った魚はリナさんに瞬間冷凍してもらい、
いつでも新鮮に食べられる。
リナさんは水魔術の天恵を持っており、
水魔術の中でも氷に特化しているそう。
「にしても今日は釣れねえな〜」
「確かに今日は釣れませんね」
「そっちはどうだ?ネルネス」
「こっちもだめだ。お互いハゲだなww」
「ハゲやめろハゲ」
リナさんが苦笑する。
幸い第七航海団には坊主の人はいない。
いなかったら言っていいという訳ではないが…
「大変だ、船長!奈落だ!しかも巨大な!」
周囲を警戒していたダグスが声を上げる。
「何!?奈落だと!?総員警戒!大型魔獣がいるかもしれない!」
そう言われ急いで持ち場に着く。
船の前方を見るとそこにはとてつもなく大きな穴があり、そこから海水が絶え間なく流れ出ていた。
「でかい……」
あまりの迫力に言葉が出ない。
雲の間から漏れ出た光が奈落を照らしていて、
神秘的ながらもどこか不気味さを感じさせられる。
「こんな大きな奈落は始めて見ました…」
同じ持ち場のリナさんも驚く。
「今から前進し、奈落の横を通過する。気をつけろ!」
「「「了解!!!」」」
渦に巻き込まれないように船を進める。
いつどこから魔獣が襲ってくるか分からないため空気が張り詰める。
一度あの渦の中に入ってしまえば抜け出すのは難しいだろう。
だが、幸いなことに強風なども吹いていなかったため何事もなく通過する。
船長が息をついた。
ちなみに船の上では船長と呼べと言われ、
今では船長と呼んでいる。
グラジスタと呼んでいるのは副船長のジオンさんだけだ。
「奈落に落ちることはなくなったが、どこに魔獣がいてもおかしくない。警戒は続けるように」
ジオンさんが船長に変わって指示を出す。
皆が周囲を監視しようと動き出したその時、ネルネスに電流、走る。
「っっっ!!!船長!!下だーーー!!!」
「なっっ――」
ドゴォォンという音をたてて船が宙に浮いた。
なんとクジラの魔獣が船の両側面をかじり、下から突っ込んで来たのだ。
ただでさえデカいクジラが魔獣になり、
さらに大きくなったのでそれはもうとてつもなく大きい。
次の瞬間船長は船を飛び降りた。
「船長!?」
あまりの瞬発力と判断力に驚かされる。
そうして船と一緒に上昇している魔獣の横っ腹に船長が一発ぶち込んだ。
「超衝撃!!!」
その攻撃により魔獣が船を離し、吹っ飛ぶ。
「お前ら着水体制!障壁張っとけ!!!」
非戦闘員の人達が船底に障壁を張る。
ザバァァァァン!!
船と魔獣が海に落ち、凄まじい波ができる。
「うわぁぁぁぁ!!死ぬぅぅぅ!!」
我ながら情けない悲鳴だが何故船が木っ端微塵になっていないのか不思議なほどの衝撃だったのだ。
なんとか体制を立て直すと魔獣は着水の衝撃のせいか逃げていく。
ほっとしていると上空にいた船長が降りてきて叫ぶ。
「今からあの魔獣を追う!あの魔獣と巨大奈落を手見上げにするぞ!!」
ちょっと展開が早すぎる。
ついていけない。まじかよ。
すっかり忘れていたが、船長は俺たちのことを港に戻そうとしているのだ。
そのためには成果が必要なことはわかっている。
しかし今回のようなことがいくつもあったら心臓がもたない。
正直死ぬ覚悟とか豪語したが、魔獣とはあまり戦いたくはない…
「全速前進!追え!」
ジオンさんが指示を出し、魔獣を追いかける。
船の上から攻撃魔術を打ち込むも動きが早くうまく当たらず、
当たっても効果が薄く追いかけっこ状態になっていた。
時々魔獣も魔術を放ってくるためそれを捌きつつ攻撃をしていく。
そうして凄まじい速度で追いかけっこを始めて数分後、遠くに何やら塔のようなものが見えてきた。
「塔!?」
「おいおいおい、なんだありゃあ?」
突如現れた人工物に驚く。
魔獣は加速し、どんどん塔に近づいていく。
距離を離されると思ったら瞬間、
突如海の底から一本の大きな剣が魔獣を貫いた。
「「「は?」」」
海面がどんどん膨らみ、姿が現れる。
そこには魔獣とは違う、更に大きな化物がいた。
そいつは腕を六本持ち、鎧のような体表をしていて、
人とは似ても似つかないが、二本の足で立っている。
魔獣というのは身体こそ大きくなっているが、ベースとなる生き物ははっきりとわかる。
しかしこいつはベースとなる動物など存在しないような異形をしていた。
クジラの魔獣が苦しそうに大きな声で鳴く。
だがそんな鳴き声も無慈悲に巨人がもう一本の剣を使い身体を真っ二つに割いだ。
「まじかよ……なんだあのバケモンは……」
想像以上の力に船員の皆が固まる。
「船長ォォ!まずいです!!後方から海賊、数二百ほど迫ってきてます!!!」
そんな中、視線を感じ取ったネルネスが叫び皆の硬直を解く。
そうして災厄が訪れた。
更新が遅れてすみません。どうもこんにちは、脱力鍋です。
次話で今度こそ回想は終わりにする予定です。
それが終わったらどこかで人物紹介も挟みたいと思っています。
あと巨人はエ○ァの十三号機みたいなのを想像していただければいい感じです。
是非ブックマークや評価などハゲみになるので是非お願いします。
次回、過去編最終回 〜第七航海団どうなっちゃうの!?〜 お楽しみに




