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第三中学シリーズ  作者: 和泉葉也


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第2話 橋本部長の秘密のコバコ2


「―――粘着テープに絡み合うゴキプレイを楽しみたい、生徒探しか」


 人間じゃないなとは思ってたんだけど、まさか性癖まで乱れまくってたとは。


「プレイ内容の意図は分からないけど、とにかく今回ばかりは部長の実験を止めなくてはダメだという事か。あんなホイホイハウスで部長と絡み合うなんて、どう考えても犯罪だよ…」


 あのコバコが落ちて来た時、僕に一つの疑問が浮かんだ。

 第三中学の理科室の構造はおかしい。それに、科学部に理科室と準備室の二つが割り当てられているのもおかしい。はっきり言って全部おかしいんだけど、これは科学部自体に大きな謎がある。


「もしかして、僕の知らない部長の過去に、何か裏があるんじゃないか?」


 教師たちが何も言わないのも変に感じてたけど、学校や理科室そのものに秘密があるのならこの学校の校風もうなづける。


「というわけで、今日は部長の横暴に対抗するために頼んだ、新聞部の秘蔵ファイル。これさえあれば部長の弱みを掴んで、実験をやめさせられるぞー。ついでに、転校とか留学とかもしてくれないかなー 」


 英ちゃん経由で入手したファイルをパラパラパラとめくっていく、書き方は適当だが情報はかなり正確に記載されていた。


「ええと、なになに……? 橋本橋蔵、第三中学科学部の部長。老舗和菓子屋つみきやの御曹司で和服美人の許婚もいる。全国模試平均三位の実力者、実家は二千坪 の大豪邸、陸上で国体出場歴あり……えっ? 」


「い、いや、何だこの経歴……でも、情報の正確さに定評のある新聞部が間違ったことを書くはずないしな。あぁ……、なんか、調べれば調べるほど弱点が浮かんでこない気がしてきた」


 ファイルによれば、科学部がおかしくなったのは数年前かららしい。そういえば、部長の前に先輩がいってさっき話してたし、それが誰か調べてみれば、糸口がつかめるかもしれない。

 しかし、学校に長く勤めてると言えば図書室の先生。だったけど、司書の先生は前回の爆破のせいで転任になってしまったはず。


 ―――ちっ、肝心な時に使えない司書の先生め……。


「あ、そうだ。保健室なら? たしか保健の先生なら、公立でもそんな頻繁に学校も移らないよな。何か分かるかもしれないし、相談してみるか」


――――――


「はーい、今ならもれなく空いてるわよ」

 

 緊張しながらノックをすると、やる気のない声がして養護教諭の大咲先生が出迎えた。

 優しい先生だが、からかい癖があり、机の引き出しには少女漫画やゲーム機をこっそり隠し持っている。


「あの、大咲(おおさき)先生。突然すみません……」

「あら? 誰かと思えば、科学部部長の太鼓持ちに定評のある山本君。ついに、橋本君のお守りに疲れて人生相談にでも来たの? 」


「ええまあ、そんな感じなんですけど…… 。部長の弱点……、じゃなかった。昔の話とかを、今後の傾向と対策のために聞いておきたくてですね」

「ええと、橋本君は小学生の時はまともでね。つみきやっていう、老舗和菓子店の御曹司なの。二千坪の豪邸に住んでいて、美人の許嫁さんもいて、元陸上のホープで成績優秀で、小学校の時は神童って呼ばれてたんだって」


 大咲先生は暇だったのか、これでもかというくらい個人情報を語りだす。

 これまた謎な事に、保健室は他の教室に比べてどう見てもリフォーム済で、システムキッチンまで備えている。ジュースにケーキまでご馳走になり、教育委員会がどうよりも、この学校の教師自体がアレなんではないだろうかと僕は思った。


「な、なんかそうだったみたいですね、経歴を見る限りでは・・まあ」

「でも、橋本君が師匠って崇めている人に出会ってから、ああなったみたい。五年位前に、第三中学に居た生徒で、初代科学部部長だそうよ」

「初代科学部部長……。うわ、思い切りイヤな響きですね……」

「たしか、名前は。んん? でん、でん。なんとか君だったと思ったけど、よく覚えていないわ」


 でん。奇妙な苗字もあったものだ。


「その人について詳しくお願いします!!」

「たしか、何人も部下とかを引き連れてたわよ。よく、一年生の男の子が大怪我して運ばれて来たっけ、渡辺君とかいったかな? 理科準備室を改造して、暗証番号入力しないと入れないようにして、クーラーとか勝手に設置したのは良く覚えているわ。一度だけ中に入ったことがあったんだけど、なんか。テレビとか、ゲーム機とか、洗濯機なんかまで置いてあったっけ」


 可哀相な渡辺君である。山本は、自分の先輩に涙した。


「それで、どうして部長と知り合ったんです?」

「小学生の時だったと思う。四年前に、科学部の部長をやっていたその子のとこに橋本君が来たんですって」

 

(……待ってください、色々おかしいです先生)


 五年前に中学生だった人間が、どうして四年前に小学生をやっているのか非常に気になる山本だったが、彼の中の何かが聞いてはいけないと囁くようなので、必死で抑えた。


「その初代部長さんの時代から科学部はおかしくなってたみたいなんだけど、何故か誰も疑問に思わなかったのよね……。初代部長には渡辺君っていう手下が居たんだけど、これが人懐こくって可愛かったわ。

 でも、ちゃっかり彼女が居て、今では結婚しちゃったみたいで、先生悲しいわ……。

 その師匠君が色々と科学部室を改造しちゃったから、今のアレな科学部が出来てしまい、神童だった橋本君が変な人になっちゃったというわけね」


 何故、部下が既婚者の年齢で何故母校にやってきて、しかも後輩を改造したのか。

 い、いや、まあその、 なるべき事には理由があり、原因があるという事。なのか……?


「師匠……。部長をまともな人間にするための、キーワードか……。あのう、それで部長の弱点みたいなものって、他に何かないですか?」


「うーん、橋本君は知らないけど……。師匠さんの部下だった渡辺君は、彼の呪縛から逃れたそうよ」

「大咲先生、その渡辺君の住所とかわかりませんか?」


「うーん渡辺君の住所ね、教えてあげたいけど無理よ。それには、彼の許可が必要だと思うの」


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