第2話 橋本部長の秘密のコバコ1
ここは、都内にある第三中学。
埼玉県と東京都の狭間に彷徨い、草加市か都内なのか微妙な位置にある、かよい町に位置する。
この学校の特徴は、とにかくやる気が無い事。校舎が破壊されようが、生徒が爆破されようが、教師たちはスルーしまくるくらいやる気が無い。
「何で問題にならないんだよっ! 教育委員会仕事しろよ、都立だろっ!」
「仕方ないだろ、この学校やる気ないんだよ。それに、部長さんはあれでも全国模試一位の天才だから、誰も止められないんじゃないのか? ま、退屈しないでいいじゃんか。べっこう飴作れるようになるまで、頑張れよ!」
貴重な僕の突っ込みに、英ちゃんは冷静な回答で返す。
べっこう飴を作れるゆるふわな部活ではなく、これから向かう先は戦車隊との激突をおべんちゃらだけで制止する攻防戦である。
――――――
「…………あぁ、今日も憂鬱な部活の時間か」
この間の選挙の一件以来、クラスメイトの視線がやけに白いように感じられる。
まだ他の学年とか別のクラスはあの物体に脅されたんだな程度に思ってくれているが、クラスメイトは僕と部長の師弟関係を物凄く良く知り尽くしているわけで、当然、彼女の舞ちゃんもそれはそれは把握しているようで……。ついに、舞ちゃんからはスマホも着信拒否に設定された!
『山本くんは、舞と付き合ってくれるよね?
毎日、山本君のお弁当を作ってきてあげたいな』
「ま、まだ手すら握ってないんだぞ、僕の青春を返せ!」
拒否された関係を簡単に取り戻すのは難しい。
だが、僕の信頼を何とかして回復をする事が出来れば、希望という二文字が出てくるかもしれない。
愛する彼女の着信拒否を解除して貰うため、舞ちゃんとちょっとえっちな学生生活を過ごすため!
僕は何としても、橋本部長をコテンパンにぶっ潰さなくてはいけない!
「この間の選挙戦ではよくやったな山本。この前の、PTA会長爆破もなかなかの手際だったな」
放課後の理科室。唯一の部員である僕と、その部長であるグルグルメガネと白衣姿の部長こと、橋本橋蔵の演説は今日も始まる。せめてテーブルに足は乗せないで貰いたいものである
「ぼ、僕は何もしていません何もやっていません!」
「起爆スイッチを押したのは、お前だった気がするが? まあ、いい……。さて、次の実験を開始しようか……。とは言ったものの、目ぼしい実験も何もないな」
「そいつは素晴らしい、ついでにこのまま廃部にしましょう! じゃなかった、科学者に休息は必要ですよね。ついでに科学部も休部にして、部長は語学留学とかいいと思いますよ!」
「そうだ、一つ忘れていた事があったぞ」
(……ちっ、余計なこと思い出しやがって)
「ん、何か言ったか山本」
「い、いえ、最近悩みが多いみたいで独り言が口癖なんです」
「まあいい、それに私にも思春期の悩みというものはある。それこそが忘れていた事なのだが、思春期の悩みと言えば性の悩みだな山本」
・・・・性の悩み?
「うむ。私のような天才でも、立派な中学男子だ。何も疑問に思うような事はあるまい。忌まわしい選挙も終わり、文化祭も過ぎれば一般生徒は受験シーズン真っ只中。そして秋ともなれば、一つ歳を取った天才の肉体に変化が訪れる。知能の強化、体力の増加、身長の上昇。これらの変化は遺伝子の命令によって起こされているものであり、当然私にもこんな変化はある。そう、下界の住民どもがグラビアの写真に興味を覚えエロ本を買いあさるような……!」
「い、いや、普通に部活引退して受験勉強に精を出してくれよ」
「ん? 何か言ったか山本?」
「い、いえ。最近は独り言を呟くのが一般生徒の間で流行してるんで・・」
「ふむ。まあいい、今回用意したのは、私の欲望を満たす高性能な機械だ。見るがいい」
部長の合図でどこからか木造型建築物が文字通り降って来た。キューイーンという機械音が鳴り、巨大なハウスが理科室に姿を現す。天井がどうなっているとか、どうやってこの狭い理科室に入れたのかは絶対に聞かないようにしよう。
「今回大活躍するのが、この秘密のコバコだ!! 第三中学の先輩でもある私の師匠と有名メーカーの協力により開発されたものだ」
……有名メーカーと師匠が何なのかも絶対に突っ込まないようにしよう。
「あの、どこから理科室に巨大な箱を登場させたとかは忘れるとして……。何ですかこの、幼児の情操教育にふさわしいような玩具のおうちは?」
「見て分からんのか?」
「いや、あの、愚かなる愚民たる僕には高等すぎてさっぱり理解できません。はい」
「ドアを開いてみろ、粘着テープがひいてあるだろう? 心地よい香りときつさを同時にミックスした御殿であり、中に入った男女が快適な空間を過ごせるようにできている。ちなみに、特許出願中! 製品化も検討している」
「あのぅ、どう見ても幼児が喜びそうな大きな家を作った努力は認めますけど、いくら部長でも、部室でえっちな事をするのだけはやめてください」
「バカ者、卑猥な想像をしてどうする! 入る相手は別に誰でもよい、この中の粘着テープに絡まるだけの神聖な行為を保健体育と比べるでない!」
粘着テープが中に入って・・・?
そっと中をのぞきこめばジメジメしていて、真っ暗な空間が広がっている。
扉を閉めると完全に密閉するようで、中の粘着テープに絡まった人間は外に出る事もできないだろう。
「あのぅ、まさかとは思いますけど、これってもしかして……」
「一般的な商品名は、闇夜の物体捕獲小屋と呼ばれているらしい」
はあ、闇夜の黒き物体を捕獲するコバコ。
意味が分からない。部長は前から人間ではないと思ってはいたが、そうか。実態は触覚昆虫型の人間という人物で、その師匠とやらに改造手術された人造人間だったのか……って考えるのはやめよう、部長は人間ではなく、特殊機関に改造された、触覚型昆虫人間だったんだ。
「えっと、こいつは素晴らしい装置ですね部長!
じゃ、僕は今からこの装置に絡まる屈強な男たちを探してきます!」
「うむ、素直でよろしい! よし行け山本! 絡み合う相手は男性だろうが女性だろうが何でもいい。共にゴキプレイを楽しもうではないか!」




