夢のマル
今日も、会社から帰ってもマルは居なかった。
やっぱりと思いながらも、もしかしてと少し期待をしてしまっていた分、真悠を悲しみが襲ってくる。
何も食べる気もやる気もせず、そのままベットに倒れこむ。
昨日は、マルを探し回って疲れていたのかスッと眠りに落ちていく。
「真悠、また会いに来たよ」
マルの声と優しい手が、真悠を目覚めさせる。
マル!!
あぁ、また声が出ないのか
真悠は、口をパクパクさせる。
「俺が、真悠に助けてもらった日、覚えてる?」
喋れない真悠は、縦に頭を振る。
その姿を見ながら、マルはしゃべり続ける。
「あの時、もう駄目だ!死ぬって思ったんだけど、真悠がすごい顔して助けに来てくれて本当にうれしかった。
スゲーカッコよかった!その時に、猫だけど……真悠に一目惚れしたんだ。
毎日会いたくて、毎日会いに行った。
雪が降った日に、真悠と家族になれて嬉しかったし、毎日幸せだった。
でも、本当は……その雪の日に、俺は……」
マルは、笑顔で話そうと頑張っているが、涙が溢れてきて止められない。
そんなマルを見ながら、真悠も涙が溢れる。
マルは、あの雪の日に真悠を待っている間に死んでしまったのだというのだ。
神様が、マルを見ていて気まぐれで命を与え人間にしてくれたのだというが、真悠とは恋愛をしてはいけないと神様に言われていて、マルにはそんな事守れるわけがない。
本当は、1年一緒に居られるはずだったが、見かねた神様がマルを連れて行ったという。
酷い!!そんなの酷いよ!!神様に会わせて!
私、マルが居ないと生きていけない
声は出ないが、真悠は思いっきり叫んだ。
「ごめんね、真悠、つらい思いをさせて……
でも、神様が、真悠の記憶を……
愛して……よ、ありが……う」
マルは、精一杯の笑顔で真悠を見つめていたが、どんどん薄れていき何を言っているのか聴こえなくなっていった。
真悠は、夢から覚め溢れていた涙を拭う。
「……?なんで泣いてんだろ?なんか悲しい夢でも見たかな?」
仕事に行く準備をして、玄関を出る。
「いってきます」
……?
1人で暮らしているのに、なぜ行ってきますと言って振り返ったのか、真悠は首をかしげる。
真悠は、マルのことを記憶の中から消されていたのだ。
しかし、仕事をしても、家に居ても、何をしても、何かを忘れている気がして仕方がなかった。
不思議と、オムライスやひまわりを見ると自然に涙が溢れて来そうになったり、ふわふわの頭をした男の人を見れば、追いかけそうになったり。
真悠は、頭では覚えてなくても気持ちは何かを必死に覚えていようとしているようだった。




