多くの商品はお客様の為にあります 第十一話
夜の帳がおり、東の空が明るくなり始める。
闇と光が混在するとても幻想的な時間帯である。
『今日は晴れそうだな』
東の空を見ながら、そう感じた。
ご来光を眺める、なんて面倒くさい事だなんて思っていたけど、
わざわざ登山してまで実行する人たちの気持ちがわかる。
『うっー、それにしても寒い』
俺はごみを捨てる為に、外に出ていたのだ。
吐く息が真っ白。
身をかがめながら店内に戻る。
「あぁ~、暖かい。暖房に感謝だな」
俺が独り言を呟いていると、店長が声を掛けてきた。
「暖房じゃなくて、コンビニを考えた人に感謝だな……」
店長、確かにそうですが、今の話の流れでは少し大げさです。
その言葉を俺は飲み込み、レジに向かった。
特にお客さんがいるわけではないが、そこが定位置だからである。
しばらくすると、シュップさんがやってきた。
「おはようございます」
もはや、『いらっしゃいませ』ではない。
シュップさんご希望で、いらっしゃいませは言わない事になっている。
さて、シュップさんに目を戻すと、お弁当を見ていた。
「珍しいなぁ~」
まぁ、確かに、毎日、コンビニのおにぎりとサンドイッチじゃ飽きるよな。
今日シュップさんが選んだのは、お弁当とお茶、それにシュップだ。
「721円になります」
おっ、今日は1円玉1枚あれば大丈夫だ。
さすがに、1円玉1枚はあるだろう。
シュップさんの顔も少しほころんだように思える。
俺とシュップさんの目が合う。
『大丈夫ですよね、シュップさん』
アイコンタクトする。
それに気づいたのかシュップさんが微笑む。
『今日の俺は違うぜ』
そんな風に言っているようにも思えた。
シュップさんは小銭入れを確認する。
『9円お釣りを出すのは面倒だ』
俺は心の中で願うのであった。
『早く、1円玉、1枚出て来い!!』
しかし、俺の期待はまたしても裏切られるのだった。
「これで頼む」
出てきたのは1000円札一枚のみ・・・・・・
シュップさんの声は心なしか元気がなかった。
「289円のお釣りです」
朝方なので、目がショボショボだ。
何度もお釣りを確認してから、お釣りを渡す。
「ありがとうございました~」
心なしか、シュップさんの背中が寂しい。
今度こそ、1円玉を出してください、面倒くさいんで・・・・・・




