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少年夢物語  作者: Rei
6/7

二人の暮らし

僕がここに来て二週間たった。大分新しい生活にも慣れ始めて、今はサリアと晩御飯を食べている。ちなみにメニューはシチューで、サリアが作ったものだった。

互いにそこまで喋る事はないのでただ黙々と食べていく。

「うまいか?」

「勿論。凄くおいしい。」

パンを千切って口に入れ咀嚼する。

「前の世界じゃ、満足にご飯も食べられなかったから、ご飯がありがたいよ。」

思わず前の世界を思い出し、悲しくなる。そんな僕を見て、彼は小さく身じろいでスプーンを置いた。

「なあ、ヤコウ、前からきこうと思ってたんだが、その、前の世界で何があったんだ…?」

恐る恐るといった様子をみるに、気を使わせていたようだ。

「前の世界で、ですか…」

僕もスプーンを置き、水を口に含んでから話しを始める。

「5歳位までは、普通に暮らしてました。強気で勝ち気の母に、ちょっと天然で、でも頼りになる父の3人家族でした。でも、それも、ある日…」

口ごもる。思い出すだけで辛くて吐き気がする。

「おい、ヤコウ?」

「…気持ち悪い…」

「大丈夫か?」

サリアが僕に近寄って肩を支えてくれる。そして、そのままベッドルームへと移動した。

ベッドの端へと腰掛けさせられる。

「無理に話さなくても良いから、今は休め。」

「大丈夫、平気だから……ある日、僕の家が、放火にあって、その時、両親は僕を庇ってその…」

「言うな…分かる。」

彼はそっと僕を自分の胸へと抱き寄せた。心地よくて思わず頬を寄せる。サリアは、それを拒む事なく受け入れてくれた。

「その後は、酷くて。学校いってもいじめ、施設でもいじめ。卒業して仕事につこうとしても、大学っていう学校を出れてないから無理って言われて。仕事もなかったから、食べ物食べられなかったり、挙げ句の果てに、身体売ったりとか、して…」

「苦しかっただろう……それで、自殺を?」

ゆっくり首を振る。

「学校に行ってた時、何人か友達が出来て、彼らにはずっと良くしてもらってたんです。けど、仕事を貰う面接の時、面接官に、僕がいると、僕の友達の将来を潰す事になるって言われて、それで…もう、生きてるのが嫌になって…だから、死んだ…」

話し終えて彼を下から盗み見みると顔歪ませていた。不快にさせただろうか?

「こんな話して…ごめんなさい」

「何で謝る?話して欲しいと頼んだのは俺だろ。」

サリアが僕の頭をなでる。その優しさに、思わず涙が、でてきた。

「僕…生きてるの…ウウッ…辛い…怖い…!」

「泣け。我慢してきたなら、その分も、思いっ切り泣け。」

そう言われると、今まで気づかなかった悲しみや、苦しみも、おそってくる。けれど、それと同時に絶対的な安心感を覚えて、言われた通り、泣く。

全て吐き出したくて、消したくて、何もかも忘れたくて。

僕が、涙を流す度、彼は強く抱きしめてくれる。

それがまた、嬉しくて嬉しくてサリアに縋るようにしてしばらく泣き続けた。


「落ち着いたか?」

「はい…」

濡れたタオルを目に当てられる。冷たさが伝わって、泣きはらした目を楽にしていく。

「よく、話してくれたな。」

僕の目の上に置いたタオルに手を当てられていたので、彼の表情は見えないが、声からは、不快感を感じてはいなさそうだった。

疲れて、もう寝てしまいたい。だが、今は彼と離れる事がとても怖い。

「さ、サリア」

「どうした?」

そっと離されたタオルがどくと、心配の色を写した彼の瞳が見えた。

「出来ればで、良いんだけど、」

「ああ。」

「い、一緒にねてもらっても、いいかな??」

とりあえず大の男が言うセリフではないと思う。うん。

「嫌なら全然いいよ!うん!えっと…」

急に頭をくしゃくしゃなでられた。

「そんな事で遠慮するな。俺は構わない。むしろいいのか?狭くなるぞ。」

彼の疑問など聞こえず、嬉しくて、ぎゅうっと抱きつく。

遠慮することなく、心から甘えるなんて何時ぶりだろうか?

抱きついた僕を彼は抱きしめてゆっくりと身体を倒す。その際、僕の手が下敷きにならないようにどかしてくれた。

「ありがとう…サリア…」

「分かったから、もう寝ろ。」

背中を軽く叩いてくれるその手にあわせて僕は引き込まれるようにゆっくり眠りについた。


翌日。

サリアが今日は役人が来ると言っていた。そのため、僕は見つからないよう隠れていろと、彼の部屋のクローゼットに押し込まれていた。

「いいか、終わったら出してやるからな。それまで待っててくれ。」

僕がコクコク頷くと彼は少し悲しそうに笑って

「悪いな。こんな狭いところに、1日もいてもらうなんて…」

ぽつ、と謝ってくる。その言葉に今度は大きく首を横にふった。

「サリアは悪くないよ、俺は、大丈夫だよ??」

彼が少しでも楽になるよう、笑顔で言ったつもりだったが、彼は、頬を多少緩めてたものの、それ以上に眉間に尚深い皺が刻み込まれた。 

「俺はいくからな。じゃあ、また後で。」

「うん」

パタン、とドアを閉じられてしまえば、そこは真っ暗な空間で、自分の手すら見えない。これでは何も出来ないので、時間を潰す方法を散々考えに考え抜いた僕は、寝るのが一番!ということで、早速身体を丸めて横になった。

…どの位たったのだろうか?押し入れのドアの向こうから聞こえる物音と声で目が覚めた。

「…いな…てんな…」

「…って……やるか…」

サリア以外の二人の声がするが、小声でなにを言っているのかが聞き取れない。

だが、この状況はマズい。サリアはこの部屋には人を通さないから、と言っていたが、サリアは何をしているのだろうか?

僕は、動くことも出来ず、丸まった状態のままじっと耳を潜めて時を過ごす。すると、暫くして耳が慣れたのか、会話が聞き取れるようになった。

「どうもこいつは暴れるらしいからな。」

「もっと強い縄で縛った方が良くねぇか?これから痛い目みるんだし。」

「ははっ、違ぇねぇ。」

野太い笑い声が部屋を満たす。にしても、何の話をしているのだろうか?

と、その時、呻き声が聞こえた。その声は、とても聞き覚えのある声だった。

「おぉ?起きたらしいぜ?」

「ヒヒッ!良いタイミングだなあ~仕方ねぇ。口枷今とってやるよ」

「…っは!何の真似だ!!ふざけるな!離せ!!」

一度大きく息を吸う音の後、大声の罵声を浴びせる声は、間違いなく、サリアのものだ。

彼に何があったのだろうか……

焦る気持ちを抑えながらそっとドアの下から外を覗く。僕は、その光景に息をのんだ。

「くそ、くそ、ふざけるな!!よりにもよってなんでここで……離せ!!」

サリアが上半身の服を脱がされた状態で椅子に縛り付けられていた。

と、次の瞬間、教会ぐらしのおかげがシミ一つない白く、引き締まった身体に拳が落とされた。

「か…はっ!」

「!?!?」

彼はそのまま椅子ごと後ろに倒れる。そしてそこをまた、更に拳や蹴りが襲った。

一発、二発、三発……

彼の身体に次々と新しい赤い痕が刻まれていく。だが、バレるのを恐れたのか、顔だけは無事のようだった。

「んっと、無抵抗っていいよな!」

汚く罵詈雑言を浴びせながら、エスカレートしていく暴力に、いよいよ我慢の限界だった。

『何か、何か武器になりそうなもの…』

回りをキョロキョロ見渡した所で、都合良く刃物など見つからない。あるとしても、役人の腰にささっている剣くらいだった。

『一か八か……』

バッとクローゼットから飛び出て、一人の剣を奪う。

「んだこのガキ!!」

「おい、それ返せ!」

もう一人の役人が己の剣を抜き、僕に向かって大きく振りかざした。

僕は当然剣の使い方なんてわからない。

もうだめだ。

そう諦めた時、役人の剣が何かによって弾かれた。

「!?」

「おい、何しやがった!?」

役人も何が何だか分からないという顔で僕に迫ってくるが、僕にも訳が分からない。

「おいヤコウ!俺の縄を切れ!!」

サリアの声ではっとした僕は、彼にかけより、縄を剣で切る。すると彼はその剣を僕から奪い、右手で構えると僕を後ろに庇うようにして立ち上がった。

「来るなら来てみろ。こいつが隠れていたから手加減していたが、次は本気でやってやる」

サリアから漏れてくる本物の殺意に僕までも身を震わせた。だが、剣を持たない左手が僕を自分の後ろに隠すように僕の右肩に置かれ、そこから伝わる温かみが、彼の優しさも伝えてくるようで、とても安心できた。

「上等だ!やってやる!」

僕に剣を振り上げた奴がサリアに迫る。だがそれは、一瞬で後方に吹き飛ぶこととなった。

「お前らみたいなのが、俺に勝つのは無理だ。わかったらさっさと出ていけ!!」

吼えるサリアに恐れを抱いたのか、覚えておけ!という悪者の常套句を残し、彼らはでていった。

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