旅立ち
役人達が去っていた後、しばらくサリアは慌ただしく動いていたが、一時間位後、僕を椅子に座らせると思いつめたように話した。
「…ここの家に人をいれて、尚且つ役人に刃向いた。これで、俺は間違いなく処刑される」
「…」
何となく予想していた言葉ではあったが、それは、とても重く、心にのしかかった。
「恐らく、お前も殺される。お前は前、死にたいと言っていたが、俺はお前に生きて欲しいと思っている。」
サリアは、そっと僕の頭を撫でた。
「此処から北の道に真っ直ぐ歩いていくと、2、3時間位で一軒のパン屋につく。そこで…」
「嫌だよ!!」
聞きたくない。聞いていたくなかった。
「処刑されるサリアをここに置いていけっていうの!?そんなの無理だよ!」
「俺が処刑されれば少なくともお前に手は及ばない!そうするしかないだろう!」
「もう自分のせいで誰かが死んだり苦しむのは嫌なんだよ!!」
思わず椅子から立ち上がり悲鳴じみた声で叫んだ。
「ヤコウ…」
「サリア…一緒に逃げよう?遠くに。そしたら、きっと、生きていけるから…」
サリアはそっと目を伏せた。
「…お前の気持ちが分からくはない。むしろ、そろまで言って貰えて嬉しい。けど、お前まで危険にさらすのは…」
伝わらない。どんなに危険にさらされても、辛い思いをしても、彼が僕に生きて欲しいように、僕も彼に生きて欲しい思いが。
「…もう良い。」
僕は部屋を飛び出し、サリアの部屋に向かう。そこにあった麻の鞄にナイフや、最低限の食べ物、金貨などを詰め、彼の服の中から動きやすい服とマントを持って部屋に戻った。
「ヤコウ?何する気だ?」
疑問を飛ばす彼を持ってきた服に着替えさせ、マントを羽織らせる。そして彼の手を引っ張って教会の外にでていこうとしたら、流石に気づかれたのか、サリアに止められた。
「此処から俺とにげたら、お前まで辛い目に…」
「しつこい!分かってる!!」
珍しく怒った僕にポカンとしてる彼をどんどん引っ張って出口を目指す。だが。
「おい!どこに行く!?」
見張りに見つかってしまった。
…そういえば、監禁されてたとか言ってたな。忘れてた…
当然剣を持ち向かってくる相手に、咄嗟に鞄に入れたナイフを取り出したが、まぁ、意味ないよね…
だが、サリアに逃げて欲しい。その一心で僕もナイフを構えて相手に対峙する。落ち着けば、きっと、大丈夫。そう自分に言い聞かせていると、その剣が僕のナイフの攻撃範囲に入る前に、後ろからでてきた長い脚が相手の頭に直撃していた。
「ヤコウ!危ないだろ!」
そう言う彼の言葉を無視して急いで出口から出る。きっと騒ぎは他の見張りにも聞こえてしまったはずだ。となれば、急いでここから離れなければ。
そしてそのまま教会の前の道をただ真っ直ぐ走っていく。そろそろ大丈夫かな、という所で足をとめ、サリアと共に建物の影に隠れた。
「…何か訳が分からない内にとんでもないことになっている気がするんだが。」
サリアは苦虫を噛み潰したような顔をして溜め息をついた。
「一緒に逃げよう。」
改めてそういえば、彼は呆れたように言う。
「お前がそんな強引なやつだったとはな…はぁ…ここまで来たらそうするしかないだろうなあ…」
遠い目をした彼に嬉しくて思わず抱き付いた。
「ありがとう!僕、どんな事も耐える!」
「無理はするなよ…?」
苦笑のような微妙な表情をすると彼は自分の目に手を当てて呪文を唱えた。目を離した時、彼の目にはリングが浮かんでいた。その状態のまま、彼は何かを言うとまた手を当てて目を元に戻してしまった。
「…何したの?」
「あぁ、天使にな、もう備え物出来ないから適当になんとかしろと言っただけだ。」
「…なんか、軽いノリだね?」
「天使だからな。」
なぜか話がかみ合ってないような不思議な感覚を覚えながら首を傾げていると、彼は、さて、と声をあげた。
「今日の内に街を出るぞ。日暮れも近い。急ぐぞ。」
そう言って僕から荷物を取り上げ、肩にかけるとサリアはさっさと歩きだした。
こうして、僕達の旅が始まる。




