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少年夢物語  作者: Rei
4/7

白い空間で

コポコポと、お茶を入れる音がする。それに促されるようにそっと目を開くと、白が目に入った。

(ここどこだっけ…)

僕は確か、面接落ちて、ライから逃げて、海について、それで…

跳ね起きる。僕は死んだはずだ。あの高さで生きているはずがない。

あたりを見回すと、どこまでも白い空間が上下左右に広がっていた。

「ぁ、起きた??」

後ろから声がしてバッと振り返ると、声のもとを確認する前に頭がぐらついた。

「おっと、まだ勢いよく動いたら駄目だよ。」

先程と同じ声の持ち主が僕を抱き留める。ゆっくりと顔をあげると、そこには、20代前半位の茶髪を持った青年がいた。

「すみません…あなたは…?」

「ああオレの事、分からないか…」

彼は、少し悲しそうに顔を歪めた。

「どこかで、会いましたか?」

「んーん。会ってないよ。」

ゆるりと首を振られてしまえば、それ以上問い詰める事はできなかった。

「オレはイルアって言うんだ。ついでに言えば、天使。」

そう言って彼は、大きな羽を片方だけひろげてみせた。

「天、使?」

彼にどう接するべきか分からず、とりあえず床に膝をついて、頭を垂れた。

「すみません、天使と知らず、無礼な真似を…」

「いやいや、そんなにかしこまらないで!?」

アワアワと彼は、僕の身体を起こす。

「天使の事言ったのは間違いだったかな……取りあえず、そんな事しなくていいから!」

「ですが…、」

「俺も居心地悪いしさ、ね?」

「そういうことなら…わかりました」

「よし、じゃあここに座って。」

指さされた椅子に座ると、彼も目の前に座って僕に紅茶の入ったカップを差し出した。

「さてと、君がここに来た理由なんだけどね。」

彼の顔が真剣なものに変わる。こうみると、とても綺麗な顔だ。

「君は、どうやって死んだ?」

「…海に、飛び込んで自殺しました。」

「そう。自殺したね。」

彼は、そう言って口に紅茶を含んだ。白い喉がそれを嚥下する。

「自殺した人は、普通、何らかの罰が与えられる。けど、ある一定の条件を満たした人は、チャンスが与えられることになってるんだ。」

「条件?」

「例えば、生前、行いが良かったとか、誰かをまもったとか、親と満足できる程の生活を送れなかったとか。」

最後の条件に身体が揺れる。

「チャンスっていうのは、違う世界でしばらく生きること。ちなみに、しばらくっていうのは、人によって一年だったり、一生だったりする。」

イルアは息を吐いて頬杖をついた。

「そのチャンスをちゃんと生かせて、神に許されたものは、もう一度元の世界で生きられる。まあ、数年位時間が進んでるかもしれないけどね。」

そっと手を差し出された。

「このチャンスを受けるか受けないかは、君次第だよ。」

この手を取ればチャンスを受ける事になるらしい。

答えは、決まっている。

「ごめんなさい、無理です」

そう言うと彼は至極驚いたようだった。

「どうして?訳をきかせて?」

「僕はもう、生きていたらだめなんです。迷惑になるばかりで……守って貰った両親には凄く申し訳ないです。それでも…」

「チャンスを生かせたら、一つ願いが叶う。これでも?」

「願いは一つじゃ、足りませんから。」

椅子から立って頭を下げる。

「お気持ちだけうけとります。僕は地獄でもどこでも行きます。ありがとうございました。」

彼もすっと椅子から立ち上がった。

そして、腕を僕に伸ばすとそのまま抱きしめる。

「な、何するんですか!?」

「駄目だ…君は、そっちに行かないで…」

切実そうな声に胸が締め付けられる。

「お願い、生きて…」

その声と共に視界が光に覆われた。眩しくて目をつむると、何故か、意識も遠のきはじめる。

ぼーっとする思考の中名前を呼ばれた気がした。

「夜虹…」

何故だか、その声は酷く懐かしく感じるものだった。

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