世界の抵抗
「あーあ、気絶しちまったよ。」
俺は泡を吹いて倒れたフレイを見下ろし、後ろを振り返る。
廊下は未だにぐつぐつと煮たっている。
剣を戻し、べちゃべちゃと音をたてて戻る。
アイレスの元に辿り着くと、彼女は女の子座りをしながら涙目で俺を睨んでいた。
やはりこいつには涙目が似合うな。
俺はそう思いながらアイレスの鎧の首もとをつまみ、猫でも運ぶようにして王座の間へと向かった。
王座の間に続く扉を開ける。
がやがやとやかましい。
王座の間には大量の城兵達が詰めかけていた。
俺はめんどくさいなぁ、と思いながらアイレスをドサッと置く。
いたっ、という声が聞こえるが気にしない。
だが、城兵達はその声で俺たちに気づいたようで、バッと俺の進行方向から移動して道ができる、忠誠心の無いことで。
城兵が避けたところには真っ赤なふかふかの絨毯が敷かれていた。
俺は手前のから奥に向けてゆっくりと目線をあげていく。
赤い絨毯は、王座の間の最も高く、最も奥にある巨大な椅子へと続いていた。
椅子には大柄な、だが均整のとれた体つきの、神々しいオーラと銀色の甲冑を纏った男が座っていた。
王座の間で唯一座ることを許された存在。
俺は敬称も、役職すらも付けずに呼び捨てる。
「オーディン」
丁度その時、城兵達を掻き分けて王座と俺の間に誰かが飛び出してくる。
槍を持った緑色の服を着た可愛い女の子だ。
「無礼者! 主神であるオーディン様を呼び捨てるとは・・・それに、兄様はどうしたのですか!」
怒鳴る度に思わず動く体も小動物じみていて可愛らしい、金髪ロングの輝く髪が上下に揺れる。
胸は揺れない、小さいんじゃない、普通サイズでも揺れないんだ。
だがこれほど可愛い女の子なのに、彼女が誰だったのか思い出せない。
昔どこかで見たことはあるような・・・
俺が考え込んでいると、痺れを切らした彼女が続ける。
「何故黙るの? 兄様・・・フレイ兄様をどうしたか聞いているのです!」
フレイの妹・・・? 思い出した、豊穣の女神であるフレイヤだ。
フレイヤと言えば一般に、愛と豊穣を司り女性の良い面と悪い面を併せ持つ女神として知られている。
かなり有名な女神なので、FQ17にも当然出てくる予定で公式HPにも画像が紹介されていた。
だがFQ17の発売日に彼女のクエストが間に合わず、最近発売された拡張ディスクからの追加になった。
俺はGMの仕事が忙しかったので拡張ディスクをあまり遊べておらず、彼女とは会ったことがなかったのだ。
俺は彼女のことを思いだし、スッキリとした顔で彼女に答えた。
「ああ、フレイならそこで気絶してるよ」
フレイヤはサッと顔を青ざめ
「まさか兄様を・・・犯したのですか!?」
場の空気が死んだ。
俺の口がポカンと開く、なにいってだこいつ。
ちらりとアイレスを見る、目線に気づくとアイレスは黙って首を振った、平常運転らしい。
フレイヤの言葉は止まらない。
「先程のなにかスッキリしたような表情、そして私の質問に目を逸らすということは、事実なのですね? お兄様を気絶するまで犯すなんて何と羨まs・・・いえ、けしからない。 私も見たk・・・いえ、許しません!」
(腐女子的な意味で)腐ってやがる、(FQ17本編の発売が)早過ぎたんだ。
俺がため息をつくと、フレイヤは持っていた槍を構え俺に襲いかかろうとする。
だが足を踏み出そうとした瞬間、城兵達が一斉に彼女の体にしがみついて止める。
「フレイヤ様、危険です、留まりください!」
「離しなさい、私は兄様の貞操の仇を取るのです!」
フレイヤが城兵の制止に抗い俺の方へ向かってくる。
まいったなぁ。
後頭部を掻こうと手を伸ばす。
「その者達を斬るのは待ち給え!」
広間の奥から部屋中に響き渡る声がする。
上から目線の声に若干イラっとする。
王座の間で最も奥、最も高所に位置するその声の主は当然
「待ってください、だろ? オーディン」
俺はやさぐれた表情で、言い直させる。
「ぐ・・・ま、待ってください」
「分かった、待ってやろう、何秒待てば良い?」
俺は頭を掻いていた手で剣を半分抜き、そう尋ねる。
天界に来てドS度が上がっている気がする。
「秒!? いや、まずは話を聞け、いや聞いてくれ」
気づくとフレイヤは絨毯の上から居なくなっていた、城兵達がフレイヤを脇に逃がすのに成功したのだろう。
俺は剣から手を放し、道の出来た広間を奥に向かって歩き出す。
「はいはい、分かってるよ、こいつらにはまだリサシテーションかかってないから殺すなってんだろ?」
今さら出てきたこの設定、リサシテーションは死んだら所属する王の城で復活するのだ。
「・・・分かっているのにやったのか、趣味が悪いな。」
オーディンは眉間にシワをよせ、苦言を吐く。
俺はオーディンの座る王座の前に立つ。
カシャン
剣を抜き、オーディンの喉元へ突きつける。
「神様って奴の方がよっぽど趣味が悪いだろーぜ、王手だ」
オーディンは俺の皮肉に複雑な表情をしたが、気を取り直す。
「ここでの私は無敵だ、いかにして君は私に勝つのだ?」
「・・・どういう意味だ。」
確かにオーディンは天界最高の地位にあり、その戦闘力もFQ17の世界で5本の指に入るほどである。
だが、不死属性はついていない、衛兵以外に不死属性を持つNPCキャラはいないのだ。
オーディンがホッと胸を撫で下ろす。
俺はそれを見てニヤリと笑い
「まあ、試してみればわかる」
ヒュンッ
剣が横に振られる、オーディンの首が舞う。
広間中に光が溢れる。
後ろを振り返る。
絨毯の上にオーディンが立っている。
先程の光、場所の移動。
リサシテーションだ、だがそれだけでは無敵とは言えない。
まさか
「オート、リサシテーションか」
オーディンは俺のいる王座の方に向かいながら応える。
「その通りだ、下界の者よ。 世界は神界の王である私に祝福を与えているのだ。」
彼は俺を横切り、王座に座り直す。
自動的にリサシテーションがかかると言うことは、常にリレイズ状態である。
王座の間では、何度殺してもその場でオーディンは復活し、いつまでたっても戦いが終わらない、もぐら叩きのようなものだ。
世界の祝福だと?
世界、世界、また世界か。
オーディンは足を組み肘をつきながら俺を嘲ける。
「だから如何に君の戦闘能力が高かろうと私を滅することはできないのだ」
俺は口の中で苦虫が潰れるのを感じた。
次回、もぐら叩き。
お楽しみに!(嘘




