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デートをする

「日用品買わなきゃ俺のストレスがマッハ」

 

 無事シャバに戻ってきた(1日連続2回目)俺は、陽もそろそろ沈もうかという時間になった。

 夜にはサナトリウムにも行く約束がある。

 俺は、本日のアコたんとジュディア攻略を諦め、買い物に出掛けることにした。

 

 とは言っても所詮は宿暮らし、必要なものも多くない。

 俺は服の胸の部分をひっぱり、臭いを嗅ぐ。

 

「人間臭い」

 

 当たり前だ。

 

 問題は着替えが無いと言うことである。

 それにこの服は先程まで背中にジュディアが密着していたのだ。

 肌から離しておけば一晩ぐらい甘い匂いを楽しめるかもしれない。

 何を? ・・・聞くなよ。

 

 そしてもう一つ早急に解決せねばならない問題がある。

 

「みゃあー」

 

 すりすり

 

 そう、猫耳メインヒロインである千早のご飯である。

 

 

 彼女は先程俺が服屋を探して街を歩いていると、突然擦り寄ってきた虎柄の猫だ。

 だがこの世界にはミトラという猫耳の獣人がいるのだ。

 よって、人に化けられる猫が存在する可能性も非常に高い。

 そして俺は言ってみれば主人公、当然千早は後々猫耳の女の子に化けて俺に恩返ししてくれるはずなのだ。

 どう考えても彼女がメインヒロインである。

 Q.E.D.

 

 え? 語尾ににゃを付けてた奴はどうなんだ、だって?

 ・・・今日は俺が奢るよ。

 

 

 まずは千早のご飯を探す。

 服は最悪明日その場で買えば良いが、千早のご飯はそうはいかない。

 だが、この世界にペットフードなんてあるんだろうか。

 

 俺は途方に暮れ、仕方なく肉屋のおっちゃんに尋ねると、あっさりと答えが帰ってきた。

 

「猫用の飯を売ってる店ぇ? そんなもん聞いたことねぇな、飼ってる奴は大体生肉とか食わせてるみたいだぜ、よくペット用に買って帰る客がいるからな」

 

 そう言って、見映えのよろしくない肉を持ってきてくれた。

 俺は嬉々としてそれを受け取り、代金と情報代として金貨一枚を押し付けると、てくてくと歩き出す。

 千早は肉屋のショーケースをかりかりしていたが、俺が歩き出すと慌てて着いてきた。

 

「さて、次は服屋だ、千早もいるし歩いていこう」

 俺は千早を連れて意気揚々と服屋に向かった。

 気分はすっかりデートである。

 見た目も事実上もただの猫の散歩であることは言うまでもない。

 

 

 服屋に到着する、千早を引き連れ服屋に入る。

 

「いらっしゃいまs・・・あの、お客様、動物の御入店はちょっと」

 

 店員が俺を引き留める。

 俺は店員を睨む、店員は困った顔で固まっている。

 店員の意見にも一理ある、俺はふうとため息をつき

 

「俺が抱いて入ればどうだ、あとこの子を動物と呼ぶな。」

 

 俺は殺気を込めつつ質問と要望・・・命令を告げる。

 

「そ、それでしたら問題ございません、またお連れの方への失礼なごふるまい、陳謝いたします」

 

 溜飲を下げる、少し悪いことをした、この店員は職務に忠実なだけなのだ。

 俺は千早を抱き上げ店に入ると、軽く店内を回る。

 服の品質に確認し、満足したので店員を呼ぶ。

 

  「なにかご用でしょうか」

 

 店員が素早く駆け寄る、いかん、クレーマー扱いされている。

 まあ、千早のためだ、我慢しよう。

 俺は無理に千早連れで入店したことの詫びも込めてこう告げた。

 

「良い仕事をしている、このサイズの服、在庫分全部買わせてもらおう」

 

「ありがとうございましたー!」

 

 店員が腰を直角に曲げて俺を送る。やはり冒険者鞄があると買い物が楽だ、大量に買っても置き場に困らない。

 さて、必要な買い物は終わったな、後はサナトリウムに行くだけかな。

 

 そういえば昨日のまこととの会話は、黒茶を飲むばかりで食べ物が無かったな。

 確かに黒茶はそれだけでも良いものだが、甘いものがあるとなお良い。

 今日はお菓子を買っていってやろう。

 俺は千早を地面に下ろし、黒茶に合うお菓子を探しに洋菓子店へと向かうことにした。

 

 

 

 カランカラン

 入り口のドアに付いているベルがなる。

 

「ようこそ~いらっしゃい~ま~し~た~♪」

 

 

 

 なに、これ

 店員が、ミュージカルやってるんだが。

 

「ごちゅう~もんを~お伺い~、致します~♪」

 

「あの、それ、やめて貰えませんかね」

 

 俺が真顔で注文すると、店員はハッとした顔をして口に手を当て謝る。

 

「申し訳ございません、興が乗ると思わず台詞をミュージカルで言ってしまうんです、大変失礼いたしました」

 

 難儀な体質だなぁと思いながら、沢山のケーキが並んだショーケースをちらと見る。

 ケーキは紅茶にも黒茶にも合う、だが今回のお土産は無断で持っていくものだ、すぐに食べなくても大丈夫なものにしよう。

 俺はショーケースから目を外し、向かい側にあるパウンドケーキやクッキーの棚を探す。

 中々品揃えが良い、俺はナッツ入りのチョコパウンドケーキを手に取る。

 

 サナトリウムの黒茶は中煎りぐらいのなかなか強い苦味があるので、甘味の強いお菓子が合う。

 クッキーでは油っぽくてコーヒーに合わないし、普通のパウンドケーキでは甘味が足りない気がする、ナッツ入りを選んだのは好みである。

 ナッツとは木の実のことである。

 つまり、いや、なんでもない。

 

「ではこれを頂きます、釣りは良いです」

 

 店員にチョコナッツパウンドケーキを見せ、大銀貨1枚を支払う。

 黒茶と合わせて食べるのが楽しみだ。

 俺はうきうきとしながら店を出た。

 

 俺は一旦大通りに出て、体を伸ばす。

 午後7事、そろそろ良い時間だ、千早を連れて宿に帰ろう。

 俺は千早を抱き上げる

 

 

 

 

 

「スタァァァァップ!」

 

 俺はため息をつく、肩をいからせながら叫ぶ。

 

「今度はなんだってんだよ!」

 

「その子は、国王のペットだ」

 

 千早を見る、首輪がついており、商標登録マークが彫ってある。

 

 

 

 千早がガードに連れられていく。

 どなどなどーなー

 俺は無力だ。

 

「くそ、あとで必ず、必ず助けに行くからな!」

 

 俺は悔し涙を流し、手を伸ばしながらながらそう叫んだ。

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