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計画を練る

”お席にご案内致します”

 

 俺がサナトリウムに入ると、まことがとてとてと来て、スケッチブックを見せる。

 今日も大体の席は埋まっている、偶然昨日と同じ席、入って右奥が空いていて、そこに案内される。

 

”当店では日替わりセットと週替わりセットをご用意しております。ご注文を指差し下さい。”

 

 まことがメニューを持ってきて、テンプレのページを見せる。

 今日の日替わりはネスラグのニンニクバター焼き。

 ネスラグは食べたこと無いなぁ。

 俺は日替わりを指差す、まことは昨日のことを思いだしたのか、声を殺してくくくと笑っている。

 全く、失礼な奴だ。

 そんなことを考えたが、俺は今日も昼御飯食い損ねたことを思い出し、俺も思わず笑ってしまった。

 

 

”お待ちの間に緑茶や黒茶などはいかがでしょうか”

 

 まことが戻ってきて、ドリンクを聞いてくる。

 俺はもちろん黒茶を指差し、食前の一杯を楽しむ。

 

 

 黒茶がカップに注がれる。

 カップを持ち、香りを楽しむ。

 昨日より少し香りが弱い。

 一口すする、良い苦味だ、味は落ちていない。

 俺は先程買ったパウンドケーキのことを思い出し、思わずにやける。

 角砂糖を入れようとする。

 ふと、まことがじーっと俺を見つめているのに気づく。

 

「(どうした、なにか用事か?)」

 

 PMでそう呼び掛けると、彼女ははっとした表情をしてから首を振り、調理場に戻っていった。

 俺の黒茶の飲み方、変だったかな?

 

 

 

 さて、明日に向けた作戦会議である。

 今日得られた情報をまとめよう。

 

 今日俺は二人のヒロインに会った。

 ジュディアと千早である。

 ジュディアの攻略については、正直厳しい。

 FQ17においては、ガードに捕まると盗品は元の持ち主に返される。

 よって俺が手に入れたジュディアの心は、本人に返されたと考えて良い。

 ではそこで諦めるのか? だが断る。

 俺は戦友達の無念を忘れない。

 

 黒茶に角砂糖を追加する、かき混ぜた後にミルクを入れる。

 

 FQ17には盗品を正規品にする手段がある。

 それがシーフギルドでの質入&買い戻しである。

 盗品を一度シーフギルドへ売り飛ばし、それを買い直せば正規品扱いになるのだ。

 つまり、ジュディアの心を売り飛ばし、それを買い直せb・・・

 

 俺は半分ほど残っていた黒茶を飲み干し、そのまま天井を見上げる。

 どうすりゃ良いんだよ。

 

 

 ぽんぽん

 肩を叩かれる、見るとまことが立っていた。

 

”緑茶や黒茶のおかわりはいかがでしょうか”

 

 黒茶カップを見る、空だ。

 カップを差し出すと、まことは意図を察して調理場に戻り、黒茶ポットを持ってきて注いでくれた。

 

 湯気のたつ黒茶の香りを嗅ぐ、心が落ち着く。

 ちょっと焦りすぎてたみたいだ。

 一つため息をついて調子を整える。

 微笑みを作り、大きく口の形を作りながら、落ち着かせてくれた感謝をまことに伝える。

 

  「ありがとう」

 

 まことはどうだと言わんばかりの笑顔で返してくれた。

 全く、看板娘には叶わないな。

 

 ジュディアの攻略はもうちょっと後で詰めよう。

 俺は気を取り直し、千早救出作戦について考える。

 こちらは簡単だ、先程考えていた盗品を正規品にする方法がそのまま使える。

 千早を道具扱いするのは非常に心苦しいが、背に腹は代えられない。

 明日は千早を探して城で大立ち回りだな。

 

 しかし、問題はガード対策だ。

 今日だけで3回スタァァァップされている。

 全く、見つかったら終わりって、どこぞの蛇かよ。

 あれ、見つかったら終わり?

 

 

 ポンポン

 

 俺が何かを思い付こうとしたところでまた肩を叩かれる。

 ちらと横を見ると、まことが日替わりセットの乗ったお盆を持ってきていた。

 お盆がテーブルにおかれる、ばかでかいエスカルゴが皿の上に鎮座している。

 にんにくの食欲をそそる香りが立ち上る。

 おお、これは期待できそうだ。

 まことに礼をして、食事にとりかかる。

 

 ナイフとフォークを使ってスネイルを一口サイズに切る。

 口に入れる、バターの甘さが口に広がる。

 噛みしめる、スネイルの身がプツンと弾ける。

 何度も噛む、コリコリと良い感触が口を伝わる。

 ほのかに甘いバターとスネイルの味、にんにくがよく利いている。

 飲み込む。

 

 美味い、だが・・・。

 俺はごはんを口にする。

 これは・・・やはり。

 

 

 俺は手を挙げまことを呼ぶ。

 まことがメモ帳を持ってとてとてと近づいてくる。

 テンプレ以外の注文はスケッチブックではなくメモ帳でやり取りするのだろう。

 俺はメモ帳を使わずPMでまことに伝える。

 

「(醤油を貸してもらえないだろうか)」

 

 

 

 スネイルを口に入れる、しょうゆの塩気とバターの甘味がほどよく混ざる。

 コリコリと音をならしながら噛み締める。

 ごはんを口にする、俺は思わずにやける。

 

 スネイルの味は獣肉より貝類の味に似ていた。

 好みもあるが、淡白で甘い貝の味は、そのままではライスに合わないのだ。

 俺は手を止めることなくスネイルを胃に納めていった。

 

 

 

”食後のデザート、杏仁豆腐です。”

 

 まことが黒茶のおかわりと、デザートを持ってきてくれた。

 杏仁を口に入れる。

 よく冷えている甘い杏仁が口の中でふるふると震える。

 舌で潰して口全体で味わう。

 黒茶をすする、口の中に苦味が広がる。

 俺はまたにやけてしまう、ほのかな杏仁の味は黒茶に良く合う。

 ふと横を見ると、まことがまた俺の顔を凝視していた。

 恥ずかしいところを見られてしまった。

 

「(どうしたんだ?)」

 

 俺が苦笑しながら聞くと、まことは持っているメモ帳に何か書くが、そこで止まる。

 見せるか見せまいか迷っているようだった。

 俺はまことからメモ帳を奪う。

 

”美味しかった?”

 

 うん? 料理の話か?

 この店には何十回と来ているが初めて聞かれたな、こんなこと。

 異世界に変わった影響か?

 俺はそんなことを考えつつ素直に答えた。

 

「(ああ、美味しかったぞ)」

 

 まことはにへらと笑い、頷くと、調理場の方へ戻っていった。

 なんだったんだ。


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