第9話:鉄の門と、再会の対価
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王都の影に潜伏して、三年の月日が流れた。
九歳になったアレスの身体は、同年代よりも一回り大きく、無駄な脂肪の一切を削ぎ落とした鋼のように引き締まっている。その瞳に宿るのは、子供らしからぬ冷徹な光。
この三年間、彼はただ身を隠していたわけではない。夜は王都の地下闘技場で「無名の剣士」として修羅場を潜り、昼は辺境の森で、ヴァルフレアの炎を「武器」として完全に手懐けるための実戦を繰り返した。
今や彼が放つ炎は、美しく燃える火炎ではない。触れたそばから対象の理を削り取る、死を呼ぶ「牙」そのものだった。
入学式を翌日に控えた夜。アレスは一人、魔法学園アストラリアの最上階にある校長室を訪れていた。
「……三年前、ヴァルフレアがワールドエンドに襲われたことは聞き及んでいる。生存者はいないはずだったが、よくぞ生き延びたな。……その眼、地獄を見てきた者の眼だ」
校長ゼルヴァニウス・クロウは、窓の外を眺めたまま重々しく口を開いた。
「報告によれば、この数年、王都近郊でワールドエンドの末端が数名、行方不明になっているそうだが……お前の仕業か?」
「……さあ。害虫が勝手に消えただけでしょう」
アレスは感情の読み取れない声で答え、本題を切り出した。
「校長。条件があります。俺の入学を認めるなら、妹のルナを学園の最優先保護対象としてください。……あいつは奴らに顔を見られている」
アレスの本音は、安全性はもちろんのこと、ルナが自分に依存しすぎている現状を危惧してのことでもあった。学園という強固な結界の中にいれば、自分は復讐のための「狩り」に専念できる。
「よかろう。名門ヴァルフレアの生き残りへの特例だ。ただし、お前がその実力を示し続けることが条件だ」
◇
翌日。新入生の教室に足を踏み入れたアレスは、周囲の子供じみた視線を黙殺して席に座った。だが、その場に漂う三つの「異質な魔力」だけは無視できなかった。
一人目は、教室の隅で氷のような視線を投げかける美少年。水属性の名門、アクレイド家のリヴァイン。
「……鼻につく熱だ。平民風ぜの者が、僕の視界に入るな」
二人目は、岩のように屈強な体格の少年、地属性のグラウス。
「お前から、不穏な風を感じる。……俺の仲間を脅かすなら、容赦はせんぞ」
そして三人目。重苦しい空気を切り裂くように、明るい声で肩を叩いてきた少年。
「おいおい、そんなピリピリすんなって! 僕はレヴィア。よろしくな、アレス! 君、相当やるだろ? ……僕ら、いい友達になれそうだ」
雷属性のレヴィアは、屈託のない笑顔で右手を差し出してきた。
◇
一方、学園内の保護施設。
「……お兄ちゃん、寮は別々だなんて酷いよ……」
アレスの意図とは裏腹に、ルナは一人部屋のベッドで、独占欲と寂しさが入り混じった瞳をさせていた。
物理的な距離ができたことで、彼女の心には「誰かにお兄ちゃんを奪われるかもしれない」という焦燥が芽生え始めていた。
(いいもん……お兄ちゃんが帰ってくるまで、もっと魔法も練習して……お兄ちゃんを驚かせてやるんだから。お兄ちゃんには、私がいなきゃダメなんだって、わからせてあげる)
復讐を誓う兄と、兄を狂信する妹。
静かな波乱を孕みながら、アレスの魔法学園生活がついに幕を開けた。




