第10話:異端の熾火(おきび)
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魔法学園アストラリアの第一演習場。
そこには、二十名の新入生と、厳格な面持ちの教官たちが集まっていた。
「これより属性適性検査、および基礎魔力出力の測定を行う」
教官の声が響く。測定方法は単純だ。巨大な魔力測定石に向かって、自身の得意とする魔法を放ち、その「色」「密度」「威力」を測る。
まず名乗りを上げたのは、水属性のリヴァイン・アクレイドだった。
「……無意味な時間だ。格の違いを見せてやろう」
彼が指先を向けると、演習場の温度が急激に下がる。放たれたのは、細く鋭い氷の槍。それが測定石に激突した瞬間、石の表面が瞬時に凍りつき、深い亀裂が入った。
「出力、特級。……流石はアクレイド家だ」
続いて、地属性のグラウス・バルディア。
「守るためには、まず大地を動かす力が要る!」
彼が足を踏み鳴らすと、地面が唸りを上げ、巨大な岩の杭が測定石を突き上げた。石は粉砕こそされないものの、凄まじい衝撃音を響かせる。
「出力、上級。……堅実で力強い」
そして、雷属性のレヴィア・エンヴィー。
「あはは、次は僕の番? お手柔らかにね!」
レヴィアがパチンと指を鳴らすと、目にも止まらぬ速さの雷撃が石を叩いた。
「出力、上級。……だが、速度は測定不能か」
三人の天才たちの競演に、教室のボルテージは最高潮に達した。誰もが「この三人が今年のトップだ」と確信した、その時だ。
「……次、アレス・ヴァルフレア」
アレスが静かに前に出る。
周囲からは「炎の貴族の生き残りか」「お手並み拝見だな」と好奇の視線が注がれる。アレスはそれらを一切無視し、測定石の前に立った。
(普通の炎……。だが、あの男に届くための炎だ)
アレスは右手をかざす。
彼が練り上げたのは、他の生徒のような華やかな魔法ではない。この二年間、死線を潜り抜けながら「殺すため」だけに凝縮し続けた、超高密度の熱量だ。
「――穿て」
放たれたのは、針のように細く、白く輝く一筋の炎。
それは爆音を立てることもなく、一瞬で空間を切り裂いた。
ドシュッ!!
次の瞬間、頑丈なはずの測定石の中央に、綺麗な「穴」が空いていた。
あまりの高温に、石は溶ける暇もなく蒸発し、凄まじい熱気が遅れて演習場全体を包み込む。貫通した炎は、背後の防壁さえも容易く突き破り、遥か彼方まで伸びて消えた。
静寂。
リヴァインも、グラウスも、そしてレヴィアでさえも、目を見開いて硬直していた。
「……測定不能。石を破壊するのではなく、その硬度を無視して『蒸発』させたというのか……?」
教官の手が震えている。
アレスは無言で列に戻ろうとしたが、その行く手を阻む影があった。リヴァインが冷たい殺気を放ちながら立ち塞がる。
「……今の魔法は何だ。ヴァルフレアの炎は、もっと不器用な破壊の炎のはずだ」
「……ただの炎だ。お前たちの魔法がお遊びに見えるくらいには、鍛えているだけだ」
アレスの言葉に、場に緊張が走る。
その様子を、校舎の窓からゼルヴァニウス校長が静かに見守っていた。
(三年前の熾火が、これほどまでに鋭い刃になるとはな……)
圧倒的な実力を見せつけたアレス。
だが、その強すぎる光は、同時に周囲の嫉妬と、潜伏している闇を惹きつけようとしている




