表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

第6話:泥に塗れた牙

読んでくれてありがとう!

コメントとか感想聞かせてくれたら

やる気が出ます!


 ヴァルフレアの屋敷が焼け落ち、両親を失ってから一ヶ月。

 アレスとルナは、辺境の断崖にある荒れ果てた廃屋に身を寄せていた。かつての貴族の生活は遠い夢の彼方だ。

「はぁ、はぁ、はぁ……っ!!」

 夜明け前、アレスは泥にまみれ、重い石を背負って険しい山道を往復していた。

 九歳、十歳と成長を待つ余裕などない。あのルシフェルの圧倒的な力を前に、魔法だけで勝てるとは思えなかった。

(あの剣を抜いた時、俺は重さに耐えられなかった。……次にあの剣を手にする時、片手で振り回せるだけの力がなきゃ、復讐なんて口にする資格もない)

 前世の知識を掘り起こし、効率的な筋力トレーニングと、徹底的な剣の素振りを日課にする。細かった腕には少しずつ引き締まった筋肉がつき、手のひらはマメで潰れては固まり、鋼のように硬くなっていく。

 そんな兄を、ルナは献身的に支え続けた。

「お兄ちゃん……。もう休んだ方がいいよ。手が、血だらけだよ……」

 夜、アレスが素振りを終えて戻ると、ルナが冷たい水を用意して待っていた。

 ルナはアレスの傷だらけの手を取り、丁寧に包帯を巻いていく。その際、彼女は包帯を巻くふりをして、アレスの指先にそっと唇を寄せた。

「……ルナ?」

「ううん、おまじない。……私、お兄ちゃんがいればいいの。お兄ちゃんだけが、私の世界だから」

 ルナの瞳には、かつての無邪気な妹の面影はなく、兄への崇拝と、どこか不穏な熱を帯びた光が宿っていた。

 修行は身体だけではない。アレスは自分の内に眠る「普通の炎」の操作も極限まで磨いていた。

(今は、黒い力を出すことはできない。なら、この炎を誰よりも鋭く、誰よりも速く放てるようにするだけだ)

 指先から放つ極小の炎で、百歩先の木の葉を射抜く。

 それは、貴族が学ぶ華やかな魔法とは対極にある、急所を一撃で貫くための「殺しの魔技」だった。

 アレスはその重みを感じながら、彼女の背中を静かに叩いた。

(……ああ。お前だけは、この命に代えても守り抜く。そのための力が、例え地獄に魂を売らなければ手に入らないものだとしても)

 復讐への渇望と、妹への歪な愛情。二人の日常は、静かに、けれど確実に「普通」から逸脱し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ