第28話:深淵の会議
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学園を包む陽光とは無縁の、凍てつくような闇が支配する玉座の間。
そこへ、一人の少年――レヴィアの姿をしたエンヴィーが、軽やかな足取りで戻ってきた。
数ヶ月に及ぶ潜入任務を終えた彼の顔には、どこか満足げな笑みが浮かんでいる。
「あはは、ただいま。……報告に来たよ、ボス」
玉座に座る「主」へ、エンヴィーは深々と、しかしどこか馬鹿にしたような礼を取る。
その周囲には、グラトニーを失い、今は空席となった一つを除いた数多の影――組織の幹部たちが集結していた。
「……随分と楽しんできたようだな、エンヴィー」
低く、地響きのような声を出したのは、巨躯を誇る強欲。
「報告しろ。学園の『核』は手に入れたのか」
「いやぁ、それは失敗。……でもさ、それ以上に面白いものを見つけたんだ」
エンヴィーは瞳を爛々と輝かせ、その名を口にする。
「アレス。……あの学園に、出来損ないのクラスメイトを率いて僕の『進化』を押し留めた、とんでもない怪物がいる」
その名が出た瞬間、場に冷ややかな空気が流れた。
「怪物だと? 貴様が遅れを取った言い訳か?」
嘲笑うのは、扇を片手に退屈そうに横たわる色欲。
「グラトニーが消え、貴様まで手ぶらで帰還とは。……七つの大罪も、随分と舐められたものね」
幹部たちが口々に不快感を示す中、一人の男だけが、その名を聞いた瞬間に微かに眉を動かした。
傲慢――ルシフェル。
組織の最高戦力であり、最強の座に君臨する男が、深く背もたれに身を預けたまま呟く。
「アレス……だと?」
その声には、いつもの冷徹な傲慢さではなく、奇妙な「違和感」が混じっていた。
ルシフェルは己の記憶の深淵を探る。
数多の強者を屠り、数多の国を滅ぼしてきた。ゴミのような弱者の名前など、一つとして覚えているはずがない。
だが、その三文字の響きだけが、心臓の奥底にある古い傷をなぞるように、微かに疼く。
(……どこだ。どこで、その名を聞いた……?)
黄金の瞳を細めるが、決定的な場面が霧に隠れたように思い出せない。
ルシフェルにとって、思い出せないほどの「過去」が存在すること自体が、ある種の屈辱であった。
「……フン、知らんな。羽虫の名をいちいち覚えるほど、私は暇ではない」
ルシフェルは吐き捨てるように言い放ち、思考を断ち切った。
だが、その拳は無意識のうちに、玉座の手すりを薄くひび割れさせていた。
「あはは、そうだよね。……でも気をつけてよ、みんな」
エンヴィーが影に溶け込みながら、最後に楽しそうに笑う。
「あいつは、僕たちの『常識』じゃ測れない。……きっとすぐに、向こうから会いに来るよ」
闇に包まれた玉座の間。
新たな火種の予感に、怪物たちの瞳が怪しく光り輝いていた。




