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第27話:不協和音の夜明け

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 「――レヴィア!!」

 裂帛れっぱくの気合と共に、アレスは跳ね起きた。

 視界が激しく明滅し、脳を直接かき回されるような激痛が走る。

 反射的に右手を伸ばしたが、そこにあるはずの魔剣の感触はなく、代わりに指先が虚空を掴んだ。

「お兄ちゃん……! お兄ちゃんっ!!」

 焦点を結ばない視界の中で、ルナが泣きながら自分にしがみついているのが分かった。

 清潔なリネンの匂い、遠くで聞こえる鳥のさえずり。そこが学園の医務室であることを、アレスの脳がようやく認識する。

「……ルナ、か」

「良かった……もう、丸三日も目を覚まさないから……っ」

 アレスは乱れた呼吸を整え、自分の体を確認した。

 魔力回路は焼けただれたように熱く、指先一つ動かすのにも、鉛のような重さを感じる。あの日、レヴィア――『嫉妬エンヴィー』との戦いで、彼は自分の魂を削るような無茶をした。その代償は、想像以上に重かった。

「……あいつは。レヴィアはどうなった」

 絞り出すような問いに、ルナは俯いて首を振った。

「……分からないの。校長先生が駆けつけてくれたときには、もう、影の中に消えた後で……。学園の結界も、彼が内側から細工してたみたいで、追跡もできなくて……」

 アレスは奥歯を噛み締めた。

 裏切り。嘲笑。そして、最後に見たあの哀しげな瞳。

 親友だと思っていた男の正体は、人類の敵である『七つの大罪』だった。その事実が、傷口に塩を塗り込むようにアレスの心を抉る。

「……フン、そうか」

 アレスはシーツを跳ね除け、ふらつく足でベッドから降りた。

「お兄ちゃん!? ダメだよ、まだ安静にしてないと!」

「……放せ。俺の体だ、俺が一番分かっている」

 止めるルナを冷たく突き放し、アレスは壁を伝いながら歩き出す。

 向かったのは、学園の訓練場だった。

 窓から見えるそこには、満身創痍のはずのクラスメイトたちが集まっていた。

 だが、そこにあるのは熱気ではない。**「不協和音」**だった。

「……次は絶対に、あんな思いさせない……。俺たちが、もっと強くならないと……」

 グラウスが血の滲む拳を握り、闇雲に土の壁を錬成しては壊している。

「強くなってどうするのよ!? 相手はあのアレスをあんな姿にした怪物なのよ!?」

 サキが震える声で叫び返し、カイルはただ地面を睨みつけて動けないでいた。

 レヴィアを失った喪失感と、強大な敵を前にした絶望感。

 バラバラになった「Fクラス」の姿が、そこにはあった。

「……相変わらず、見るに耐えんな」

 アレスは柱の影でそれを見つめ、自嘲気味に呟いた。

 以前なら「ゴミ共が」と切り捨てていただろう。だが、今の彼には、その絶望している連中の姿が、今の自分自身の「無力さ」を鏡で見せられているようで、吐き気がした。

 その時、視界が急激に暗転する。

「……っ」

 膝から崩れ落ちそうになったアレスを、背後から誰かが支えた。

「……無理が過ぎるぞ、アレス」

 低い、落ち着いた声。リヴァインだった。

 彼は冷徹な瞳でアレスを見つめ、無理やりその肩を貸す。

「今の貴様がここにいても、連中の不安を煽るだけだ。……戻るぞ、病室へ」

 アレスは言い返す気力もなく、リヴァインに引きずられるようにして訓練場を後にした。

 背後からは、まだクラスメイトたちの言い争う声が、虚しく響き続けていた。

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