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嫌な予感は、だいたい当たる。
案の定、父はわたしを“死んだこと”にした。母には「子どもは生まれてすぐに亡くなった」と嘘を告げ、わたしを屋敷の地下へ運ばせた。まだ赤子のわたしの目の前で、父は淡々と手配の指示を出している。油断しているのか、わたしがただの赤子だと思っているのか、口を開けば計画をベラベラと喋ってくれる。
「この子は外には出さない。……地下室を幼児用の部屋に改造しろ。必要なものはすべてそこに運び込め。名前だけはつける……一族の責任としてな」
聞いてるこっちがドン引きだ。殺しはしないのか、という疑問はあったが、それもすぐ解けた。父は言った。「死んだ悪魔は本物の悪魔に戻る。だから殺すわけにはいかん」……つまり怖いのだ。悪魔の子を殺して復活されたら困る、という発想。自分の子ども相手に、情けないにもほどがある。
わたしは、赤子の体の中で、呆れたようにため息をついた。
いや、まあ確かにこの世界、悪魔ってのが本当にいるかもしれない。でもだからって、お前の息子(表向き死んでるけど)を地下に幽閉して一生閉じ込めるってどういう了見だ。親だろう? 産んだ子だろう? 責任とるって、そういう意味じゃないだろう。愛して見せろよ、って心の中で叫びたくなる。
地下室は、もうすでに工事が始まっているらしい。わたしの部屋になる予定の空間には、柔らかい寝床やおもちゃのようなものが運ばれているが、それがかえって不気味だ。ここが“子どものための部屋”ではなく“悪魔の子を隔離する檻”だと、空気が語っている。
父はさらに続ける。「こいつは……いや、この悪魔は、我が家の恥だ。だが、一族に悪魔の血が混じったのなら、その責任は私がとる。名は与えよう。だが、決して日の下に出すことはない」
ええー。ええー。ドン引きだ。赤子のわたしの目の前で堂々とそんな宣言するな。わたし、まだ息してるぞ? 泣こうと思えば泣けるぞ?
泣き声を上げれば「やっぱり悪魔だ」とか言われそうで、余計に泣く気が失せる。仕方なく、じっと父を見上げて、赤い目を光らせてやった。大人たちはぎょっとして一歩下がる。ああ、めんどくさい未来がますます確定していく。
――まあいいや。とりあえず生きてる。それだけで勝ちだ。
わたしは、赤子の体で小さく笑ってみせた。




