67話 静かな記憶の灯り(白杖支援・手話・見守りの接し方すべて入り)
日めくりカレンダー
きみのそばに
そっとたつだけで
あんしんが
うまれることが
あるんだよ。
67話 静かな記憶の灯り(白杖支援・手話・見守りの接し方すべて入り)
灯台荘の夜には、ときどき不思議な風が吹く。
https://suno.com/song/599b6d51-bafd-463a-91f4-592540b5b47c
その風に触れると、胸の奥にしまっていた記憶が、
そっと灯りのように浮かび上がることがある。
今日は、私自身の昔の記憶を、
灯台荘の住人たちに静かに話してみたい。
若い頃から、心が重くなる日が続いていた。
朝、布団から起き上がるだけで精一杯の時期もあった。
ある日、体に大きな負担がかかる出来事があり、
手先が思うように動かず、歩くのも難しい日々が続いた。
「これは自分のせいだ」と思い込んでしまい、
何度も胸の奥で自分を責めていた。
少し落ち着いた頃、私は駅のホームを見守る仕事を始めた。
朝と夕方、行き交う人々の流れの中で、
見えにくさや聞こえにくさ、わかりにくさを抱える方々と出会った。
視覚に不安がある方への接し方(白杖支援)
白杖は、その人の“目”そのものだった。
地面を軽く突きながら、段差や危険を探る大切な道具。
だから私は、
白杖には触れない・引っ張らない・押さない
という基本を必ず守った。
声をかけるときは、
「お手伝いしましょうか」
と、相手が選べる形で。
雨の日、車いすの方が濡れた床で滑りそうになったとき、
私はそっと近づき、
「中央寄りを歩きますね」と伝えながら、
点状ブロックの内側をゆっくり誘導した。
白杖の先が点状ブロックの突起を“感じ取る”ように動くのを確認し、
相手のペースを乱さないように歩く。
私自身、手先が思うように動かない時期があったから、
「自分のペースで歩きたい」という気持ちが
よくわかったのかもしれない。
聴こえにくい方への接し方
手話はまだぎこちなかったけれど、
正面に立つ・口元を見せる・ゆっくり話す
これだけで伝わることが多かった。
聞き返すときは、
「もう一度お願いします」
と丁寧に。
通じにくいときは筆談に切り替え、
短い言葉で落ち着いた文字を書く。
ある日、耳が聞こえにくい方から
「声をかけてもらって助かった」
と伝えられたとき、
“完璧じゃなくても灯りになる”
ということを深く知った。
わかりにくさを抱える方への接し方
ゆっくりした口調で、
相手の表情をよく見ながら話す。
「ここで待っていて大丈夫ですよ」
「この電車で合っていますよ」
と、短く・落ち着いた声で伝える。
混雑しているときは、
そっと近くで見守るだけでも安心につながる。
急かさない。
否定しない。
相手のペースに合わせる。
それだけで、
不安が少し軽くなる瞬間がある。
心が揺れている方への接し方
心の揺らぎは見えにくい。
だからこそ、
穏やかな声・ゆっくりした呼吸・静かな距離感
が大切だった。
「何かお困りですか」
と、柔らかく声をかける。
表情が硬いときは、
無理に話させず、
そっとそばにいるだけにする。
必要なら、
少し静かな場所へ自然に誘導する。
私自身、心が重かった時期があったから、
その“揺れ”が少しだけわかった。
灯台荘に重なる記憶
灯台荘の住人たちを書いていると、
あの頃の記憶が静かに重なる。
文子さんや慎一さんが抱える“見えない痛み”は、
あのホームで出会った人たちの姿とどこか似ている。
灯台荘は、大きな奇跡を描く場所ではない。
ただ、遠くからでも届く小さな光を、
誰かと分け合う場所だ。
もし今日、あなたが少しだけ生きづらさを抱えているなら、
どうか無理をせず、
灯台荘の住人たちのように、
誰かと小さな視線や言葉を交わしてみてほしい。
あなたの日常に、
ほんのりとした灯りがともりますように。
そして灯台荘とともに、
私もこれからゆっくり歩いていきたい。
夏の夕暮れは、心をそっと溶かしてくれる時間です。
今日は半分でいいよ。
夕暮れの光を少し感じられたなら、それだけで十分です。
あなたのペースで、ゆっくり休んでください。
この物語は、いつでも静かに灯っています。




