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小さな愛が灯る場所  作者: 浮世雲のジュン
第4章:夏の風とハーブティ

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66/1012

66話 静かな記憶の灯り(改訂版)

日めくりカレンダー(67話版・安全仕様)

きみのきおくは

いたみだけではありません。

そっとてらした

ちいさなひかりも

しずかにのこっています。

66話 静かな記憶の灯り(改訂版)


灯台荘の夜は、時々ふしぎな風が吹く。

https://suno.com/song/e804d396-19ba-4a20-8772-c43ea1c6bfeb

その風に触れると、胸の奥にしまっていた記憶が、

そっと灯りのように浮かび上がることがある。


今日は、私自身の昔の記憶を、

灯台荘の住人たちに静かに話してみたい。


若い頃から、心が重くなる日が続いていた。

朝、布団から起き上がるだけで精一杯の時期もあった。

ある日、体に大きな負担がかかる出来事があり、

手先が思うように動かず、歩くのも難しい日々が続いた。

「これは自分のせいだ」と思い込んでしまい、

何度も胸の奥で自分を責めていた。


少し落ち着いた頃、私は駅のホームを見守る仕事を始めた。

朝と夕方、行き交う人々の流れの中で、

見えにくさや聞こえにくさ、わかりにくさを抱える方々と出会った。


白い杖を持つ方が、ホームの端に気づかず近づいてしまうことがある。

耳が聞こえにくい方が、周囲の変化に気づけず危険な場面になることもある。

ゆっくり話さないと伝わりにくい方もいた。

そんな「見えにくい危険」が、日常の中に静かに潜んでいた。


私は少しずつ手話を学び、

「大丈夫ですか」と手の動きで伝える練習を重ねた。

筆談や表情、身振りを組み合わせて、

相手のペースに合わせてゆっくり話すことも覚えた。


ある雨の日、車いすを利用する方が濡れた床で滑りそうになった。

私はそっと後ろから支え、

「中央寄りを歩きますね」と声をかけながらゆっくり誘導した。

白杖の先が点状ブロックを感じる動きを確認し、

必要に応じて軽く背中を支えるように見守った。


別の日、耳が聞こえにくい方から

「誰かが声をかけてくれて助かった」と伝えられたことがある。

その瞬間、

“完璧じゃなくても、そばにいるだけで灯りになる”

ということを深く実感した。


ゆっくり話すこと、

相手の表情をよく見ること、

急かさずに待つこと、

必要なら静かな場所へ誘導すること。

そんな小さな気遣いが、

相手の不安をほんの少し軽くすることを知った。


私の体が思うように動かない時期があったからこそ、

相手の「見えにくさ」「聞こえにくさ」「わかりにくさ」「心の揺らぎ」に

自然と寄り添えるようになったのかもしれない。


灯台荘の住人たちを書いていると、

あの頃の記憶が静かに重なる。

文子さんや慎一さんが抱える“見えない痛み”は、

あのホームで出会った人たちの姿とどこか似ている。


灯台荘は、大きな奇跡を描く場所ではない。

ただ、遠くからでも届く小さな光を、

誰かと分け合う場所だ。


もし今日、あなたが少しだけ生きづらさを抱えているなら、

どうか無理をせず、

灯台荘の住人たちのように、

誰かと小さな視線や言葉を交わしてみてほしい。


あなたの日常に、

ほんのりとした灯りがともりますように。

そして灯台荘とともに、

私もこれからゆっくり歩いていきたい。



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