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474話 「灯台荘出版記念会」
474話 「灯台荘出版記念会」
五月下旬、灯台荘の庭と灯室でささやかな出版記念イベントが開かれた。
地元の漁師たち、詩織さん、湊、遥、そして数人の読者が集まった。
凛は少し緊張しながら、皆の前に立った。
「この本は、私一人のものではありません。
雪乃さんの勇気、アイダ・ルイスさんの献身、そしてここを訪れてくれた皆さんの光で生まれました」 湊がギターで「雪女の扉」を演奏し、遥がその瞬間を優しく撮影した。
詩織さんが雪乃と清吉の逸話、アイダ・ルイスの救助エピソードを朗読すると、会場に静かなため息が漏れた。
イベントの最後、凛は新しい詩を皆の前で読んだ。招かれた光
頁をめくる指が 新しい灯を灯す
失われた冬も 遠い海の勇気も
今、ここに 集う
私はもう 一人じゃない
この灯台荘に 皆の物語を 招き入れる 参加者の一人——雪乃の末裔だと名乗る老婦人が、凛の手を握った。
「ありがとう……私の祖母の話が、こうして生き続けるなんて」
凛の眼鏡の奥に、温かい涙が浮かんだ。
守るだけでなく、招き入れる——その実感が、胸の奥で確かに輝いていた。




