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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第六章 迷宮編
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雇用関係

第七十六話

 ユキマルたち『タリスマンズ』がバラバラに散ってしまったのと同じく、ナナーリッヒのパーティーもまた『迷宮』内で分散していた。

それもナナーリッヒとそれ以外のメンバーという、ナナーリッヒにとってはなんとも絶望的な分散の仕方をしてしまったのだ。

しかし、幸いにもナナーリッヒはユキマルと、そして残りのジン、リコ、フィンズはたった今ソルナとルフテと合流した。


「なあ、あんたらはうちのリーダーを見なかったか?」


ジンがダイヤランク冒険者たちを代表して聞く。

彼らはナナーリッヒの父親から、息子を守るよう雇われている。

つまり、ジンたちにとってこうしてバラバラになった状態は非常にまずいのだ。


「いえ、私たちは彼を見てないわ。そっちはユキマル君....うちのリーダーを見たりしたかしら?」


「....あいつか。いや、見てないな。」


少し考えてから首を横に振るジン。


「それで?あなたたちはこれからどうするの?」


「俺たちはとりあえず『迷宮』の出口を目指す。」


「出口?」


「ああ、入ってきた門だ。」


ジンの言う出口とは要するに『迷宮』の入り口だ。

入ったときは謎の光によってランダムな場所に転送されてしまったが、出るときは普通の門なのである。


「バラバラになった以上、どこかで合流するしかない。あいつもバカじゃなければ出口を目指してるだろう。」


ジンはナナーリッヒの実力をよく知っている。

そもそも彼の冒険者ランクがブロンズランクである点から、当人の実力不足は証明されているのだが、ジンはナナーリッヒにはブロンズランクの実力すらもないと考えていた。

その理由としては冒険者としての経験不足だ。

彼は貴族の出であり、今までは危険と無縁な生活を送ってきた。

そしてパーティーを組んでから現在まで、完全にジンたちのおんぶにだっこ状態だったのである。

狩りはできない、山菜の見分けもつかない、火起こしもできない、魔物とも戦えない。

しまいには金に物を言わせてジンからパーティーリーダーの座を奪うしまつ。

はっきり言ってお荷物だった。

それでもあいつの言うことを聞くのは──


「金だよ。」


「え?」


ソルナは思わず聞き返した。


「あんたら気になってただろ?なんで俺たちがあのボンボンとパーティーを組んでるのか。答えは金だ。要するにただの雇用関係なんだよ。」


「え、ええ。確かに気になりはしたけど...。」


随分と現金なことを言うなと思ったソルナ。

まあでもそういうパーティーも世の中には存在するのかと納得するのだった。


「まあ、いい。俺たちはこれから上を目指すわけだが、一緒に来るか?」


『迷宮』の出口は最深部と真逆の方向、つまり上の方にある。

出口を目指す彼らにとって、進路は必然的に上階となった。

そしてそれはくしくもユキマルたちと全く逆の方向なのだ。


「ついていくわ。情けない話だけど、私たち二人だけじゃ心もとないから。」


ルフテと顔を合わせるソルナ。

そして軽くうなずくルフテ。


「いや、恥じることはない。正直ダイヤランクの俺達でも多少苦労している。それだけ『迷宮』が危険な場所なんだ。あいつも無事だといいんだが...。」


「そうね。」


ユキマルたちを心に浮かべるソルナ。

フリエナは強いが、もし仮に一人なら危険だろう。

コラゴンはなんだかんだ大丈夫そうだ。

ユキマル君は....心配するだけ無駄だろう。


そんなこんなで上階へ歩き始めたソルナと、最深部へ向かったユキマルたち。

合流を目的としている両者だが、まさかのすれ違いが発生するのだった。


・・・・

・・


「ここは...どこだ?」


一人寂しく下層に転移したトイガ。

周りには誰もいない。

周囲はユキマルやソルナたちがいた階層と比べてさらに薄暗く、壁の劣化も激しい。


「まさか....。」


ようやく自分が他とはぐれたことを認識するトイガ。


「クソッ....!!!」 


感情に任せて壁を殴るトイガ。

ドシーンと少し揺れるが、壁自体にダメージは与えられてない。

『迷宮』の壁は多少殴られた程度では傷一つつかないのだ。


「また、俺はフリエナ様のお(そば)を離れてしまったのか....!!」


嫌な記憶がよみがえる。

あの時、誘拐犯によってフリエナと引き離されてしまった瞬間の絶望は今もトイガの中で渦巻いていた。

確かにユキマルという男の手によって、フリエナは無事生還を果たした。

五体満足どころか、むしろ楽しそうであった。

しかし、何かが納得いかない。


「.....っく!」


悔しさを噛みしめながらも、ここでじっとしていても何にもならないと思い、歩き始めるトイガ。

目的地はない。

ただひたすらに目の前の通路を進むだけだ。

フリエナとまた合流するまで。


・・・・

・・


「それで、あんたらのリーダーはどんな奴なんだ?」


無言で進んでるうちに気まずくなったジンがソルナに聞く。

あんたらのリーダーとは当然ユキマルのことだ。

同じダイヤランクとしてなんとなく気になったのだ。


「ユキマル君は.....変な人ね。」


「変?」


思わぬ回答に困惑するジンたち。


「ゆ、ユキマル君には申し訳ないですけど...か、かなり変わった人ではあると思います...。」


追撃を入れるルフテ。

仮にこの場にコラゴンとフリエナがいたら同じように同調していただろう。


「ど、どういう意味だ?」


「そうね....正直彼のことはあまり知らないのよね。でもなぜか頼りたくなるし、ユキマル君なら何とかしてくれるって思っちゃう。不思議とね。」


「....いい関係性だな。」


羨ましそうにつぶやくジン。


「それじゃあ、そっちはどうなの?もとはあなたがパーティーリーダーったんでしょ?」


「ああ、そうだ。もともとは俺、リコ、フィンズの三人で結成したパーティーだ。名は『アバルス』。ナナーリッヒがパーティーリーダーになったことで『カリオストロ隊』に改名されたけどな。」


「『アバルス』ね。三人は何で冒険者に?」


ソルナが聞く。


「そりゃさっきも言ったが金だ。うまくやれば冒険者は稼げるからな。」


実際ジンたちはその実力を持ってしてダイヤランクまで上り詰め、成功を収めた。

これまでも相応の金額を稼いでいたが、そんな三人のもとに大きな依頼が舞い込んでくる。

貴族の息子の護衛だ。


「それがあいつとの出会いだよ。」


「そ、そうだったんですね!」


ルフテが相槌をうつ。


「まあ親父さんの金払いが良かったから二つ返事で受けたけど、今となっては正直後悔している。」


「どうして?」


「そりゃ金と権力に物を言わせてリーダーの座を奪われて、パーティー名も改名させられたら億劫(おっくう)にもなるだろ。」


「.....そうね。」


たしかにと納得するソルナ。


「この『迷宮』攻略だって命がけだ。あとで追加料金を請求しなきゃはっきり言ってやってられないぜ。」


うんうんと同意するリコとフィンズ。

どうやら三人のナナーリッヒへの認識は共通しているようだ。


「まあ、ナナーリッヒもすぐ飽きるだろ。そうしたら俺たちはお役御免で元の生活に戻れる。それまでの辛抱だ。」


そんなこんなで道中会話していると、通路の先に階段が見えてきた。

上の階と下の階へとそれぞれ伸びている。

どうやら『迷宮』には定期的にこのような階段が設置されているようだ。


「これで上に行けるわね。」


「ああ。」


そうして階段を上るソルナたちなのだった。


・・・・

・・


一方そのころユキマルたちは下へ向かう階段を下りていた。


「これ、何階層まであるんだ?」


「僕様の知る限りでは『迷宮』に決まった階数はない。」


ナナーリッヒが言う。

しかし、それもそのはずだった。

『迷宮』は常に構造を変化させており、場合によっては階が丸ごと移動したりするのだ。

だから『迷宮』は大まかに上層、中層、下層、最深部と分かれている。


「僕様の見立てによるとここは中層だ。でも、いくつか階段を下ったから下層に近いかもしれない。」


「なるほどな。」


ナナーリッヒの解説に納得するユキマル。

それと同時に『迷宮』の奇怪さに驚いたのだ。

まあでも正体が『神獣』なら何でもありかと思いなおす。


「ちなみに私からも話しておきたいことがある。」


今度はフリエナが言う。


「これからもし誰かが試練を受けることになったら、時間との勝負になるわ。」


「どういうことだ?」


「一度試練を受けると、終わるまで『迷宮』を出られないの。」


「.....!!!」


『迷宮』が開いているのは今日一日だけ。

つまりタイムリミットは24時間。

それなのに試練とは挑戦者を『迷宮』内に縛り付ける効力があるらしい。


「じゃあ、試練がないことを祈るか。」


「せやな」


「そ、そうだな。」


「うん」


それぞれ心の中で祈るのだった。


「おい、そこのお前たち、止まりな。」


心の中で祈っていると、前方から声がした。

どうやら俺たちに言っているらしい。

行き当たりの角から姿を現したのは六名の冒険者たちだ。


「ここを通りたけりゃ、持ち金全部おいてきな!」


なるほど。

冒険者狩りか。

やれやれ、これまた面倒なのと鉢合わせたな。


深いため息をつくユキマルなのだった。

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