『迷宮』へ
第七十四話
「やっぱデカいな!!」
「ほんまデカすぎるで!」
開いた『迷宮』の門を前に驚きの声を上げるユキマル。
それにコラゴンが相槌を入れる。
「そ、それで、わ、私たちはこれからどうするんですか?」
挑戦者たちがあらかた『迷宮』に入り、観衆の熱も落ち着いてきたころにルフテが聞く。
「たしかにな。フリエナの家に泊めさせてもらえるのも今日までだしな。いやまあ、言えば大丈夫なんだろうけど流石に悪いよな。」
「そうね。ところで次の目的地は決まってるの?」
ソルナが聞く。
「ああ、ルクスとの約束もあるし、ちょっと早いけど『ラーテルン共和国』に向かおうかなって。」
「『ラーテルン共和国』ね。たしか武闘大会が開かれるのよね?」
「ああ。」
『ラーテルン共和国』で開催される武闘大会までにはまだしばらく時間がある。
今から向かってもしばらく『ラーテルン共和国』を観光するだけになるだろう。
しかし、ここにいてもやることはない。
『迷宮』には少し興味があったが、危険な場所にわざわざパーティーメンバーを連れていくわけにもいかないだろう。
フォルゴにも釘を刺されたしね。
ならばさっさと次の場所へと移ろうということだ。
「コラゴンとルフテもそれでいいか?」
「は、はい!私はなんでも!」
「ええで!」
快諾する一人と一匹。
「フリエナも──って、どこだ?」
気が付くとフリエナは俺たちのそばを離れていた。
一瞬探したが、彼女の姿は<<レーダー>>を使わずとも一瞬で見つかった。
なんと『迷宮』の前にいる長老たちを話していたのである。
「あいつ、何してるんだ?」
俺たちは急いでフリエナの元に駆け寄った。
・・・・
・・
フリエナは一人、長老たちの前に訪れた。
それはあることを宣言するためである。
「どうしたフリエナよ。おぬしが今回の挑戦を見送ることは両親からすでに聞いておる。例の件もあったでの、そのことも踏まえて今回の見送りは妥当な判断じゃ。」
「そうじゃ。また百年後に挑戦すれば良いだけの話。今回はその予習としてしっかりと観察するのじゃ。」
「それに関して話があるの。」
フリエナが言う。
長老たちは不思議そうにフリエナを見つめた。
「なんじゃ?」
「私、今から『迷宮』に挑戦する。」
「「「「???!!!!」」」」
「それは一体、どういう心変わりじゃ?」
「別に、ただ心に少し余裕ができただけ。」
「....わかった。」
フリエナの覚悟に免じ、挑戦を許可する長老。
「トイガよ。」
トイコが玄孫であるトイガを呼ぶ。
すると、五秒も経たず、トイガが姿を現した。
「フリエナについていくのじゃ。」
「お任せを。」
言葉にはしなかったが、トイガをフリエナに付ける理由は一つである。
彼女の身を護れということだ。
トイガもそれは重々承知していた。
「俺たちも行くついていく。」
話がまとまったかと思ったとき、背後から声がした。
そこにいたのは、ユキマルと『タリスマンズ』のメンバーである。
「みんな?!」
驚いたのはフリエナだ。
こっそりと抜け出して、ユキマルたちには内緒で『迷宮』攻略をしようと考えていたのに、簡単にばれてしまったからだ。
「そりゃ、あんな目立つところで話してたらバレバレだろ。」
「うっ....」
詰めが甘かったと自覚するフリエナ。
「気持ちは嬉しいけど、危険な場所よ?!みんなを巻き添えにするわけにいかない!」
「どうした、いつにもまして素直じゃん。」
「ふざけてないで!本当に危険な場所なの!」
「で、その危険な場所に俺たち抜きで行こうとしてるんだろ?」
「....」
黙るフリエナ。
フリエナは心の底では、どこか『タリスマンズ』が一緒についてきてくれると思っていた。
ユキマルほどのお人よしなら、ソルナほどの仲間思いなら、ルフテほどやさしいなら、コラゴンほどお気楽なら、迷わず『迷宮』に入ってくれるだろうと。
「いいか、フリエナ。パーティーメンバーが行くと決めたなら、パーティー全体で行くんだ。これまでも、これからもな。」
「.....っ!」
「そうよフリエナ。」
「そ、そうですよ....フリエナちゃん!」
「まあ、当たり前やな。」
それぞれが相槌を打つ。
どうやら覚悟を決め切れてなかったのは自分だけだと自覚するフリエナ。
「わかった。みんな、私と一緒に『迷宮』を攻略して!」
「ああ、任せろ!」
満面の笑みでうなずくユキマルなのだった。
・・・・
・・
「『迷宮』に入る前に一応確認するわね。」
門を前にフリエナが『迷宮』での注意事項を共有した。
一つ、『迷宮』内にはたくさんの魔物や未知の敵対物がいること。
一つ、試練と呼ばれる課題がランダムな挑戦者に課されること。
一つ、中は入り組んでいて、罠などもあること。
そして──
「24時間以内に『迷宮』を出ないと、百年間閉じ込められるわ。入り口の門が閉じたら終わりだと思って。」
なるほど。
確かに『迷宮』内で餓死するなんて絶対に嫌だ。
そんな面白味もない死に方で人生に幕を下ろしたくない。
「それじゃあみんな気を付けて攻略するぞ!」
俺の言葉を合図に、全員で『迷宮』の門をくぐり、光の中に吸い込まれていくのだった。
・・・・
・・
眩しい光がなくなり、目を覚ますとそこは薄暗い空間だった。
周りの壁は古い遺跡のような石造りでできている。
「みんな、大丈夫か?」
念のため確認する。
「大丈夫やで!」
「問題ないわ!」
コラゴンとフリエナが返事する。
「ソルナとルフテはどうだ?」
........
返事が返ってこない。
「ソルナ?ルフテ?」
もう一度確認したが返事がない。
「あれ?もしかして別々の場所に飛ばされた?」
「.....らしいわね。」
「「「えええええええええええええ」」」
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