本音で語り合うたわいのない会話
第七十二話
「ソルナはユキマルのこと、どう思ってるの?」
フリエナの突拍子のない質問に対して一瞬固まるソルナ。
「どう思ってる......のか?」
「そうよ!ソルナがユキマルのことをどう思ってるか聞いてるの。」
確かに。
私はユキマル君をどう思っているのだろう。
ユキマル君は私にとって何なんだろう。
彼は私を『フレイムドラゴン』から救ってくれた。
魔法の使えない私を仲間に迎えてくれた。
「私にとってユキマル君は....」
では、それ以上の存在なのか?
「......私たちをつなぎ合わせてくれた恩人よ!」
今はまだこの答えしか出せない。
「そうなのね。」
「ええ、そう言えばフリエナには私たちが出会った時のこと、話してなかったわね。」
それからソルナはユキマルとの出会いを鮮明に思い出しつつ、フリエナに語った。
フリエナはそれを静かに聞いているのだった。
「ねぇ、なんでユキマルはそのとき迷わずソルナを助けてくれたんだろう?」
ソルナが一通り話し終わった後、フリエナが言う。
いくらパーティーメンバーとはいえ、出会ってまだ日が浅い少女を『フレイムドラゴン』相手に助けに行くなんて、普通は考えられない。
しかも聞いた話によると、ユキマルはその日の前日に冒険者になったばかりだそうだ。
バカだからという理由で納得できなくもないが、流石になにか別の理由があるのではと考える。
「う~ん、私も何度か考えたんだけどね、正直わからなかった。でも一つだけ答えにつながるかもしれないことを知ってるの。」
「それってなに?」
「よくユキマル君がこだわってる事よ。”冒険”、もしかしたらユキマル君の行動原理はワクワクするかとか、楽しいかとかなんじゃないかしら?」
「なにそればかばかしい!それならバカだからって理由の方がよっぽどましだわ!」
「ふふっ、そうね!」
その通りだと思い、笑うソルナ。
それにつられてフリエナも笑ってしまうのだった。
・・・・
・・
「実はね、フリエナに謝らなきゃいけないことがあるの。」
気が済むまで笑いあったのち、ソルナが話し出した。
「謝る?なにを?」
きょとんとするフリエナ。
ソルナに迷惑を掛けられた記憶はない。
まして謝られることなんて何もないはずだ。
「私が魔法使いを目指してるけど、魔法が使えないことは知ってるでしょ?」
「うん、知ってる。」
この話は何回かソルナ本人から聞いている。
最初聞いたときは、残酷な話だと思った。
この世界において魔法とは完全に才能だ。
生まれたときに、使えるか、使えないかが決まるのである。
そしてソルナは使えない側の人間だった。
後天的に魔法が使えるようになったという話は聞いたことがない。
そして、それは今後もそうだろう。
つまり、持たざる者は、一生持ちえないのである。
そんな中ソルナは、『魔法装身具』という装着者に一部魔法が使えるようにするアクセサリーを探すことにしたそうだ。
それならば誰でも魔法を行使することができるが、そもそも超希少アイテムなため、見つけるのが困難となっている。
話をソルナが謝らないといけないことに戻そう。
「それでどうしたの?」
「実はね、あなたが『タリスマンズ』に入ったとき、ものすごく嫉妬してたの。魔法が使えるだけじゃない、五属性も扱える。まさに私が夢見た魔法使いだった。」
「........」
「でもね、そんな嫉妬すぐに消え去ったわ。元気で素直で実直なフリエナを知っちゃったから。」
「.....ソルナ。」
「だからね、ごめんなさい!出会った当初のあなたに向けてた感情は、決してきれいなものじゃなかったたから。」
「そんな....私は全然気にしてないし!ソルナに何度も助けられた。私もソルナに出会えてよかった!」
「フリエナ....。」
二人の言葉は本音だった。
一切の偽りなく、心の底から出た言葉。
それをくしくも心で感じ取ったのだった。
「そっか、でも私の力は本来喜ぶべきものなんだよね.....。」
自分の軽く握った手を見つめながら呟くフリエナ。
それは『魔法の申し子』である自分に対する言葉だった。
「そうね、フリエナは自分の力は好きじゃないの?」
「....好き嫌いで考えたことはないけど。どちらかと言えばあまり好きじゃない....かな。」
考えてみれば、それは当然の答えだった。
エルフの里からの外出が許されなかったのも、『西方奴隷商』に捕まったのも、多くの人に迷惑をかけたのも、元をたどればこの力が原因だ。
「ソルナの前でこんなことを言うのもなんだけど....ね。」
「フリエナ.....。」
少し表情を暗くしたフリエナのことを心配するソルナ。
「あのね、フリエナは『魔法の申し子』かもしれないけど、それはフリエナの持つ一つの側面でしかないんだよ!私や、ルフテ、コラゴン、ユキマル君、みんなにとってのフリエナは『タリスマンズ』のメンバーだからね!」
「ソルナ.....!」
顔を上げてソルナを見つめるフリエナ。
その顔には少しばかり光が戻ったかのように見えた。
「なんかごめん....ソルナに気を使わせたみたいで.....。」
「違うよフリエナ。」
「え?」
「こういう時はごめんじゃなくて、ありがとうって言うんだ!....ってユキマル君の受け売りだけどね。」
ははっと笑って見せるソルナ。
何気ない、たわいのない会話だったが、フリエナの心は軽くなった気がした。
「ありがとう!ソルナ!」
「どういたしまして!それじゃ、風邪ひくといけないし、中に戻りましょう!」
こうして二人は家に戻り、それぞれ眠りにつくのだった。
・・・・
・・
「みんなおはよう!」
朝食の席で温かく出迎えてくれたのはフリエナの父、フォルゴだ。
妻のカリーンもそうだが、何やら朝からウキウキの様子。
「やけに浮かれてるな。何か良いことでもあったのか?」
「何を言ってるんだユキマル君、今日は『フェアドラド開門式』前日だぞ!今日の深夜0時に『迷宮』の門が百年ぶりに開くんだ。ワクワクしないか?」
「する!」
そうか、今日の夜だったんだな。
絶対に見に行こう。
『フェアドラド』では『迷宮』は信仰対象らしい。
まあ、里を囲うように張られた結界や、オリハルコン製の門、観測できる限り何百万年も前から存在するという事実。
どれもこれも神性を感じるには十分たる内容だ。
ずっと昔からそこに会ったのなら、自然と共存するというエルフ族の信条とも矛盾しない。
まさに完ぺきな信仰対象である。
「しかしワクワクばっかもしてられん、『迷宮』は危険な場所だからな。毎回必ず死傷者が多数出る。」
これもまた事実らしい。
死と隣り合わせの『迷宮』。
それでも毎回多くの挑戦者が現れるのは、『迷宮』で得られるものが多いからだ。
「君も見に行くだけにしとくんだ。」
「......ああ。」
フォルゴの忠告に対して、ぼんやりとうなずくユキマルなのだった。
いいねとブックマークお願いします!
コメントもお待ちしております。




