僕様はバーティーリーダー!
第七十一話
「そこの君、何をジロジロ見ているんだ。」
小柄な貴族らしき男に指を指されるユキマル。
周りを見渡すと、騒動を見物していた人たちはすでに解散していた。
どうやら、俺たちだけ残ったらしい。
「ああ、いや、ごめん。」
とりあえず謝っておく。
確かに知らない人のことをジロジロ見つめるのは良くなかった。
向こうに指摘されるのも無理はないだろう。
「ところでさっきから見てて気になったんだけど、あんたらはどういう関係なんだ?」
突然だが、気になったことを聞くユキマル。
貴族らしい小柄な男に、冒険者の男女三名。
最初は護衛対象と護衛の関係かと思ったが、どうやら同じパーティーに属しているらしい。
それもリーダーは一番弱そうで戦闘経験もなさそうな貴族の男だときた。
異質である。
「なんだ気になるのかい?」
意気揚々と前に出てきたのは、貴族の男だ。
「僕様はナナーリッヒ・カリオストロ。『ミリジョア王国』の貴族階級さ!そして彼らは僕様のパーティーメンバー。リーダーはこの僕様!」
片手を胸に当て、もう片方の手を宙に上げ、自慢げに語る。
どうやら彼の名はナナーリッヒと言い、どこかの国の貴族らしい。
想像通りと言えば想像通りだが、そうなるとなおさら彼が冒険者をやっている理由が気になるところだ。
「俺はユキマル。『タリスマンズ』のリーダーだ。後ろにいるのがパーティーメンバー。よろしくな、ナナーリッヒ・カリオストロ....長いからナナヒカリでいいか?」
名前が長かったので、なんとなくしっくりきた縮め方をする。
決して悪意があるわけではない。
「だーれが七光りだ!!!」
キレッキレのツッコミを入れるナナヒカリ。
瞬間、こいつはいじっていい奴だと理解した。
なんだか大学の後輩を思い出す。
「ったく、...それで?君たちは冒険者らしいが、やはり目的は『迷宮』かな?」
気持ちと話題を切り替えるナナーリッヒ。
「いや俺たちは別にそういうわけじゃない。」
「違うのか。ちなみに僕様たちはここに『迷宮』を攻略しに来た!」
「へぇ」
『迷宮』....か....。
確かに気になりはするな....。
「そういえばさっき聞こえてきたけど、お前たちってダイヤランクなんだな。」
「ああ、そうだ。だが勘違いすんなよ。リーダーは違うからな。」
答えたのは冒険者の一人だ。
彼曰く、後ろの三人はダイヤランクの冒険者なものの、ナナーリッヒはブロンズランクらしい。
それでどうして一番冒険者ランクの低いナナーリッヒがリーダーを務めているのか聞いたところ、面白い返答が返ってきた。
「もともと俺とリコ、フィンズの三人でパーティーを組んでたんだよ。でもこいつの親父の依頼で、今は一緒にパーティーを組んでるわけ。」
そう言ったのは元パーティーリーダーの男ジンだ。
貴族であるナナーリッヒの父親の依頼ということは、国のお偉いさんということだろう。
もしかしたら断れなかったのかもしれない。
なんてことを想像する。
「まあ、細かいことはどうでもいい!大事なのは僕様が冒険者をやっているということだ。」
間に入るように話題を中断させるナナーリッヒ。
「それで?そう言うお前たちの冒険者ランクは何なんだよ?」
ジンが聞く。
「俺達か?」
実は俺たちの冒険者ランクは上がっていた。
『カヒューゼム教国』での一件を評価されたのだ。
街を破壊したり、いろんな被害を出したことから、マイナス評価も多かったが、総じて見ればプラスだった。
その結果、ソルナとルフテはゴールドランクに。
フリエナはシルバーランク。
そして俺は──
「俺はダイヤランクだ。」
「....?!」
これに驚いたのは他でもないジンたちだ。
ダイヤランクとは上から二番目の階級である。
冒険者ギルドに課せられたほとんどの制限が解かれ、様々な立ち入り禁止区域への侵入が許される。
また、Cランクの魔物なら単独で撃破できる者もいるランク帯である。
それをよく知っているジンたちだからこそ、同ランクの人物に会って驚いたのだ。
「あんたで会うのは五人目だ。」
恐らく西側諸国で出会ったダイヤランクの冒険者のことだろう。
「俺たちは初めてだ。」
「...だろうな。」
ダイヤランク冒険者がなぜこれだけ珍しいのか....当然それには理由がある。
答えは単純で、ダイヤランク級の冒険者ともなると東の方へと行ってしまうからだ。
この世界では西から東にかけて魔物の強さや、環境の危険度、冒険の難易度が上がっていく。
その分、得られる利益なども変わってくるため、実力がある者は大陸東側に流れてしまうのだ。
と少し前にソルナから説明を受けた。
「じゃあ『迷宮』攻略頑張れよな!」
こうして俺たちは別れたのだった。
・・・・
・・
その日もまたフリエナの実家に泊めてもらった。
フリエナの母であるカリーンが作った夕飯はいつも通り絶品で、皿はすぐに綺麗になった。
その後俺たちは、それぞれの部屋に戻り、休息をとるのだった。
──かと思いきや、フリエナの部屋にノック音が響き渡る。
「ちょっといい?」
それはソルナの声だった。
ドアを開けると、彼女はコートを着て立っていた。
「どうしたの?」
「ちょっと庭に出て話さない?」
ソルナが言う。
日はすでに落ちており、そこそこ冷えている。
正直この時間に外出に誘われるとは思っていなかった。
ソルナの誘いに少し疑問を抱くも、フリエナは外に出る支度をするのだった。
とはいっても、上着を一枚羽織るだけだ。
庭は玄関を出てすぐなので、服装を全部変える意味もないだろう。
・・・・
・・
庭に出ると、ソルナは芝生に腰を下ろした。
街灯もない自然に溢れた里で、一見真っ暗かのように思えたが、幸い今日は満月で手元に灯りは必要なかった。
それに満月でなくとも、満点の星空が地上を照らしてくれていただろう。
都会では見れない、大空の神秘である。
「それで、話って...?」
おそるおそるフリエナが聞く。
今まで二人で真剣な話をすることなんてなかった。
一緒に行動することはあっても、それとこれとでは意味が変わってくる。
だから、今回ソルナがこの場を設けたことにはそれなりの意味があるはずだ。
しかし、返ってきた返答は拍子抜けだった。
「別に?ただ、たわいのない会話がしたかっただけ。強いて言うならフリエナが何か思いつめてるようだったから、少しでもこれで気が楽になったらなーって。」
「たわいのない....会話.....。」
「そう!」
ソルナがにっと笑う。
「それじゃあ私からね。フリエナはコラゴンについてどう思う?」
「え?どうしてコラゴンの話になるのよ!」
「えっと、なんとなく気にならない?」
「.....たしかに。」
軽くコラゴンのことについて振り返ったのち、言われてみればとうなずくフリエナ。
始めは衝撃を受けたが、フリエナが『タリスマンズ』に入った当初からいたので、実はとくに気にしたことがなかった。
フリエナのコラゴンに対する印象は、日ごろから中二病発言を連発している珍獣である。
「そういえば、なんでコラゴンの鱗って白いんだっけ?」
顎に指を添えて考える。
しかし、答えは浮かばない。
普通の『コモンドラゴン』であれば、色は紫か紺だ。
それの上位種である属性を得たドラゴンは赤、青、緑、黄、茶、水色のどれかになるはずである。
白いドラゴンなんて存在しないのだ。
「本人が言うには、コラゴンの正体は『古代白律龍』らしいわ。」
『古代白律龍』とは童話や伝承に登場する伝説上の生物だ。
その逸話や神性から一部の地域では神として崇められていたりもする。
「嘘くさいわね。」
「う~ん。でも伝承とかと照らし合わせると合致してる点が多いのよね。」
「いやいや、あんな弱っちいドラゴンが伝説の龍なわけないでしょ!」
と本人のいないところでディスられるコラゴンだった。
「ちなみにこれも本人から聞いた話なんだけど、コラゴンって首に鎖と南京錠を巻いてるじゃない?あれが力を封印しているらしいわ。」
「へぇ~。やけに細かく設定を作りこんでるのね。」
コラゴンの発言を一切信じないフリエナ。
「そもそもどうやってコラゴンは仲間になったの?」
そういえば、コラゴンが加入したときの話は聞いたことなかったなと思い返すフリエナ。
「実はユキマル君が見つけてきたのよね、傷ついたコラゴンを。」
「そうだったの?」
「うん。でも納得するでしょ?」
「うっ....確かにユキマルならやりそう....。」
変なところで共感してしまったフリエナである。
「それじゃあ次は....ルフテについて!」
次もまたパーティーメンバーのことを聞くソルナ。
「ルフテ?ルフテは私の大事な後輩よ!」
ふん!っと誇らしげに言うフリエナ。
後輩と呼ぶにはルフテの方が年上だが、『タリスマンズ』に入った順でいうと間違ってはいない。
「ルフテの弓は一級品だけど、時々危なっかしいことをしだすから私が守ってあげないとね!」
「そんな風に思ってたのね...。」
意外な返答に驚くソルナ。
しかし、同時に微笑ましいとも思った。
フリエナがルフテに対してそう思っているように、ソルナもフリエナのことを妹のように思っている。
種族は違う、血もつながっていない、実はフリエナのことをあまり知らないのかもしれない。
でも、そんなのはどうだっていいのだ。
ソルナとフリエナをつないでいるのはこれまでの”冒険”そしてその根幹にあるのは──
「ねえソルナ、今度は私から質問ね!」
「なに?」
「ソルナはユキマルのこと、どう思ってるの?」
いいねとブックマークお願いします!
コメントもお待ちしております。




