表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第六章 迷宮編
69/77

エルフの里最強の男

第六十九話

 フリエナのピンチにいち早く気づいたのは、トイガであった。

暗くなる前に里の見回りに行って、門がある城壁の前に戻ってきたのだった。

そこに慌てた商人が走ってきた。


「た、大変だ....!」


「どうした?」


落ち着いた対応をするトイガ。

しかし、商人から聞かされた内容に激昂する。


「貴様!フリエナ様をおとりにしたのか....?!」


「ち、違います、フリエナ様が助けてくださったんです....!」


「違くはないだろう!.....ッチ。」


こいつには構っていられないと思いなおすトイガ。

ここで口論しているうちにフリエナは必死に戦っているのかもしれないのだ。

一秒も無駄にできないと思い、全速力で門の外に向かう。

案の定、フリエナは最大のピンチにさらされていた。

門とフリエナの間を遮るようにドラゴンが陣取っていたのである。


「どけ!!邪魔だ!!!」


思いっきり飛び上がり、上からドラゴンの頭部に拳をねじ込むトイガ。


ドドドオオオオオ!!!!


そのままドラゴンは地面に叩きつけられ気絶した。

一撃である。


「なっ!」


これに驚いたのは他でもない、上空で待機していたザグスだった。


嘘だろ?Cランクの魔物だぞ?

一人で、しかも一撃で倒すなんて、強すぎだろ....!


ザグスが困惑するのに無理はなかった。

Cランクの魔物ともなると、『布教者(ミジョナリーズ)』ほどの実力がないと単独での撃破は不可能だ。

しかしトイガは、撃破どころか瞬殺してしまったのである。


「ッチ.......!!!」


相手に余裕を与えないため、次のドラゴンを送る。

しかし今回は直接の戦闘を避けるため、ヒット&アウェイの嫌がらせで留めておくように指示する。

これは『コモンドラゴン』ではこの男に勝てないとザグスが判断したからだ。

そしてこれが功を奏し、嫌がらせに苦戦するトイガ。

トイガは対空手段を持ち合わせていなかった。


「ッチ、まだいたのか!」


まさかの二体目のドラゴン襲来に驚くトイガ。

この地域では通常ドラゴンは観測されない。

理由は里に張られた結界だろう。

だから、この二体のドラゴンは異常だった。

まるで何者かの意思が介入しているようだ。

何か裏を感じるが、悠長に考察ができる程余裕があるわけではない。


「フリエナ様!早く結界の中に!!!」


「わ、わかってる!」


トイガが囮となっているうちに、なんとか門へと走るフリエナ。

そしてあと少しのところまで来た時だった。

トイガを狙っていたドラゴンが急に標的をフリエナに変更したのである。

もちろんこれはザグスの指示だった。

トイガ、フリエナ、ともに油断していた。

しかし、流石は『エルフ族衛兵隊(ガーディアン)』兵長トイガである。

持ち前の反射神経で即座に対応し、ドラゴンをはじいて見せたのだ。


「今ですフリエナ様!」


「うん──」


バッ


しかし、その上をいったのがザグスである。

なんと自身が騎乗していたドラゴンで下降し、フリエナを捕まえたのだった。


「獲物が自分から出てきてラッキーだぜ!俺はなんか知らねぇけど里に入れないからな。」


ザグスは結界に敵意を感知され、里の中に入れないでいた。

そして、当人は結界のことを知らなかった。

そこでエルフの商人をとっ捕まえて、いろいろと情報を吐かせようとしたのである。

すると幸運なことに、目的の獲物がのこのことやってきたのだ。

全ては偶然の産物だが、運命の女神はザグスに微笑んだのであった。


「待て!降りてこい!フリエナ様を放せ!!!!」


既に上空まで飛び立ってしまったザグスに、対抗する術を持ち合わせていないトイガ。

ただ、地上から声を上げることしかできないのである。


そしてザグスのドラゴンは飛び去って行った。


「ふざけるな.......!ふざけるなぁぁぁぁぁぁl!!!!」


トイガは自身を責めた。

責めて責めて責めまくった。

しかし、フリエナが(さら)われてしまったという事実は変わらない。


「俺はなんて....無力なんだ...。苦しんでいる少女一人救えない...。」


思いっきり地面を殴る。

気持ちは冷めない。

もう一度殴る。

それでも、変わらない。


「クソクソクソクソォォォォ!!!!」


トイガは残酷なまでに美しい星空に向かって雄たけびを上げるのだった。


・・・・

・・


「何をしとるんじゃ貴様は....!!!」


トイガは、四人の長老たちの前に立たされていた。

長老たちはトイガを責め立てているのである。

理由は敵にみすみす時期族長を誘拐されてしまったからだ。


「お前が守れなかったら、誰があの子を守るのじゃ!貴様には失望した!」


四人の中で最年少の長老であるバーグマンが言う。

族長が空席の今、エルフたちの(まつりごと)は全てこの四人の長老たちによって決められていた。

最年少のバーグマンから始まりリリアン、べネロぺ、トイコだ。

その中でトイコはトイガの高祖母に当たる。

そんなトイコにバーグマンは話を振った。


「貴様の玄孫(やしゃご)じゃろ?きつく叱っといてくれ。」


「バーグマンよ。トイガだって全力だったのじゃ。そう責め立てるでない。それに、一番失態を痛感しているのは本人じゃろうて....。」


トイガの目を見るトイコ。

玄孫(やしゃご)の顔は遺憾(いかん)に溢れていた。


「......トイガよ....。」


「....はい。」


「あまり気負うな。」


「......はい。」


これはトイコからのせめてもの(なぐさ)めであった。

しかし、それが届くはずもない。

トイガの心は、自分への怒りとヒト族への恨みが支配していたのだから。


結局トイガは許された。

しかし、この出来事は里の中でしばらく注目の話題となる。

トイガへの『エルフ族親衛隊(ガーディアン)』最強の男という称号は、(かすみ)かけていた。

しかし、トイコの計らいやトイガの実力で、しばらくして信頼を取り戻したのだった。


・・・・・・

・・・・

・・


「そんなことが.....。」


ソルナは驚きのあまり口を押えた。

ルフテもコラゴンもそうだ。

全員、フリエナとトイガの話になんと言えばいいかわからなくなってしまったのである。


「結局なんでトイガは俺にちょっかいを出してくるんだ?」


「そこ....!?」


俺の発言に対して思わずツッコミを入れるソルナ。

確かに俺は空気の読めないことを言っているのかもしれない。

でも気になってしまったのだ。

仕方ないだろう。


「ふむ....まず一つはヒト族への不信感じゃな。偏見はだいぶ払拭されたようじゃが、それでもまだ思うところがあるのだろう。」


なるほど。

でもそれだと、里にいる多くのヒト族やソルナ、ルフテも対象のはずだ。

でも実際は俺だけに敵意を向けているように感じる。


「もう一つはおぬしへの()()じゃな。」


「嫉妬.....?」


長老は俺の疑問に答えてくれた。

しかし、嫉妬と言われてもイマイチ、ピンとこない。


「理不尽なことを言うかもしれんが、どうかトイガを許してやってはくれぬか?あいつはあいつなりに苦労したのじゃ。」


「まあ、俺は別に構わない。」


人から嫌われるのはあまりいい気分じゃないが、別に何かされたわけでもないのだ。

俺はトイガと和解する道を探そうと思った。


・・・・

・・


「ところで、話に出てきた『フェアドラド開門式』って何なんだ?」


話題は一転して、式典の話になる。


「『フェアドラド開門式』とは『迷宮』が開くことを祝う式典じゃ。」


「あの百年に一度開くとか言われてる門か。さっき見に行ったけど、あれはすごいな。」


「ほっほっほ。あれはオリハルコンでできておる。世界でここにしかないものじゃ。」


長老、元いいトイコが誇らしげに言う。

あの門はソルナの予想通りオリハルコン製だった。


「おぬしも気づいておるかもしれんが、『迷宮』に挑戦するために、いろんな国から人が集まって来とる。」


なるほど。

だから、いろんな種族がエルフの里にいたのか。


「『迷宮』って誰でも入れるのか?」


「入れる。ただし命の保証はできない。」


「い、命ですか....?!」


ルフテが命という単語に(おのの)く。


「『迷宮』の中は危険に満ち溢れとる。『迷宮』内にしか存在せぬ魔物やトラップの数々、そして何と言っても試練じゃ。」


「試練.....?」


「ああ、『迷宮』は挑戦者に気まぐれに試練を課す。」


「その内容は何なんですか?」


ソルナが聞く。


「わからぬ。人によって違うのじゃ。かくいう私は一度も『迷宮』に入ったことがないからの。人づてに聞いたことしか教えられん。」


なるほど。

とにかく『迷宮』が超危険な場所であることは理解した。

しかし、そうなると気になることがある。


「なんで挑戦者はわざわざ危険を(おか)してまで『迷宮』に入るんだ?さっき言った話じゃわざわざ他国からくる奴もいるんだろ?」


「それは、『迷宮』の試練の先には()()があるからじゃ。」


「答え?」


「それもまた人によって違う。ある者は金銀財宝を持ち帰った。あるものは手ぶらだが、満足げな顔で帰還した。」


「すごいな....。」


でも話を聞く限り、試練を受けられる奴はランダムで決められる。

ということは必ずしも何かを得れるわけではない。

それでも挑戦者が後を絶たないのは、それだけ答えとやらに価値があるということだ。


「おっと大事なことを言い忘れてたわい。」


「なんだ?」


「『迷宮』はたった一日しか開かない。」


は?

それってつまり──


「二十四時間以内に戻らなければ、百年間幽閉されるということじゃ。」


「まじか。」

いいねとブックマークお願いします!

コメントもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ