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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第六章 迷宮編
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ユキマル対トイガ

第六十六話

 どうしてこうなった?

俺はちょっとしたステージのような場所でトイガと向かい合っていた。

トイガの方はというと、両腕に包帯のようなものを巻いている。

プロボクサーとかが身に着けているやつだ。

がっつりやる気だ。

それはもう、すさまじほどに。


俺が握手のつもりで差し出した手は、エルフ族の間では決闘の申し込みの合図だったらしい。

いやそういうのは普通手袋とかだろう、とツッコミたかったが、文化は文化だ。

部外者の俺が口を出せることじゃない。

しかしこれだけは言いたい。

もう少し、慈悲があってもいいんじゃないかな....?

知らなかったのだ。

それなのに弁明しようとも、俺の決闘申し出が取り消されることはなかった。

それが現在の状況への説明だ。


ということで俺はトイガと戦うことになった。

周りには野次馬がいる。

もちろん『タリスマンズ』のメンバーもだ。

いろんな人たちが物珍しそうに俺たちの決闘を見ている。

しかし、その大半を占めているのはエルフの衛兵たちだ。

その理由は彼らの話声を聞いていたら解明した。


「おいおい、兵長のトイガさんが決闘だってよ....!!」


「ああ、ついにあの『エルフ族衛兵隊(ガーディアン)』最強の男の戦いが見れる!!」


「俺実は初めて見るんだ!」


などと騒ぎ立てているのだ。


なるほど、衛兵の兵長だったのか。

しかも最強と来たか。

トイガってやっぱ強かったんだな...。


「随分と期待されてんだな。」


「当たり前だ。俺にはこの里を守る責任がある。」


「ところでなんで()()なんだ?」


俺は地面を指さした。

別にステージに問題があるわけではない。

木の板がきれいに敷き詰められていて、足踏みがしやすい。

十平方メートルほどと少し狭いが、別にちょっとした戦いには問題なかった。

ちなみにステージは地面から1メートルほどの高さに設置されており、観客が見やすいようになっている。

このようにステージはかなりいい感じだ。

問題はそのロケーションだった。

間違えて決闘を申し込んでしまったあと、俺はトイガに案内されるがまま城壁の外へと出た。

そう、わざわざ里を出たのだ。

ユキマルにはその必要性が理解できなかった。


「この里には結界が張ってある。その結界の影響で、里内で暴力行為はできない。わかったならさっさと始めるぞ。」


結界か....。

確かに城壁を通るとき、少し違和感があった。

その正体が結界だったとは。


「わかった。それでルールは?」


「ルールはシンプル。相手が降参するか、相手をステージ外に出すかだ。武器、『スキル』、どんな小細工でも好きに使え。俺は拳だけで相手してやる。」


クイックイッと手で挑発するトイガ。

それは余裕の表れであった。


「さあ、お前の願望を言え!」


「願望....?」


「そうだ。これは決闘だ。勝者が敗者から何か奪う権利を獲得する。常識だろう?」


当たり前のことのように話すが、当然のようにそんなことは知らないユキマル。

それもそのはず。

この状況、どう考えてもトイガは不親切であった。


「そうだな....じゃあ、俺が勝ったらちょっかいだしてくんのやめろ。」


俺の切実な願いである。

エルフの里まできて、無駄な争いなどしたくない。

何度も言うが、俺はトイガを悪い奴だとは思っていない。

ザグスやバニティーのような本当のクズを相手してきたからわかるのだ。

だからこそ、変な隔たりを作りたくはない。


「いいだろう。ならば俺が勝ったら、貴様はもう二度とフリエナ様に近づくな。わかったな?」


「.....っ!?」


マジか。

なにがこうもこいつの琴線に触れているのだろうか。


「ちょっと待てよ。そんなのありか?」


「これは決闘だ何も問題ない。何よりこれは貴様が持ち掛けた決闘だろう。」


「うぐ....。」


少し反論したい点はあるが、事実であることも確かだ。


「それに、貴様が勝てば何も問題ないだろう?」


確かに。

相手の要求で少し動揺してしまったが、結局は勝てばいいのだ。

ならばと覚悟を決め、トイガに向かいなおす。


「準備はいいな?」


トイガも構えにはいった。

全身から見たことのないオレンジ色のオーラが噴き出す。

それは『闘気』であった。

トイガの職業(ジョブ)は拳士である。

拳士とはその名の通り拳で戦う者のことだ。

トイガは『闘気』を使いこなしていた。

その証拠に、トイガの『闘気』は綺麗な発色をしたオレンジだ。

『闘気』の洗練度合いはオーラの色で確認できる。

発色がいいほど洗練されているのだ。


「なんだ....それ....。」


一方ユキマルはトイガが何をしているのか理解できなかった。

実はこの世界にきて初めて『闘気』を見たのである。

いや、完璧な『闘気』と言った方が正しい。

しかし、今は相手に解説を求めるわけにはいかない。

なぜなら、決闘は今.....始まったのだから。


「いけー!トイガさん!!!」


「すげぇ、あんな鮮やかな『闘気』初めて見た....。」


「相手の男、終わったな。」


などと意見を口にする野次。

しかし、そんなことは気にしていられない。

まずは目の前に集中だ。


シュッ!!!


素早いジャブがとんでくる。

初速と加速が恐ろしいほど早いが、ユキマルの<<反射速度上昇(超)>> と<<動体視力上昇(超)>>の前では大したことはない。

体をひねり、最小限の動きで躱す。

しかし、これはほんの挨拶代わりだ。

間髪を入れず、次のジャブがとんできた。

それを躱すが、また次の拳がとんでくる。

ジャブ、ストレート、ジャブ、ジャブ、フック、ストレートと一方的な攻勢だ。

難なく回避するユキマルだが、あることに気づく。


まさか、速くなってるのか....?


通常であれば、パンチを重ねるごとに疲労で動きは鈍るはずだ。

しかし、トイガは違った。

むしろその速度を上げ続けているのである。

そこで一旦相手のペースを崩すべく距離をとる。


「ッチ、躱すか....。」


不機嫌そうなのはトイガだ。

恐らくは早々に決着をつけて、俺の出鼻をくじくつもりだったのだろう。

しかし、思いのほか見切られて、面白くないのだ。


「す、すげーーーー!!」


「トイガさんの連撃、見えなかった!」


トイガの心情も知らず騒いでいるのは、トイガの部下である衛兵たちだ。

尊敬する兵長の実力が見れて感動しているのだ。

しかし、中にはこういう意見も上がった。


「いやいや、対戦相手の男は何でその連撃を避けれるんだよ...!」


確かにとざわめく観衆。

交戦中は素早い連撃に目がいったが、いざ結果を見てみれば両者無傷。

そして、トイガの凄さを知る衛兵たちからすれば、互角に渡り合っているユキマルは何者なんだ、という話だ。


「速いな....。」


思わず口からこぼしてしまうユキマル。

その発言を聞いて満足げなのはトイガだ。


「でも──」

 

しかし、その表情も次の一言で一変することとなる。


ルクス(あいつ)ほどじゃない。」


「....なに.....?」


少しイラっとするトイガ。

トイガは自身の拳がエルフの里最速最強であることを自負していた。

そして、その実力はエルフの里にはとどまらないとも。

決して慢心などではない。

これまで積み上げてきた努力と鍛錬と実績がそれを証明しているのだ。

しかし、ユキマルはその上をいく存在をほのめかした。

その正体が『刹那の勇者』ルクス・セラリタスであることを知っていたら、納得もできたであろう。

しかし、ユキマルにそんな知り合いがいるとは、夢にも思っていないトイガである。

フリエナが家族会議の際語った内容で、ルクスのことだけは伏せられていた。

理由は、ルクス自身が広めないでほしいと言ったからである。

だから、トイガはユキマルたちとルクスのつながりを知らない。

結果、先ほどのユキマルの発言は、ただの煽りとして処理された。


「そこまで言うのなら、()()を見せてやる...!」


トイガは本気を出すことを決めたのだった。

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