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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第六章 迷宮編
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式典

第六十五話

 俺は今、長いテーブル席に座ってる。

左にはソルナとルフテ。

対面にはフリエナと母親のカリーン、トイガ。

お誕生日席には父親であるフォルゴが座っている。

数名の侍女がその背後に控えているが、あまり気にしなくていいだろう。

問題はフリエナの両親の目が俺に向けられていることだ。


「それでは話を聞かせてくれるかね?」


フォルゴが若々しい見た目からは想像できないほど厳格な声で言う。

どうやら二人からはあまりよく思われていないらしい。

なぜこうなったのか。

それは先ほどのことだった。


・・・・

・・


フリエナが無事家族との再会を果たし、ユキマルも空気を読んで一度家族三人だけにしてあげようとした時だった。

あの監視塔にいた男、トイガが余計なことをぬかしやがったのである。


「こいつです!この男がフリエナ様をたぶらかしたんです!!」


「は?」


思わず動揺を声に出してしまった。

この状況でまさか自分が責められるとは思ってもいなかった。

どうやら、トイガにとって俺は気に食わない存在らしい。

まあ動機はともかく、こうして俺は他人の家庭内裁判にかけられることとなったのである。


・・・・

・・


「えっと、まずどこから話すべきなんだ....?」


振り返ってみると、そこそこ長い道のりだった。

西方奴隷商(スカーナル)』のアジトでフリエナを解放して、フリエナを(さら)わせた黒幕のバニティーと『魔王狂信派』を退けた。

その間にも『アクアンティス』での戦争や、『英傑団』とのいざこざに巻き込まれたりもした。

一言二言で片付けられるような冒険ではない。


「私から話す。」


そう言うとフリエナは、これまでの冒険をありのまま話した。


「......そう。」


母のカリーンはしばらく考え込んだのち、軽くうなずいた。

どうやら、気持ちの整理がついたようだ。


「ごめんなさいね、どうやら誤解していたみたい。」


そう言うと俺たちに深く頭を下げた。


「別に構わない。そっちの気持ちもわかるしな。」


どうやら誤解は解けたようだ。

彼女の表情も警戒から感謝に変わっている。

それに対して、納得がいっていないのはトイガだ。

しかし、それを口に出すほどでの馬鹿でもないらしい。

少しばかりの不満を顔に出しつつ、場の空気を優先するトイガであった。


「まて、まだ俺は認めてないぞ!」


終わりかけた裁判を続行させる者がまだ一人。

それはフリエナの父であるフォルゴだった。


「ちょっとフォルゴったら...。」


カリーンが夫をなだめる。


「いや、これだけははっきりさせておきたい!」


カリーンの制止も空しく席を立ちあがり、びしっと人差し指を突き出すフォルゴ。

その指先は真っすぐとユキマルをとらえていた。


「な、なんだ?」


思わず気圧されるユキマル。


「うちの娘とはどういった関係なのかね?」


「????」


大量の疑問符が思考を飛び交う。

ユキマルだけではない。

ソルナにルフテ、フリエナ、リュックの中にいるコラゴンでさえ困惑を抑えられなかった。


「えっと....」


ちらっとフリエナの方を見る。

彼女と視線が合い、互いに軽くうなずく。


「俺たちはただのパーティーで、それ以上でもそれ以下でもないぜ....?」


「ほう....」


目を細め(いぶか)し気にユキマルを(にら)むフォルゴ。


「それに第一、フリエナとは5歳ぐらい年齢が離れてるんだ。30歳と25歳とかならまだしも、フリエナぐらいの年齢の娘と俺が付き合ってたら、ちょっときついだろ。」


「何を言っている。娘はすでに成人しているし、我々エルフにとって年齢はさほど問題ではない。どのみち先に死ぬのは君だろう。」


そうなの???


どうやら俺はまだ自分が異世界という違う文化圏にいることを理解できていなかったらしい。

まあ、このことの捉えようはいくつかあるのだろうが、俺は自分の考えを貫こうと思ったのだった。


「だとしても、別になんもないから心配すんな!」


この後しばらく不信がるフォルゴだったが、フリエナとカリーンの説得によってどうやら誤解は解けたようだ。

一日に二回も冤罪を掛けられたとんでもない日だ。

それでも、かくして他人の家の家庭内裁判は幕を閉じたのだった。


・・・・

・・


日付が変わった。

『フェアドラド』で迎える初めての朝日が清々しい起床をプレゼントしてくれた。


「おはよう。」


あの長机があるリビングで早起きのフリエナに挨拶をする。

結局、『フェアドラド』に滞在している間は、フリエナの家に泊めてもらうこととなった。


「ユキマルったら!もう朝ごはんの準備はできてるわよ!」


フリエナに言われて卓上に目を向ける。

そこには朝とは思えないほどのご馳走が並んでいた。


「おお、てかみんな揃ってたのか。悪い!」


自分が一番最後に起床したのだと悟り、申し訳なくなるユキマル。

急いで席に座り、食事を始めたのだった。


「それにしても悪かったな、泊めてもらって。家族で積もる話もあっただろうに...。」


「いえいえ、娘を救ったお方を追い出すわけにもいきませんよ。」


カリーンが言う。


「そうか、それならよかった。」


「ですので当分の間の寝床の心配はしなくて大丈夫ですよ。」


「当分...?そんな長居するつもりはないぞ。」


これに対して驚いたのはフリエナの両親だった。


「まさか式典を見ていかないのかね......?」


「式典....そういえばそんなのがあったな。」


フォルゴの発言で、ソルナが言っていたことを思い出す。

確か、百年に一度の式典がもうすぐ行われるとかなんとか....。


「百年という年月は我々エルフ族にとっても長い期間だ。人族である君たちならなおさら見ていくべきだろう。」


「それもそうだな。」


別に先を急いでいるわけではない。

ルクスと約束した武闘大会が開かれるのもまだしばらく先の話だ。

ならばその式典とやらを見ていくのもやぶさかではないだろう。


「それで言うとフリエナ。()()()()()は族長に申し立てて、延期してもらうこととなった。」


フォルゴがフリエナに言う。

それを聞いたフリエナの、朝ご飯を食べる手は止まった。


「......」


返事はない。

昨日からうっすら気づいてはいたが、やはり何か思い悩んでいるのだろうか。

しかし、朝食の時間はそのまま何事もなく終わるのだった。


・・・・

・・


朝食後、フリエナを除いた俺たち三人と一匹はフォルゴの提案で里を観光してくることとなった。

エルフの里は都会とも田舎とも言い難い風貌をしていた。

その理由は、里が自然と調和しているからだと思われる。

自然が豊か、それなのに人口は多く、建物も多い。

全くもって不思議である。

まるで別の世界に迷い込んでしまったかのようだ。

いや、異世界に召喚されたんだけどね。


「それにしても空気がおいしいわね。」


大きく息を吸ったソルナが言う。

確かに、今まで旅してきたどの国よりも透き通っている。


「ところで、朝話題になった式典ってなんなんだ?」


「式典っていうのは、とあることを祝うお祭りなのよ。」


「へえ、それが百年に一度行われるんだな。そして、そのとあることって?」


「迷宮が開くらしいわ。」


「迷宮....?」


迷宮といえば、よくゲームなどで出てくるステージや迷路を思い浮かべる。

深く入り組んだ構造をしていて、一度入ったら抜け出すのが難しい。

そのかわり、ゴールには金銀財宝が眠っている。

来る者拒まずの宝島だ。


「み、みてくださいあの人だかり!」


開けた場所に着くと、そこには多くの人に囲われた巨大な門があった。

数メートル隆起した丘の側面に、きらきらと輝く金属製の門がついてるのだ。


「あれか....。」


「らしい....わね。」


「です...ね。」


「やな....。」


その息を飲むような外観に、俺含め全員が圧倒される。

使われている材質は鉄だろうか。

いや、時々金色にも見えるし、光の当たり方や見る角度によっては白銀にも虹色にも見える。


「オリハルコン.....ね。」


その疑問に答えたのはソルナだった。


「オリハルコン?」


確か、冒険者の階級付けに使われていた名称だ。


「オリハルコンは世界で最も希少かつ、最高の硬度を誇る鉱石よ。その分加工がしにくくて、オリハルコンを使った物なんてこの世にほとんど存在しない。それなのに....。」


今一度門を見上げるソルナ。


「どうやってこんなものを作ったのかしら....。」


その疑問はもっともであった。

実際、人類にはここまでオリハルコンを加工する技術はおろか、見つけ出すことすらできていない。

つまり、ここにたたずむ巨大な門は、人類史における謎なのである。


「そ、そんな高価なもの....わ、悪い人たちに盗まれるんじゃ....。」


確かに、何て思っていたら、ちょうどそういう奴らが現れた。

二人組の男だ。

見た目から推測して、盗賊といったところだろうか。

二人は周りにいる人だかりを押しのけると、門までたどり着いた。


「はっはっは、見張りすらおかないなんて馬鹿な奴らだぜ。おかげで、盗み放題じゃないか!」


一人はそう言うと、背負っていた荷物からつるはしを取り出した。


「こりゃ遊んで暮らせるぜ!」


もう片方も相槌を入れる。

実際オリハルコンであればコメ粒ほどの欠片でも、一生遊んで暮らせる金額になるだろう。

それを理解しているからこその愚行なのである。


「ユキマル君、止めなくていいの?」


なぜか俺に言うソルナ。

俺としてもあの美しい門が破壊されるのは嫌だが、恐らくは大丈夫だろうと思われた。


「あっちを見てみろよ。」


そう言ってソルナに俺の視線を追わせる。


「そういうことね...。」


どうやらソルナも理解したみたいだ。


「ど、どういうことですか?」


ルフテが聞く。


「あそこにここの住民らしきエルフたちがいるだろ?」


と、人だかりにいるエルフたちを指さす。

そのエルフたちはなんと笑っていた。

ただ、笑っているのではない、盗賊たちをあざ笑っているのだ。


「ど、どうして笑っているのでしょう?」


「そりゃ──」


一方盗賊たちはついに門の破壊に取り掛かろうとしていた。

つるはしを思いっきり振り上げ.......振り下ろす。


ガキン!


鋭い金属音がするも、門は無傷だ。

しかし、二人に焦っている様子はない。


「まあ、ここまでは想定通りだ。」


そう言うと、盗賊は再びつるはしを構えなおした。


「この日のために俺は、この『スキル』を覚えたんだ!くらえ、<<インパクト>>!!!」


それは衝撃を与えたと同時に、爆発に似た別の衝撃を起こす『スキル』。


「どうだ!」


つるはしを振った方の盗賊が意気揚々と尋ねる。

しかし──


「む、無傷だ....。」


もう一人の方が確認したことによって、うろたえるのだった。


「く、くそ!もう一回だ!」


そうして何度も試す盗賊たちだったが、ものの数分で意味がないことを悟ったのだった。


「まあ、そう言うことだよな。」


俺はあざ笑っていたエルフたちが、今度は爆笑してるのを横目に、オリハルコンの固さを実感した。


「盗賊だ、捕まえろ!」


悠長に構えていた盗賊たちだが、ここでエルフたちの衛兵が登場する。

やべ、逃げろ!と言い逃走を試みるも、あっけなく捕まってしまうのだった。


「これだから人族は...。」


そんな差別的発言をしたのはまさかのトイガだった。

お互いに目が合い、しばらく沈黙する。


「.....っ!貴様は、フリエナ様をたぶらかした痴れ者...!」


などと言ってるが、それは事実無根である。


「おいおい、なんでそんな攻撃的なんだよ?」


「貴様の知るところではない!」


理不尽な。

こちらとしては嫌われている理由すら知らないのだ。

俺の記憶が正しければ、こいつは出会った当時から俺を嫌っている。

気づいてないだけで、俺が何かしてしまったのだろうか?


「なあ、お前が悪い奴じゃないのは知ってる。だから仲良くしようぜ。」


そう言って手を差し出す。

握手のつもりだ。

仲直りする時はいつもこうする。

だから、今回もそれで関係の改善を試みたのだ。

しかし、事態は思わぬ方向に進んだ。


「あ、ユキマル君それは──」


「ほう....。」


ずっとしかめていた顔が少しほどけるトイガ。

その時点で、いやな予感はしていた。

加えて何かを言いかけていたソルナ。

しかし、それをトイガが(さえぎ)る。


「いいだろう、決闘を受けてやる!」


トイガは二ヤリと笑うと、そう高々と宣言したのだった。

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