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駆け出し冒険者の俺は裏レベル100  作者: 可じゃん
第六章 迷宮編
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帰宅

第六十四話

 エルフの里、『フェアドラド』は『フェアドラド大森林』の中に位置する、里と呼ぶには少々広大なエルフたちの住処である。

その歴史は古く、『ガドリア帝国』、『竜王国』と並んで世界三大古都として知られるほどだ。

そして、この『フェアドラド』には古くから伝わるとある式典がある。

その式典は百年に一度開かれる特別な(もよお)しなのだが、今年がちょうどその開催年なのであった。

そんなことも知らずにユキマルたち一行はフリエナを故郷に送り届けるため『フェアドラド』へと向かっていた。


「お、なんかでかい城壁が見えてきたな!」


「ええ、あれが『フェアドラド』ね!」


どこまでも続きそうな草原の地平線から、それらしきものが顔をのぞかせる。

これはこの世界にきて気づいたことなのだが、どの国も首都は大きな外壁で囲って土地を守っている。

最初はあまり気にしなかったが、よくよく考えたら、これも魔族との争いの遺物なのだろう。

いや、遺物という表現はふさわしくないのかもしれない。

実際それはまだ魔族の襲撃を防ぐ役割を担っているのであって、ただそこにあるだけではないからだ。


とまあそんなことを考えていたら、いよいよ城壁の大きさが体感できる距離までやってきた。

城壁には当然、門があり、その両脇に監視塔がある。

のこのこと近づくユキマルたちだったが、実は監視塔の上ではそれどころではなった。


「緊急事態だ!!!」


「トイガさんを呼べぇ!!!」


などと、騒がしかったのである。

彼らの言う緊急事態とはなんなのか。

その答えは、ユキマル自身が身をもって味わうこととなる。


「全員、俺の後ろに下がってろ!」


急速な接近反応にいち早く気づいたユキマルが、仲間の安全を確保する。


ドッ!


突如として、監視塔の上から男が跳んできた。

その男の拳を片手で受け止めるユキマル。


こいつ...ラスやバニティーよりもはるかに強い...。


そんなことを思ったのもつかの間、次はその男の蹴りがさく裂した。


ドオオ!!!


しかし、それすらも余裕で受け止めるユキマル。


「なにっ...?!」


謎の男は動揺が隠せなかった。

まさか自分の本気の蹴りが受け止められるとは思っていなかったのだ。


「おい、お前は何者だ──」


「貴様ァァァァ!!!」


ユキマルが探りを入れようとした瞬間、大声を上げた男。

少し距離を置いたことで、男の姿をはっきりと認識できるようになる。


男はエルフだった。

ここはエルフの里なので、当然といえば当然だ。

体格はがっしりしていて、細身ではあるが筋肉質だ。

服は、戦闘服、特に体術を扱う人が着るような服装をしている。

髪を掻き揚げた(ひたい)には謎の入れ墨をしており、おそらく民族的な化粧なのだと思われた。


「フリエナ様に何をしたァァァァ!!!今すぐそばを離れろゲスがァァァ!!!」


エルフの男は怒りで取り乱しているようだった。

それは誰の目から見ても明らかで、対話での解決は無理に思えた。


「ちょっと待てって、なんか勘違いをして──」


「問答無用!!!」


やはり話すら聞いてもらえないようだ。

途中、フリエナの名前を出してたから、気になるところではあるが、今はそれどころではない。

鬼の形相で拳を握りしめ、迫りくるエルフの男。

それに対してユキマルもまた身構えるのだった。

しかし、思わぬ仲裁者が乱入する──


「止まってトイガ!!!」


「なっ──」


フリエナである。

トイガと呼ばれた男は、握った拳を引っ込め勢いを殺そうとしたが、突然の出来事だったため、派手にずっこけることとなった。


「だ、大丈夫か....?」


思わず、手を差し伸べるユキマル。

なんとなく初めから悪い奴ではない気がしていたので、不思議と敵体感はない。

しかし、差し伸べた手はバッと振り払われてしまった。


「貴様の手など借りん。」


冷たく言い捨てると、トイガはフリエナの元へと歩み寄った。

そして片膝をつき頭を下げた。


「フリエナ様!大変申し訳ありませんでした!私の失態により、あなた様を大変な目に遭わせてしまいました!」


それは謝罪だった。

どういう意味なのかはさっぱり分からないが、一つ分かったことは、どうやらフリエナとトイガには面識があるらしいということだ。

一方フリエナの方の反応も奇妙だった。

トイガの謝罪に対して、ずっと地面を見つめて黙っていたのだ。


「....?」


ユキマル、ソルナ、コラゴン、ルフテは終始頭に”?”を浮かべている。

そしてそれを察したのか、一度場所を変えて話そうと提案するフリエナだった。


・・・・

・・


「ここが里の中か~!」


城壁をくぐって中に入ると、これまでの草原とは違う景色が広がっていた。

家らしきものは、バカみたいに大きい木の実をくりぬいて作られている。

いたるところに植物が生えており、自然と共生しているのがうかがえた。

この里に来てまず第一に受けた印象は、”意外とにぎわっている”だ。

大国の首都、それこそ『アクアンティス王国』の『ウォーリン』や、『ベルレスク王国』の『ララン』に負けず劣らずエルフが行きかっているのだ。

いや、エルフだけではない。

見た感じいろんな種族がいる。


「そういえば、今はあの時期なのね。」


物知りなソルナが解説を入れる。


「あのって?」


「あまり有名ではないから知らないかもしれないけど、『フェアドラド』では百年に一度、とある式典が開かれるのよ。」


「へぇ~」


「そうなのかフリエナ?」


「え、ええ...。」


うつむきながらフリエナが答える。

この、相手と目を合わせない感じ、以前にも経験したことがある。

『ベルレスク王国』にいたころのソルナだ。

つまり、今のフリエナはあの時のソルナ同様、何かしらの隠し事をしているのかもしれない。


「....大丈夫か?」


「は?!別に大丈夫だし!なんもないし!」


明らかに焦るフリエナ。

しかし、これ以上踏み込むことは一旦やめとこうと思った。


「そうか。」


・・・・

・・


しばらく歩くと、フリエナの実家へとたどり着いた。


「フォルゴ様!カリーン様!フリエナ様が....!!!」


ひときわ大きな庭のに足を踏み入れると、侍女らしき女性がいそいそと家の中へと走っていった。

遠目から見て気づいてはいたが、どうやらフリエナの実家は太いらしい。

他の家が木の実のような形をしているのに対して、フリエナの家は巨木を作り変えたかのような見た目をしている。

これもまた自然の味を最大限に活かしたいいデザインだ。

そんなことを考えていると、玄関までたどり着いた。


「「フリエナちゃん.....!!!」」


フリエナかトイガがドアに手をかけるのを待っていると、ドアが内側から勢いよく開けられた。

出てきたのは、エルフの男女二名だ。

見た目は二十代後半ぐらいだが、それに騙されてはいけない。

エルフは種族の特徴上、20歳を超えると急激に老化のスピードが低下する。

なので、この二人もおそらくは200、300をゆうに上回る年齢なのだろう。


「パパ、ママ!!!」


二人に反応するフリエナ。

直後勢いよく抱きしめられる。


「く、苦しい....。」


なんて、悪態をついているが顔は嬉しそうだ。

久しぶりに両親に会えて嬉しいのだろう。


「今まで一体どこに....ってそんなことは後でもいい。今は──」


再びフリエナのことを強く抱きしめる両親。


「無事でよかった....!」


「うん!ただいま!」


そのとき、フリエナが初めて泣いたことに気づいたユキマルたちであった。

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